第13話:魔王軍の総攻撃と、僕の昼寝(※巨大要塞は日除けになりません)
久しぶりの休日だった。
僕は宿のテラスにある寝椅子に横たわり、暖かな日差しを浴びながらまどろんでいた。パパが復活し、聖女エルナ様とのステンドグラス問題も(パパの魔力修復で)なんとかなり、ようやく訪れた平和な時間。
「……ふわぁ。……幸せだ。今日はもう、一歩も動かないぞ……」
そう思った瞬間。急激に周囲が暗くなった。
雲が太陽を隠したのかと思ったが、違う。空を見上げると、そこには街全体を覆い尽くすほどの巨大な鉄の塊――魔王軍の最終兵器『浮遊要塞ギガント』が浮いていた。
「ヒャーッハッハッハ! カノンよ、そして忌々しい魔神親子よ! 我が軍の総力を結集したこの要塞で、街ごと塵にしてくれるわ!」
拡声魔法で響き渡る、魔王軍幹部の勝ち誇った声。
街中がパニックに陥る中、僕の隣で水着(!)に着替えようとしていたアビィが、プルプルと震えながら空を仰いだ。
「ちょっとぉぉぉ!! アタシが今から完璧な小麦肌になろうとしてたのに、何よあの鉄の塊! 日光が全然届かないじゃない!」
「カノン様、お怪我はありませんか!? さあ、私の胸に飛び込んで! あんな鉄クズ、私の祈りとあなたの愛があれば……!」
どこからともなく現れた聖女エルナ様が、僕の腕をムギュッと抱きしめる。
「離しなさいよこの光る女! カンちゃん、あんな邪魔な要塞、今すぐスクラップにしてきて!」
アビィと聖女様の板挟みにあい、僕は頭を抱えて最大級のため息をついた。
「……はぁぁ。せっかくの昼寝が台無しだよ。パパ、あれ、落としていいよね?」
「もちろんです、主殿。復活した私の魔力、存分にお使いください」
元の大きさに戻ったパパが、僕の背後に立つ。その威圧感だけで、空気がビリビリと震えた。パパが僕の肩に手を置くと、火山で得た『強欲』の魔力が、僕の『ため息』に溶け込んでいく。
「行くよ、パパ! ……ふぅぅぅぅぅぅ…………っ!!」
僕は空に向けて、掌を突き出した。
「『どん底ため息砲・極』!!」
ドガァァァァァァァァン!!
僕の吐息を核にした漆黒の衝撃波が、螺旋を描きながら空へ昇っていく。それはパパの魔力を纏い、巨大なドリルとなって要塞の底辺を貫いた。
「な、なんだとぉ!? 我が軍の誇る超合金が、ただの『ため息』で……ぎゃああああ!」
要塞は中心部から真っ二つに割れ、爆発四散……する直前、パパが指先をチッと鳴らした。
「お嬢様の日光浴の邪魔にならないよう、塵一つ残さず消滅させましょう。――『無への帰還』」
空に浮かんでいた巨大な要塞が、まるで魔法のようにキラキラとした光の粒子に変わり、一瞬で消え去った。
再び降り注ぐ、まばゆいばかりの太陽の光。
「よし、いい感じ! さあカンちゃん、アタシの背中にオイル塗りなさい!」
「いいえ、カノン様は私と聖歌を歌うのですわ!」
「……はぁ。日光が戻っても、僕の周りだけ全然平和じゃない……」
僕は再び寝椅子に沈み込み、青空を見上げながら、遠くの街まで響き渡るようなため息をつくのだった。




