第5話「不気味な黒剣はガルナ専用装備?(前編)」
「ダリアス……!」
「おっと! オレが来たからにはもう大丈夫だ。魔物どもに殺させはしない」
ガルナは青髪で自分よりも身長も年齢の高いポニーテールの少女、ダリアスに黒剣を放り出して涙で潤んだ瞳で見つめると勢いよく抱きついた。そのときにはガルナは赤い瞳からいつも通りの黄金色の瞳に戻っていた。
そうしてダリアスはガルナを抱き留めると背中を優しく撫でて力強く言った。
「うん……やっぱりダリアスは頼りになるね」
「ああ、任せておけ! ……ところでガルナ、あの剣はなんだ?」
「え? あれは……」
二人して黒剣のある方に目をやる。そこは先ほどまでガルナが立っていた場所だ。
黒剣は都合よく地面に突き刺さり禍々しさを今も放っている。
「とてつもない魔力を感じる……これほどの魔剣がどうしてこんなところに……魔王軍が落としていったのか?」
「わからないけど……村をこんなにしたのはその、魔王軍がやったの?」
「あぁ……魔王軍がこの村に勇者の生まれ変わりがいると、あたりをつけたらしい」
「勇者の生まれ変わり……」
ダリアスは有名な剣術の家柄だった。だからこそこの黒剣がただの剣ではないこともすぐに感じ取った。
少し離れてるだけでも感じる妖気に気圧されながらも恐る恐るとダリアスは黒剣へと近寄り、手を伸ばして触れようとするがーー
「つっ!? なんてことだ……障壁か何かで触れることすらできぬとは……」
「え……触れないの?」
「ああ……ビリッて少量の雷を指に受けたように痺れる……」
「だ、大丈夫なの!?」
その剣の持ち手にすら触れることはできなかった。痛みはさほどないのかダリアスは涼しい顔をしていた。
「不思議と痛みはほんの一瞬だった。見た目こそ恐ろしいが呪いの剣ーーという代物ではなさそうだ」
「そ、そうなんだ……良かった……」
ダリアスが無事でガルナは胸を撫で下ろし安堵する。
「しかしガルナ、これはなかなかの業物だぞ……使い手を選ぶ意志を持つ剣があると聞くが、その類いかもしれん」
「使い手を選ぶ……意志を持つ剣……」
ガルナは違和感を覚えていた。
それは難なくその剣に触れられるだけでなく、振り回してゴブリンを撃退することができたがダリアスにはそれは難しいようだった。
「? ガルナ? どうかしたか?」
「その……あのね? 私、この剣に触れられるの」
「な、何!? それは本当かガルナ!」
ガルナの様子がおかしいことに気がついたダリアス
はガルナに問いかける。
「うん……ゴブリン、倒れてるでしょ? それ、私が倒したんだ……」
「ゴブリン……? をお前が……? にわかには信じがたいがやったんだな」
神妙な面持ちのガルナに言われてダリアスはあらためて周囲を見渡した。たしかに、周囲には村人以外の死体の中で一際、異彩を放つゴブリンの死体が三つ、確認することができる。
本来なら信じられなかったがこんな状況に嘘をつく者はいないだろうと納得せざるをえなかった。
「うん、見てて。触れてみせるから」
「ああ……頼む」
が、完全に理解し切るには材料が足りなかった。
その雰囲気を感じ取ったのかガルナは黒剣の前に立つ。
黒剣は妖しく光を放っている。こんなに恐ろしいものを使ってたんだとガルナはあらためて黒剣を眺めて息を呑む。
ダリアスは真剣な表情で見守っているが緊張からかごくりと唾を飲み込む。




