ブラコン転生姫と解釈違いの騎士様
その日レイモンド・フォン・ウェイツ王太子の近衛騎士であるネイキッド・フォン・ケロッグは、自らが仕える主に呼び出された。
「お呼びでしょうか、レイモンド殿下」
珍しく自分以外の近衛を全て下がらせたレイモンドに、ネイキッドは訝しげな顔をして問う。
レイモンドは苛烈な王位継承争いの為、いつも暗殺の危機にさらされてきた。だから普段は身の回りを信用のおける騎士達で固めているのだ。
継承争いも落ち着いてレイモンドが次期王になることが決定したとはいえ、自分一人しか護衛が居ないのは不用心ではないかとネイキッドは考えていた。
それとも、側近達にも聞かせられない内密の話でもあるのだろうかとネイキッドは気を引き締めた。
「ネイキッド、君はクリスタをどう思う?」
クリスタはレイモンドの同腹の妹。つまりは王女だ。この国では女性は王位を継げない為、王位継承争いに巻き込まれることは無かったのに、レイモンドを王とするために、その身を危険にさらしてでも社交に慈善事業にと献身的に行動していた王女をネイキッドは好ましく思っていた。
「王女殿下は素晴らしい淑女です」
普段から口数の少ないネイキッドは、少ない言葉で王女を褒めたたえた。その言葉を聞いてレイモンドは輝くような笑みを浮かべる。
「そうだろう!兄の欲目を差し引いても、クリスタは美しいし気立てもいいし、まるで女神の様に慈愛に満ちている……たまにお転婆が過ぎるのが玉に瑕だけど、それでもとても素晴らしい妹だと思うんだ。私はそんな妹に幸せになってほしいんだよ」
お転婆とは以前あった暗殺未遂事件の時の事だろう。レイモンドが暗殺されそうになった時、クリスタがその企みを事前に察知して体を張って阻止したことがあった。その事件のおかげでクリスタは消えない傷を体に負ってしまった。レイモンドがその事件の事でひどく心を痛めていることをネイキッドは知っていた。
「なあ、ネイキッド。私は、後先考えずに自ら危険に足を突っ込んでしまいがちなあの子を守れるのは、冷静で理知的な人間だと考えているんだ。私はお前を誰より信頼している。クリスタさえ気に入れば、クリスタをお前に任せたい」
ネイキッドは目を見開いた。要するにこれは婚姻の打診だ。いや、クリスタさえ気に入ればと言っていることから、見合いの相談かもしれない。悪い話ではないとネイキッドは思った。
ネイキッドはあまり女性に興味がなかった。幼い頃から乳兄弟としてレイモンドに仕え、苦楽を共にしてきたためにあまり女性と接する機会がなかったのだ。レイモンドの立場が安定するまではと、婚約者も作らずにいた。
レイモンドへの忠誠心が今のネイキッドを形作っている。そんなネイキッドにとっては、レイモンドの掌中の珠であるクリスタを任されることはこの上のない誉れだ。
「光栄にございます」
だからネイキッドは深く頭を下げてこの話を受けた。
「そうか!では早速デートの席を設けよう。調べによると、最近クリスタは王都にできた新しい劇場に興味があるらしい。特に看板女優のフレデリカ・オットーに夢中で後援をしているようだ。一緒に観劇に行ってくると良い」
そう言ってレイモンドはベルを鳴らして使用人を呼ぶと、クリスタを呼んでくるようにと言った。
♢♢♢
「レイモンドお兄様が呼んでいるのね!」
使用人から聞いたクリスタは頬を高揚させて喜色満面で王太子の庭園に向かった。
クリスタにとってレイモンドは理想の兄であり、最推しである。この世界は日本からの転生者であるクリスタにとっては大好きな少女漫画の世界だった。漫画の中ではレイモンドはヒーローで、クリスタは序盤に死ぬかわいそうなキャラである。
クリスタは転生に気づいてから今まで、最推しのレイモンドとヒロインであるマリアの心や体を傷つけるイベントをことごとく潰してきた。そしてレイモンド以外の王子達や貴族連中がが企んだ悪事もあらゆる手で阻止してきたのだ。
