夏の日の水族館
この作品は短編小説の中で初めて執筆した作品です。その為、文章力はないですが、楽しんでもらえればと思っています。
「ソフトクリーム最高~!」
魚原愛子はソフトクリームを片手にほおばっていた。
今は中学校もお休みの夏休み真っ只中。真夏のお昼ごろ、水族館の前で恋人・水原健人とデート中だった。
夏は暑くて汗かいて嫌い。だが、大好きなアイスクリームを食べれる時期だから完全に嫌いというわけではない。しかも水原は私と同じ魚を見るのが好きで水族館も好きだという事で付き合い始めた。
大好きなアイスクリームもあって、大好きな恋人もいて幸せいっぱいの夏休み…………になるはずだった。
あの、友人の夏川ひなこがやってくるまでは。
「愛子~! 健人~! そこで何してるの??」
友人の夏川ひなこはうれしそうに笑みをこぼしてやってくる。
健人……? ひなこ、いつから健人を呼び捨てに? ひなこ、健人と知り合いだったっけ?
「愛子、ばったり会ったね。ちょうど良かった。愛子に話にあるの」
「話……? 話ってなぁに?」
「うん、実はね……」
ひなこが健人の腕をつかみひきよせ、
「私達、付き合ってるの。もうそろそろ、愛子に健人と別れてほしくて」
悪魔のような笑みを浮かばせた。
その瞬間、すべてがわかった気がした。それと同時に食べていたソフトクリームが地面に落ちる。
すべて『罠』だったのだ。魔性の女であるひなこの。
「えっ」と声を出そうとする。けど体も口も動かなかった。
「ほんとつまんなかったでしょ? あの女」
「ほんとだよ。ただアイス食ってるだけで何もしてくれねーし。そもそも俺、魚とか全く興味ねーし」
「じゃ、そういう事で。いい夏休み送ってね~ん」
「じゃあな。アイス馬鹿女」
二人はそうつぶやいて立ち去ろうとする。
去り際にひなこが、
「ばーか、不細工女。いい気味ね」
と得意げな笑みで言い残す。
惨めな失恋。最初から仕組まれた事だと知らずに浮かれて……。
自然と水族館の方向を向いていた。
いまさらずるずる失恋引きずっても仕方がない。
好きな魚でも見て落ち着こう。
重い足取りで水族館に向かった。
……いつ見ても癒されるなぁ~。
自然と笑みがこぼれた。
魚は嘘つかない。一生懸命生きている。
愛子は水族館の中を見て回っていた。
――誰かが見ている?
背中に鳥肌のような寒気を感じた。思わず後ろを振り返る。
だが、誰もいない。
き、気の……せいよね?
そう思ったとき、突然水族館が暗闇の世界に変わった。どうやら停電したらしい。
て、停電!? 嘘っ! こんな時に!?
一体何が起きたのか、愛子にはわからなかった。
周りではお客の悲鳴が耳に入る。
ただわかるのは、暗闇の世界に閉じ込められたということだけ。
――に、逃げなきゃ!!
それしか考えられない。
愛子はその場から逃げ出そうした。
暗闇の中、水族館を動き回るが当然暗くて何も見えない。
「やっぱなにもわからない…………きゃあ!」
何かにぶつかった感触があった。ふわりと体が落ちる感覚と背中に大きな衝撃がある。と同時に唇に暖かいものも触れた。
愛子が首をかしげそうになったとき、暗闇から光の世界に変わる。
電気が復旧したらしい。
電気が復旧したとき、自分が今おかれている状況に気づいた。
男の子だ。数センチほどに顔が迫っている。どうやら男の子とぶつかったようだ。
だがしゃべろうとしても口が動かない。と、いうことは…………。
え、ええええぇぇぇ!?
実はぶつかった時その拍子に倒れてその男の子とキスしてしまったのだ。
「きゃああぁぁ!」
反射的に男の子から突き離し、その場に座り込む。
そこにかいだ事のある鼻につんとくるきつい香水のにおい。
「ひなこっ!? ……と、健人!?」
「あ~ら。お邪魔、だった~? い~わね~、男の子とキス」
「あのアイス馬鹿女がキスだって。ありえねぇ~!」
二人の甲高い笑い声が響いた。
「がんばって楽しんでね~ん」
ひなこはおかしそうに口を押さえて笑いをこらえる。
そのまま健人と水族館の奥へと消えていった。
泣き出しそうになってしまう。
愛子の隣で男の子のうめき声が聞こえたかと思うとゆっくり立ち上がる。
そして愛子の前に男の子の手が差し伸べられた。
「ごめん。俺の不注意で……その…………」
愛子はふっとやさしく微笑むと手を伸ばし男の子の手と重ねる。
すっと立ち上がると頭を下げた。
「私のほうこそごめんなさい。私が無駄に動いたからぶつかる羽目になってしまって……」
愛子が気まずそうに視線を逸らしたのを見て、男の子が質問を投げかける。
「さっき、ひなこと話していたみたいだったけど知り合い?」
「ひなこって……ひなこのこと、知ってるんですか!?」
「知ってるもなにも、今日まで恋人だったんだ。でも水原に取られたけど」
「け、健人……に?」
ふたたび視線を逸らす。
健人とあの人友達なんだ……。
「水原の奴、そろそろひなこと別れてほしいなんて突然言いやがって……あの二人、ああいう仲だったのかよ」
不機嫌そうにする男の子を見て愛子も切り出す。
「実は……私も同じなんです」
「……同じ?」
「はい。実はその水原……君と付き合っていたんですけど、友人のひなこにそろそろ別れてほしいってそのまま振られて」
男の子はそれを聞いて意外そうな声をあげる。
「えっ!? じゃあ君もなの?」
「なんか、いろいろとすみません。ほんと」
「いや、なんか君と話していたらむしゃくしゃしたのが取れたというか、落ち着いたきがするよ」
「そう……ですか?」
愛子は少し頬を赤らめた。
男の子が、
「良かったら水族館、一緒に回らない? 振られた者同士」
と話を持ちかけてきた。
「はい! よろこんで!」
「そういえば、お互い名前言ってなかったね。俺は増川祐樹。君は?」
「私は魚原愛子です」
「いい名前だね。……じゃあ行こうか」
祐樹が手を差し伸べた。
「はい」
愛子はその手を今度は強く握る。
暗い水族館が明るみえた。
今日水族館の前で失恋した私。
その水族館の中で新たな恋を見つけた気がする。
二人は幸せそうに館内を見て回ったとか。
健人はその後、ひなこに騙されお金を巻き上げられたのだが、愛子には関係のない話だった。
あとがき
短編小説の練習のつもりで書いた作品です。
なので、
ほとんど自己満足的なストーリーになっていて、
物語になっているかは不明。
恋愛関係は苦手なので、
上手くはかけてませんが書いていて楽しい作品でした。
次の短編小説かなにかで会えたら、
次はどのジャンルの短編かな?
では。