第11話「黒剣の正体」
「ほう……覚えていたか。我が名を」
「あなたは何者なの!? 毎回毎回、私の夢に出てきて――」
「我が剣を持っているな」
「……え? 我が剣って……」
アルケイドの視線はガルナのある一点に集中していた。
そこはガルナが腰に携えた黒剣に注がれている。
「それは死の間際に我が力、我が意志を込めた剣だ」
「あなたの――力を……?」
「左様。ゆえに魔族特攻。その剣は我が意志を以て魔族を葬り去るだろう」
「そんな……」
ガルナは気持ちだけでは半分信じられずにいた。だが、村で起きた数々の事象がアルケイドの意志と力ならば納得できる部分があるのも確かだった。
「試してみるか? 抜くがよい。稀代の聖女にして勇者――アース・ガルナよ」
「アースガルナ……私に戦えって言うの?」
「知りたいのだろう? 我が剣の本質を」
「本質……? どういう意味?」
しかしそれ以上はアルケイドは語らない。ただガルナが剣を抜くのを待っている。
そしていつの間にかアルケイドの左手にはガルナが持つ剣と寸分違わず同じ剣が握られていた。
ただひとつ違う明らかな違いがあるとすればアルケイドが左手に黒剣は光り輝き、その姿を誇示している。
「なんで光ってるの? その剣……」
「これか? これは心の強さだ」
ガルナも黒剣を抜いてみる。しかし、ガルナが右手に持つ黒剣は微塵たりとも光っていない。
まるでアルケイドの持つ黒剣とは別物のようだった。
「心の強さ……? 私は心が弱いって言いたいの?」
「フッ……それも一戦交えれば答えは明確になるだろう」
今から始めるぞと言わんばかりにアルケイドは黒剣を構えた。その黒剣は妖しく光り輝いている。
ガルナも同じく黒剣を構えるがその黒剣に光はない。
「っ! でやあぁぁあああ!」
「二秒だ……今しがた二秒間迷いを見せたなアースガルナ! その迷いがある限り、その剣、決してこの私、アルケイドには通りはしない!」
「ま、迷いなんて! 私は!」
先制攻撃を繰り出したのはガルナだった。
しかしその攻撃はアルケイドの黒剣によって防がれる。
ほんの一瞬にも感じられる二秒間という時間。たったそれだけの短い時間でもアルケイドにとってはガルナが繰り出す攻撃の予測を立てて読み切るには充分な時間だった。
そのためにそのガルナの黒剣の行き先に、行く先々には光り輝くアルケイドの黒剣と刃を交えてしまう。
「貴様の中に間違いなく迷いはある。アースガルナよ。貴様の戦う理由なんだ? 己が命のためか? そとも他が命のためか?」
「え?」
「怒りか? 憎しみか? 復讐か? それともつまらん正義感か? もしくは己の悲しみを糧に刃を振るうかアースガルナ」
「くっ……! ぐうっ!? わ、私は……私の戦う、意味、は……理由は……っ!」
アルケイドが問うたびに彼の剣撃の鋭さが増していく。その度にガルナは押されて間合いは詰められ距離は段々と近付き、その顔と顔を突き合わせて強制的に見つめてしまうほどに近くなっていた。
そんな状況にガルナは目を瞑りたかった。目を逸らしたかった。
しかしそのどちらもアルケイドの言葉の圧が眼差しがそれを許さない。
「……答えは出ぬか戦う理由なき者に勝利はない」
「その先に待つのは己が死、そして大切な者の死のみ。貴様の優柔不断な振る舞いこそが大切な者の死を招くだろう」
「そんなの嫌だ! 私はみんなを守りたい! ダリアスたちをお母さまが愛した世界をーー」
「それだけ理解しているならば――はあッ!」
「っ!? きゃあああああ!!」
ガルナがその気持ちを吐露したとき――アルケイドは剣撃はガルナの体を吹っ飛ばした。
アルケイドは倒れたガルナにゆっくりとした足取りで近寄り冷たい眼差し見下ろして口を開く。
「さらなる理由を探し、戦い、助け、己が強くなることだ」
「ううっ……! 理由を……足りないと言うの……? 私には……」
「あぁ、知見が足りぬのだよ……世界を知れアースガルナよ。そのためならば我も貴様に力を貸そう。魔剣・アルケイドとしてな」
「魔剣……アルケイド……」
ガルナの体は倒れたまま動かない。
それだけアルケイドの力は凄まじかった。意識もあやふやになってアルケイドの言葉を聞き、復唱することがやっとなほどに。
「さらばだ未来の聖女にして勇者――アースガルナよ。機会があればまた逢おう」
「アル……ケイド……」
ガルナの意識は薄れていく。最後に見たのはアルケイドの顔とその手に握られた黒剣とガルナが先ほど持っていた黒剣が近くに転がっている姿だった。




