表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

第16章 灰核儀式の始動、蒼き意識の深淵

 1 蒼光の奔流が去ったあと


 蒼狼の胸から弾けた蒼光が、

 周囲の瓦礫を吹き飛ばし、

 クロウの影すら押し返した。


 爆風のあとに残ったのは、

 荒い息をつく三人の少女の姿だった。


 綺羅はまだ蒼狼の姿のまま、地面に膝をつき、

 肩で息をしていた。


「綺羅……綺羅!」

 煌がその肩を支える。


 綺羅の瞳は蒼いまま。

 その光には獣の濁りが混じっているが――

 ほんのわずかに、迷うような揺らぎが見えた。


「……ッ、ぅ……」

 綺羅が低く喉を鳴らした。


 言葉にならない声。

 でも、必死に伝えようとしていた。


 煌はぎゅっと綺羅の手を握る。


「大丈夫……私たち、ここにいるから!」


 ルーヴァも息を荒げながら、弱い声で続けた。


「ほんと……綺羅、一瞬戻ってきた……

 私、わかったよ……」


 しかしその安堵をかき消すように、

 クロウがゆっくりと立ち上がった。


 衣のほこりを払うように軽い動作。

 先ほど吹き飛ばされたというのに、

 まるで傷一つない。


「……なるほど。

 蒼核の暴走には想定以上の“底”があるらしい」


 クロウは片手を掲げた。


「では――次の段階へ進もう」


 2 儀式の円陣


 クロウの足元に灰色の紋様が広がる。

 円陣――儀式の陣だ。


 地面に刻まれたように見えたその紋様は、

 実際には影と灰によって生み出されたものだった。


 煌が蒼白になる。


「……クロウ……まさか……!」


「“灰核完成の儀”。

 本来はもっと静かに行う予定だったが……

 お前たちが暴れ過ぎたのでな」


 クロウは肩をすくめた。


「暴走している今のほうが都合がよい。

 三人の核――蒼、光、灰――

 いずれも振動が極限まで高まっている」


 ルーヴァの顔から血の気が引いた。


「やだ……やだよ……

 儀式なんて受けたら……

 私たち……どうなっちゃうの……?」


 クロウは優しく微笑む。


「安心しろ。

 “死ぬ”わけではない。

 ただ――“核の形”が変わるだけだ」


 その微笑みが、

 救いではなく処刑の宣告であることは明白だった。


 3 綺羅の意識の中へ


 蒼狼の姿のままの綺羅は、

 膝をついたまま動かない。


 蒼い瞳から焦点がゆっくりと外れる。

 まるで意識が奥へ落ちていくかのように。


(……暗い……)


 綺羅は、深い深い闇の中にいた。


(ここ……どこ……?)


 足元も、空も、何もわからない。

 ただ――どこかで鈍い鼓動が響いている。


 ――ドクン。


 その鼓動は、自分のものではないようでもあり、

 同時に確かに胸の奥で響くものでもあった。


(やだ……怖い……

 煌……ルーヴァ……)


 綺羅は闇の中に手を伸ばした。


 しかし、その手の先で――

 “誰か”が自分の手首を掴んだ。


 冷たく、しなやかな指。


(え……誰……?)


 闇が少しずつ輪郭を持つ。


 そして現れたのは――

 蒼光を帯びた“もうひとりの自分”。


 少女の姿でありながら、

 その瞳は完全な獣だった。


(……あなた……)


 蒼い獣の少女は、

 綺羅を見下ろし、囁く。


『――戻るな。

 “私”を解き放て』


 綺羅の心臓が跳ねた。


(違う……違うよ……

 私は……戻る……!

 みんなのところに……ッ!)


 綺羅がもがくと、

 蒼の獣は無表情で手を伸ばし――


 綺羅の胸に触れた。


 瞬間、蒼核が轟く。


 ――ドクンッ!!


 現実の綺羅の身体が大きく震えた。


 4 現実世界:共鳴暴走の始まり


「綺羅!?」

 煌が叫ぶ。


 蒼狼の胸の核が、

 暴走の第二段階――“蒼の深淵”へと移行していた。


 蒼光が黒く縁取られ、

 不安定な波紋を生み出している。


 ルーヴァも胸を押さえて倒れ込む。


「綺羅……苦しんでる……

 核が……深く潜ろうとしてる……!」


 煌の胸の光核も、同時に強く脈打つ。


「う……っ!!

 綺羅……怖がってる……!」


 ルーヴァが涙をこぼす。


「クロウの儀式が始まったせいで……

 綺羅の意識が、核の底に引きずり込まれてる……!」


 クロウは腕を広げ、

 儀式の円陣を完成させながら呟いた。


「核が互いを呼び合うのは必定。

 三つの鼓動が揃えば――

 灰核は完成し、“灰の門”が開く」


 煌が震える声で叫ぶ。


「やめてクロウ!!

 綺羅を返して!!

 ルーヴァも……私たちも……これ以上は――!!」


 クロウはその叫びを遮った。


「“返す”?

 違う。

 お前たちは最初から私のものだ」


 影が一気に広がる。


「そして今――

 三つの核は“境界”に達した」


 5 儀式は、始まってしまった


 儀式円陣が完全に閉じた瞬間。


 三人の胸から――

 光が、灰が、蒼が、同時に噴き上がる。


 天地を引き裂くような音が響いた。


「ぎ……ぁ……ああああああ!!」

「やだ……っ……壊れる……!」

「綺羅……返ってきて……ッ!!」


 苦痛と混乱の叫び。


 クロウは両腕を天に掲げた。


「これより――

 “灰核完成の儀”を開始する!!」


 灰色の柱が空に向かい立ち上がる。


 その中心に、

 三人の少女が飲み込まれていった――。


 《第16章 灰核儀式の始動、蒼き意識の深淵 完》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