今は物語も終盤で、潰さなければならないイベントもあと一つ。レイモンドとマリアの仲も良好で、エンディングである二人の結婚式までもう少しだ。
クリスタはスキップしたい気持ちをおさえながら、最推しの兄の下におもむいた。そこにはレイモンドとネイキッドの二人しかいない。
「まあ、お兄様。護衛はどうしたのです? ネイキッド様だけでは危険ですわ」
ネイキッドは漫画の中では不遇な片思いキャラだ。ヒロインであるマリアに恋をしながら、乳兄弟であるレイモンドと争うことを厭い、最終的に一生独身を貫いて二人を守ることを決意するのだ。その美しい友情と献身に、涙した読者も多い。
クリスタはその三人の関係性が大好きで、三人を見かけるたびに心中を想像しては、内心はしゃいでいた。
そう、クリスタは気づいていなかったのだ。自分が物語を改変してしまったために、ネイキッドがマリアに恋するフラグを叩き折ってしまっていたことに。
クリスタは、ネイキッドはマリアに恋をしていて一生独身を貫くつもりだと思い込んでいた。実際のネイキッドは、マリアの事を仕える主君の思い人としか思っていないにもかかわらずだ。
「今日は大事な話があるんだよ。可愛いクリスタ」
レイモンドがクリスタにハグすると、クリスタは嬉しそうに話を聞く体制に入った。
「クリスタはネイキッドの事をどう思っている?」
クリスタは他意は無く思ったままを答える。
「素晴らしい騎士だと思いますわ」
クリスタの顔は原作の内容を思い出してにやけていた。恋心を封印して忠誠を誓った主君のために仕えるのだ。騎士の鑑だろう。
そんなクリスタの笑顔を、レイモンドは違った意味に受け取った。クリスタはネイキッドに気があると。
「そうか! では、明日一緒に劇場に行くといい。フレデリカ・オットー主演の新作があるのだろう?」
一瞬、クリスタは話のつながりがわからなかった。だがすぐに思い当たる。
フレデリカ・オットーはクリスタが育て上げた諜報員だ。潜入調査官として、劇場を隠れ蓑にしている人身売買組織の調査をしてもらっている。この事件は原作に描かれている最後の事件だ。かならず組織を根絶させなければならない。
この事件のために、クリスタは何年も調査を続けていた。レイモンドは気づいていたのだ。だから事件解決のために自分の騎士を貸してくれた。
クリスタはそう思い込んで歓喜に震える。期待には必ず応えなければと喜色満面で礼を言う。
「ありがとうございます! お兄様」
レイモンドは輝くような笑顔のクリスタに満足した。自分の選択は間違っていなかった、クリスタはネイキッドとのデートを喜んでいるのだと思い込んだ。
「よろしくお願いいたしますわ。ネイキッド様。明日を楽しみにしております」
クリスタはそう言うと、早速明日の準備をしなければと駆け出す。
♢♢♢
「良かったじゃないか、ネイキッド。クリスタも君に気があるみたいだ」
上機嫌のレイモンドにネイキッドは静かに頭を下げる。
表面上は普通だが、ネイキッドは内心緊張していた。デートとは何をすればいいのだろうか。まだ若く、女性と縁がなかったネイキッドには女性の喜ぶことなどわからない。
そしてまさか、自分とのデートをあれほどまでに喜ぶとは思っていなかった。男とは単純なもので、ネイキッドにはクリスタへの思いが芽生え始めていた。
翌日、ネイキッドはクリスタを迎えに王女宮へ行った。一時期は多くいた王女も今はクリスタ一人だ。他の王女は兄弟や母親が罰せられたことにより、連座で修道院に入ったり幽閉されたりしている。中には王女本人が罪を犯して処刑されたものも居たが、今はすっかり平和である。
