10/46
「じゃあね。」
「…知華、今日はありがとう。最後まで、ごめんなさい。」
「ううん、気にしないで?私もとっても楽しかった。…指輪、ありがとう。」
「気に入ってもらえたなら嬉しいわ。ずっとつけてるから、知華も忘れないでね?忘れん坊なんだから。」
「もう、忘れないもん!…マリー、時間じゃない?」
「そっか、よかった。…そうね、あっという間だったわ。」
「向こうに着いたら連絡してね?メールしてね?」
「心配性も変わらないわね…。大丈夫、出来るだけするわ。」
「ありがとう…。…じゃあ、頑張ってね。」
「…うん。…じゃあね、知華。」
無理矢理作ったような笑顔を見せて、マリーは行ってしまった。
マリーの姿が見えなくなったのを確認して、私は来た道を引き返した。
最後の時に涙は見せたくなかったから、足早に空港を後にした。
「…行かないで…置いていかないでよ…」
言いたかった。伝えたかった。引き止めて、一緒にいたかった。
でも、それを言うことはできなかった。
マリーが幸せになってくれればいい。そう思っていたはずなのに。
どうしても、涙が止まらなかった。