第10話:魔王パパ、ちっちゃくなる!?(※ただし威厳はそのままです)
火山の最深部で、僕たちは二つ目のオーブ『強欲の欠片』を回収した。
カチリ、とパパの指先がオーブに触れた瞬間、まばゆい光が洞窟を満たす。
「……ふむ。少々、魔力を取り込みすぎましたかな」
光が収まったとき、そこに立っていたはずの巨大な執事の姿が消えていた。
「えっ、パパ!? どこ行ったの!?」
「主殿、ここです。足元を見てください」
慌てて視線を落とすと、そこには身長20センチほどに縮んでしまったパパが立っていた。
シルクハットも燕尾服もそのまま。ミニチュアサイズのパパが、大真面目な顔で僕を見上げている。
「な、なんだこれ……! パパ、縮んじゃったの!?」
「どうやら魔力の再構築の副作用で、一時的にこの形態になったようです。……おや、視点が変わると世界が広く見えますな」
僕が唖然としていると、隣でアビィが目を輝かせた。
「かわいい! パパ、最高にキュートよ! ちょっと、アタシのポケットに入りなさい!」
アビィはパパの首根っこをひょいとつまみ上げ、自分のドレスのポケットにスポッと入れた。
「あら、ジャストサイズ! これならお買い物の時も邪魔にならないわね!」
「おやおや、お嬢様。私はぬいぐるみではありませんぞ」
ポケットからひょっこり顔を出すパパ。そのシュールな光景に、僕は頭を抱えてため息をついた。
「……はぁ。でも、そんなに小さくなっちゃって、戦えるの? また魔王軍の残党が来たら……」
その時だ。
火山の崩落を聞きつけた、ランクAの溶岩大トカゲ『サラマンダー』の群れが襲いかかってきた。
「キシャァァァァ!」
「主殿、ご心配なく。大きさなど、私にとっては誤差に過ぎません」
パパがアビィのポケットから、爪楊枝ほどの大きさになったステッキを振るった。
「――『万雷の裁き』」
バリバリバリィィィッ!!
小さなステッキから放たれたとは思えない極太の雷撃が、一瞬でサラマンダーの群れを消し炭に変える。
「……凄まじいな、おい。見た目が可愛くなっただけで、中身は化け物のままだ……」
「失礼な、主殿。私はいつでも優雅な執事ですよ。さあ、アビィお嬢様、次は冷たい飲み物でも探しに行きましょうか」
「賛成! 出発、進行ー!」
ポケットに「最強のミニ魔王」を突っ込んだゴスロリ少女が、意気揚々と火山を下っていく。
僕はその後ろ姿を見ながら、再び深い、深いため息をつくのだった。