クリスタが取り仕切っている王女宮の雰囲気は柔らかい。昨夜一緒に行きたいところがあると連絡をもらっていたため、だいぶ早い時間に来たのだが、使用人達はネイキッドを暖かく迎えてくれた。
「おはようございます。ネイキッド様。今日は『赤の家』にご招待いたしますわ」
赤の家とはクリスタが運営している孤児院の内の一つだ。ほかにも青の家、黄の家など色の名前が付いた孤児院がいくつかあると、ネイキッドは知っていた。
デートで自らの運営する孤児院を案内するなど、クリスタはよほど子供達を大切にしているのだろうとネイキッドは微笑ましく思った。
二人は馬車に乗り、赤の家へ向かう。道中、クリスタが口を開いた。
「ネイキッド様。お兄様があなたをお貸しくださるという事ですが、お兄様は人員売買組織についてどの程度把握しておりますの?」
ネイキッドは、言っている意味がわからなかった。沈黙を貫いていると、クリスタが続けて話し出す。
「やはりあまり詳しくは把握しておられないようですね。彼らは慎重です。顔の知れた騎士では証拠を集めるのは難しいでしょうから……ですがご安心ください、証拠は私の部下がすでに押さえております。後は捕まえるだけというところまできていたのですが、確保に必要な人材が足りず……騎士団の協力が得られて嬉しく思いますわ」
ネイキッドはここでようやく気が付いた。何か互いの認識にズレがあるようだと。しかし、人身売買組織とは穏やかではない。クリスタが一体何に首を突っ込んでいるのか、レイモンドの為にも話を聞く必要があるだろう。
「組織について聞きたい」
ネイキッドがそう言うと、クリスタは真剣な顔で話し出す。
「あの劇場の支配人は他国でも多くの劇場を所有していて、移動劇団も持っています。それを利用して国外に攫った女子供を輸出しているのです。顧客は上流階級の者達です。この国の貴族にも顧客はおります。今は劇場に何人か潜入させていて、ようやっと裏の顧客名簿を入手したところですわ」
それが本当ならとんでもない事件である。なぜ騎士団でも把握していない犯罪者集団を未だ十八歳のクリスタが把握し、調査しているのか。ネイキッドは不思議でたまらなかった。
情報を聞きだしている内に、赤の家にたどり着く。
「紹介しますわ、ネイキッド様。こちらが私が運営する諜報員育成施設。赤の家ですわ」
ネイキッドは我が耳を疑った。一体どういうことなのかと、クリスタを見る。
「お兄様に仇なす者を始末するため、私が一から作り上げた教育施設ですの。騎士団の有する諜報員には及ばないかもしれませんが、役に立ちますのよ。孤児の中から素養のありそうなものを見繕って教育しておりますの」
クリスタは恥ずかしそうに言った。
「心配をかけないように内緒にしていたつもりでしたが、流石お兄様。劇場の事といい、すべてお見通しだったのでしょう。協力者となることですし、ネイキッド様には紹介しておきますわ」
いやレイモンドは全く知らないだろうと、ネイキッドは思った。レイモンドはクリスタがただ慈善事業に熱心な優しい姫であるとしか思っていない。ネイキッドも先刻までそう思っていた。どうやらクリスタに対する認識を改めなければならないらしい。
ネイキッドが赤の家に入ると、何人かの職員を紹介される。そのまま奥へ連れて行かれ、人身売買組織について話を聞くことになった。ネイキッドの目から見ても、詳細な情報が集まっていると思う。彼らの諜報員としての能力は見事としか言いようがなかった。
そうして資料を見ていると、ネイキッドは既視感を覚えた。八年ほど前から知らないうちにレイモンドの机に、ある犯罪の資料と証拠が置かれていることが度々あった。資料のまとめ方はその証拠と酷似していた。
「ワイマール家の麻薬取引の証拠を見つけたのも、あなた方ですか?」
ネイキッドが問うと、職員達は確認を取るようにクリスタを見る。
「ええ、私が彼らにお願いして調査してもらいましたの」
