第15話「滅ぼされた村の来訪者は隣国のお姫さま?」
「アースガルナ……だと……?」
「まさか……預言にあった……?」
「預言……?」
ガルナの口から紡がれたアースガルナという言葉を聞くとリザードマンたちは目の色を変えて顔を見合わせると頷き合い武器を下げた。
その様子から戦意を失われたことは誰の目から見ても明白だった。
「どうしたの? 戦わないの?」
「最初はそのつもりだったが勇者アースガルナと何の策もなく対峙するほど愚かではない」
「勇者……? 私が?」
リザードマンたちのリーダー格だと思われる者はガルナの疑問に冷静に言葉を交わした。
そしてさらなるガルナの疑問を置き去りにしてガルナの後ろに隠れる少女に向かって続けた。
「命拾いしたな隣国の皇女よ。せいぜい、その命を大切にすることだ」
「っ……」
「撤退だ」
ガルナたちと向かい合っていたリザードマンたち、ダリアスと戦っていたリザードマンたちも全て去っていく。
まるで戦闘する気など最初からなかったかのように。
「撤退してくれたな、運が良かったなガルナ」
「ねえ、ダリアス? 預言の勇者ってなに?」
「ん? さあな……オレにはその言葉の真意はわからぬが今は皆が無事に生還したことを喜ぶとしよう」
それから遅れてダリアスが近寄ってくる。そのタイミングでガルナは訊いてみたがダリアスもどうやらガルナと同じく知らないようだった。
「あ、あの……」
「そういえば! さっきの魔物たちはあなたのこと皇女さまって呼んでいたけど本当なの!?」
「え、えぇ。それは――」
「少し場所を移そうか」
そう、ガルナとダリアスに助けられた少女は自分が何者か名乗ろうとするがダリアスの言葉により遮られた。
ダリアスは長くなりそうな気配を察知してかこの場で話すのは不釣り合いと感じて提案したのだが
「すみません、従者がケガをしていて……」
「ケガ?」
「うっ……先の魔物との戦闘でやられてしまいまして……」
更に後ろ、背後には白と黒のコントラストが印象的なメイド服にフリルのカチューシャを頭に飾りつけた女性がしゃがみこんで左脚を痛そうに押さえていた。
「ケガ? 見せて?」
「え? もしやあなたさまはお医者さまかなにかで――」
ガルナはメイドの女性が言い終わる前に負傷した左脚に片手をかざす。するとその手は淡く光り輝き、みるみるうちに傷を癒し、跡すらも残らなかった。
「ほら、治ったよ」
「まあ……!」
「っし、信じられません! まるで神の奇跡のようです!」
傷を癒すとガルナはメイドの女性から離れた。
皇女と呼ばれていた少女とメイドの女性は奇跡とも呼ばれる力に目を見開いて驚く。
メイドの女性は左足を動かしてみるが痛みはなく不思議そうに自分の足とガルナを交互に見た。
「ふふん! ガルナは世界でも珍しい聖天使さまの奇跡が使える聖女さまだからな!」
「……どうしてダリアスが得意げなの」
するとダリアスはまるで自分ごとのように自慢げに語る。それを見たガルナはどこか冷ややかで呆れた眼差しをダリアスに向けていた。
「まあ! あなたが聖女だったのね! ずっと逢いたかったの!」
「えっ……私に?」
「えぇ、そうよ。わたくしはアクアレイン皇国の第三皇女、メイスですわ。よろしくね」
メイスは満面の笑みの笑顔を咲かせるとガルナの両手を自らの両手で包んで見せた。
それは目的の聖女に出会えた喜びとそれが助けてもらった少女だというのだから二重の喜びを感じる。自然と声色も弾んだものに変わっていく。先ほど誘拐されかけた皇女とは思えない変貌ぶりだった。




