第一話 第一部 金色と白銀。新たな町。
パッカラパッカラ…
馬の歩く音が朝の森にこだまする。俺は馬の上に乗りながら道具の手入れをしていた。もうすぐで町に到着する。けれども森の中だから、いつ何処で動物や怪物に襲われるかわからない。そのために剣の手入れはいつも念入りにしなければならない。俺は前にカリーネを行かせて壁にぶつからないようにし、剣を磨いていた。
「しっかり手綱掴んでおかないと、何かあった時にあぶないわよ。」
カリーネが俺の隣に移動して手綱を掴む。しかしこの体勢はあぶない。
「おいおい、あぶないから。すぐ終わるから待ってろ。」
そういって俺はすぐに剣をしまって手綱を掴んだ。馬はブルルッと声を出して首を振った。
「もうすこしで町に到着するんでしょ?」
カリーネが地図を開きながら聞いてくる。
「ああ、もう少しなはず。森を抜ければ見えてくるはずだ。」
森が抜けるところが見えてきた。近づくにつれて星の光が強くなっていく。俺は手をかざしながら森を抜けた。
「うわぁ、綺麗! そして大きいね!」
カリーネが馬を止めて横から見る。レンガで出来た建物がたくさんある。そして大きな建物もいくつかある。ここが大規模14都市の一つ、レオードタウンか。俺はゆっくりと馬から下りた。
「よーしよし、お疲れジョイナー。もう一踏ん張りだぞ。」
俺は自分の馬のジョイナーをなでた。栗毛の馬体はレスト(地球でいう太陽のような星)の光で金色に輝いていた。カリーネも馬から下りた。そしてポケットから馬用のご飯を取り出す。
「オリヒメ、ゆっくり食べるのよ。」
オリヒメの白毛の体は白銀のように輝いていた。二頭の光が合わさって見えるのは、朝焼けに降る雪のようだった。オリヒメはブルブルと体を震わせている。暖かい日差しが俺たちを照らす。季節は春だが、まだ肌寒さは残っていた。
パカラッパカラッ…
5分ほど下り坂を進むと町の入り口になる看板が建ててあった。ここで食料の買い足しと宿で休み、今後の予定についてお話することだ。俺はゆっくりと歩き出し、まず馬をとどめることが出来る厩舎を探した。
「ねえ、先に宿を探したら? そこで荷物だけ先に置けば馬も楽になると思うし、その後探すときには荷物を全部持って歩かなきゃいけないから。」
「そうだな。先にその方法で行くか。」
俺はカリーネの意見に賛成して、宿を探すことを最優先にすることにした。
「さぁいらっしゃい! 今日はオーライム海で取れたライム魚が大量だよ!」
「ホリン草が取れたてよー。今なら100ロインで一束だよ!」
俺とカリーネは広々とした、しかし人でたくさんの道をゆっくり歩いていった。
「人が多いわね。」
「それだけにぎやかだってことさ。ついでにここは治安が良いからな。」
ゆっくり歩いて行くと突如人だかりが出来、行く道をふさいでいた。
「何があるのかしら。ちょっと馬に乗って高くから見てみる。」
そういってカリーネはオリヒメにまたがった。日差しで眩しいので手でかざして見ている。
「アベル、アレ見て!」
やや大きな声になったカリーネの反応にすぐさま馬にまたがった。そこには三人が大きな生き物を捕らえて持ち帰っているところだった。