八年前と言えばクリスタは十歳である。確かにクリスタは年齢が一桁の頃から孤児院を建てていたが、まさかそんな幼い頃から諜報員を育てていたとは思わず、ネイキッドは茫然とした。
レイモンドもネイキッドもクリスタを守っているつもりでいたが、守られていたのはレイモンド達の方なのかもしれない。
ネイキッドはこのお転婆を通り越して破天荒で聡明な姫に、並々ならぬ興味を抱いた。そして自身の妻にするなら、レイモンドを共に守ってゆけるであろうクリスタがいいと強く思った。
クリスタは気づきもしないだろう。ネイキッドがクリスタを口説き落とそうと企んでいるなどと。
その後の劇場での潜入捜査も円滑に終え、ネイキッドはレイモンドにすべてを報告する。
可愛い妹がずっと危険な事件に関わり続けていたと知って、レイモンドは錯乱した。
「ご安心ください。クリスタ姫の事は私が命をかけてお守りします」
ネイキッドの言葉にそうじゃないとレイモンドは思うが、しかしクリスタの安全を確保するのが最優先だ。
「クリスタを守ってくれるか、ネイキッド。一先ず早急に人身売買組織を壊滅させてくれ」
「かしこまりました。クリスタ姫と相談して、明日騎士団を動かす予定です」
「明日? 早くないか?」
「クリスタ姫が早急の解決をお望みですので……」
レイモンドはそれもそうかとネイキッドにレイモンド直属の騎士団を動かす許可を出す。
♢♢♢
クリスタはとうとうこの日が来たと、朝から興奮していた。いよいよ漫画の中で描かれた最後のイベントが片付くのだ。
これが終わったらクリスタは遠くに旅行にでも行こうと思っていた。自らの死を回避し、暗躍し続けた十年あまり、ずっと気を抜く間もなく大変だったのだ。少し休みたかった。
どうせ自分は暗殺未遂事件の時に負った傷で結婚することは叶わないし、気ままに国中を回ろうかと計画していた。
「おはようございます。クリスタ姫」
クリスタの元へやってきたネイキッドは、クリスタの手を取り指先に口づける。これは騎士から淑女へ贈られる最大の親愛の証だ。
クリスタは己のしてきたことがようやく認められたのだと嬉しかった。
「おはようございます、ネイキッド様。今日はお兄様のため、共に頑張りましょう」
「もちろんです。かならずやこの国に仇名す逆賊を捕らえ、その首を殿下に献上して見せます」
二人は一緒の馬車へ乗り込んだ。騎士達は先に劇場へ行って捕り物をしているらしい。クリスタは最初から参加したかったのにと頬を膨らませた。
「姫を危険な目にあわせるわけにはまいりません。ご容赦ください」
ネイキッドはレイモンドの妹である自分も守る対象ととらえているのだと、クリスタはその時初めて気がついた。
「……ネイキッド様。お兄様のこともマリア様のことも、私のこともいつも守ってくれてありがとう。貴方は騎士の鑑だわ」
微笑みながらそう言うと、ネイキッドが驚いたような顔をする。クリスタはいたずらが成功したような気持ちになった。
劇場にたどり着くと、そこはもう戦場だった。劇場前には捕縛された人身売買の関係者が拘束されている。その数を見るといかに大規模な取引が行われていたのかわかる。
そして天幕がはられた一角には、捕まっていた子供達や女性がボロボロの麻の服をまとって震えていた。
クリスタは急いで子供達の元に走る。一人一人に声をかけて、もう大丈夫だと子供達にキャンディーをあげた。ネイキッドがその様子を微笑まし気に見ていることには気づかない。
やがて劇場の中から劇場の支配人が縄で縛られて出てきた。こいつが人身売買の黒幕だ。やっと終わったと、クリスタが黒幕を見つめていると、目が合った。
目が合った瞬間、黒幕は隠し持っていたナイフで縄を切り裂き、クリスタの元に走ってくる。見るからに深窓の令嬢なクリスタを人質に取ってここから逃げ出そうとしているのだ。
