【24話】眩しい光
「ぐっ……!」
鋭い尻尾に腹部を貫かれたフェイムスが、テイルの上から転げ落ちてしまう。
「フェイムス様!!」
テイルの上から急いで飛び降りたリーシャ。
地面に横たわっているフェイムスの元へ、一目散に駆け寄る。
(なんてひどい傷……!)
貫かれた腹部には大きな穴が空いている。
赤い血が絶え間なく、どくどくと流れ出ていた。
フェイムスは体を震わせていた。
顔は青白くなってしまっている。
「今治しますから!」
両手を広げたリーシャは治癒魔法をかける。
でも、ダメだ。うまくいかない。
フェイムスの震えは止まらず、流れ出る血もそのままだ。
フェイムスが受けた傷は、あまりにも深かった。
これは致命傷。
リーシャの力をもってしても治すことができない。
「リ、リーシャ……怪我はないか?」
大怪我を負って死にかけているというのに、フェイムスは自分ではなくリーシャの心配をしてきた。
今はそんな場合ではないというのに。
(どうしてあなたはそんなにも優しいのですか……!)
リーシャの瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちていく。
「私は無事です! 心配いりません! だから今はもう、喋らないでください!」
「よ……良かった。リーシャを絶対に守ると、約束したからな」
力なく微笑んだフェイムスがリーシャの両手を掴んだ。
その手は氷のように冷たくて、まったく力が入っていない。
「……こんなことになるのなら早く言っておけば良かったな」
「こんなことってなんですか!? まだ諦めないでください!」
ほとんど怒鳴りつけるように大声で叫ぶ。
そんな言葉なんて聞きたくはない。
「今度は変なヒゲをつけないで私と出かけてくれるって、そう言ってくれたじゃないですか! あれは嘘だったんですか!」
「…………それ……は」
「約束を守らない人なんて最低です!」
「…………」
フェイムスの反応が消えた。
ゆっくりと瞳を瞑ってしまう。
そして、リーシャの両手を掴んでいたフェイムスの手がだらんと落ちた。
「…………え。う、うそ……ねぇ、フェイムス様? 起きてくださいよ」
けれども、フェイムスはそれに応えることはない。
リーシャはフェイムスの頬に触れる。
ひどく冷たい。
それが、死という残酷な現実をリーシャに容赦なく突きつけた。
「いやだいやだいやだ!! 死なないでフェイムス様!!」
また一緒に出掛けたい。もっとお話をしたい。
最後があんなひどい言葉でお別れなんて絶対に嫌だ。
「私が死なせない! 絶対に助けてみせる!!」
今まで一番強く願う。
突きつけられた現実を、リーシャは決して認めない。はねのける。
リーシャの体が金色の光に包まれた。
でもそれはこれまでのような、淡い光ではない。
すべてを照らすような、目がくらむほどの眩しい光だった。
その光に包まれるフェイムス。
腹部に空いていた大穴がふさがり、流れていた血が止まった。
青白かった顔が、みるみるうちに生気を取り戻していく。
そしてもう二度と開くことのないと思っていたフェイムスの瞳が開き、大泣きしているリーシャを映した。
「リーシャ……君が俺を助けてくれたのか?」
「フェイムス様!!」
フェイムスの体を抱き上げたリーシャは、思いっきり抱き着いた。
いったい何が起こったのか。
神子の力が起こした奇跡なのかは分からない。
でも一つ確かなのは、おかげでフェイムスが助かったということ。
それだけでリーシャは、もう十分だった。
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