クリスタはこれまで陰で暗躍してきたが、自身に戦闘力はない。クリスタと黒幕の距離があとほんのわずかになった時、ネイキッドが動いた。
ネイキッドは黒幕の持つナイフを自身の剣で弾くと、黒幕の腹を蹴り上げた。
「すぐに拘束しなおせ!」
黒幕を取り逃した騎士にそう叫ぶと、クリスタを振り返る。
「お怪我は?」
クリスタは茫然とネイキッドを見つめる。少女漫画のサブヒーローだけあって、ネイキッドはかっこいいのだ。ピンチを救ってもらってときめかない女なんていないだろう。
「ありがとう。助かったわ」
クリスタはこのネイキッドの雄姿を心のアルバムに永久保存しようと思いながら、ネイキッドに笑いかける。
「当然のことをしたまでです」
騎士らしく折り目正しく頭を下げるネイキッドに、クリスタの脳内は大騒ぎだ。文章でたとえると真面目騎士最高かよである。
「と、まあこのようになりましたわ」
城に戻りネイキッドと共にレイモンドに結果を報告したクリスタは、やっと最後のイベントが片付いたことを心から喜んでいた。
「お兄様。私今回の件でご褒美をいただきたいのです」
「なんだい?クリスタ。欲しいものがあるならご褒美でなくていつでも言ってくれていいんだよ」
「いえ、実は旅に出たいと思っておりまして」
その一言に、レイモンドは固まった。しかしクリスタは兄の変化に気づかない。
「私はもはや嫁に行くことも叶いませんし、国はしばらく安定するでしょう。お兄様の結婚式には一度帰ってきますから、それまで周辺諸国を見て回りたいのですわ」
たっぷり時間をかけて妹の言葉を飲み込んだレイモンドは、なにかを決意したような目でネイキッドを見る。
「いいだろう。ただし、ネイキッドを連れて行くように」
驚いたのはクリスタだ。ネイキッドはレイモンドが最も信頼する側近である。旅の共になどできるはずがない。
「お兄様。そのようなことはできません。ネイキッド様はお兄様のおそばに居たいはずですわ」
「そうかな?どうだい、ネイキッド」
レイモンドはネイキッドをじっと見つめる。ネイキッドは首肯するとクリスタの前に跪いた。
「私、ネイキッド・フォン・ケロッグはあなたに婚姻を申し込みたく存じます。あなたのおそばでずっとあなたをお守りしたいのです。どうか、私の願いをお聞き入れください」
クリスタの頭は真っ白になった。ネイキッドはマリアに惚れているはずだ。もしかしたら、レイモンドがネイキッドに命令したのではないか。そう思ったクリスタは叫ぶ。
「お兄様。ネイキッド様に何を命令なさいましたの。ネイキッド様にも結婚相手を選ぶ権利くらいありますわ」
「僕は提案しただけだよ、クリスタ。選んだのはネイキッドだ」
クリスタは混乱した。どうしてネイキッドはクリスタを嫁になどという提案を受け入れたのか。
「クリスタ様。私ははじめこそ、深く考えずにこの提案を受け入れました。しかし今回あなたと一緒の時を過ごして、妻にするならあなたがいいと思ったのです。どうか、真剣に考えてはいただけないでしょうか」
そう言ったネイキッドはクリスタの手を取って指先にキスをした。ネイキッドの予期せぬ行動にクリスタの頬は真っ赤に染まる。
ネイキッドは王妃となるマリアのことが好きなはずだ。そのために愛を貫き、一生結婚せずにレイモンドの騎士を続けるのだ。そのはずだ。間違っても死にキャラであるクリスタに懸想するなどありえない。
混乱したクリスタは、思わずこう叫んだ。
「解釈違いです!!!」
そう叫んで逃げ出したクリスタを、ネイキッドとレイモンドは目を丸くして見つめる。叫んだ顔が確かに赤く染まっていたので脈が無いわけではないだろうと二人は思ったのだが……クリスタとネイキッドの関係が進展するかは、きっとこれからのネイキッドの頑張り次第だろう。