表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/35

【15話】デートのお誘い……と思っていたけれど


 夜の十時。

 リーシャの私室に、フェイムスがやって来た。

 

「夜分にすまないな。少し話があるのだが、いいだろうか?」

「どうぞ。お入りになってください」

 

 部屋に入ってきたフェイムスがソファーに座った。

 リーシャはその対面のソファーに腰を下ろす。

 

 今日のフェイムスはいつもより落ち着きがない。

 緊張している風に見える。

 

(話って、もしかして……!)


 ラントルでの一件のような、神子の力を使って解決してほしい問題がある、といった類の話ではないだろうか。

 フェイムスのこの表情からして、かなりの危険が伴うような話なのかもしれない。

 

 でもリーシャは、このあとにどんなことを言われたって首を縦に振るつもりでいた。

 自分を全力で信頼してくれるフェイムスの気持ちに応えたい。


「一日だけでいいのだが……来週のどこかで時間を作れる日はあるか?」

「問題ありません。いつでも大丈夫です」


 ポーション作りにはかなりの余裕がある。

 一日くらい作業しなくても、ノルマはこなせるだろう。

 

「では、街へ出かけないか?」

「……街でなにかしらの問題が起こっているのですね。かしこまりました。バスティン王国のため、神子の力を使って穢れを払いましょう!」


 身を乗り出したリーシャはやる気満々に宣言。

 

 しかしフェイムスは、目を白黒させるだけだった。


「いや、そうではない。君の力を借りにきたんじゃないんだ」

「……では、いったい?」

「その……だな」


 フェイムスは言いづらそうにしてもじもじしてから、


「単純に、君と一緒に出掛けたいんだ」


 小さな声でポツリと漏らした。


「…………へ?」


 まったく予期していなかったことを言われたものだから、気の抜けた声が出てしまう。

 

 でも数秒後、リーシャはフェイムスの話を理解。

 

(ももももも、もしかしてこれって、デートのお誘いよね!?)

 

 顔がりんごのように、バーッと真っ赤に色づいていく。

 

「行きたいです!!」


 考えるよりも先に、言葉が口をついて出ていた。

 

 フェイムスは素敵な男性だ。

 そんな人とデートできるなんて最高のイベント。行かない理由なんてあるはずがない。


(でも、どうしよう! いきなりデートなんて心の準備が!)


 あたふたあたふた。

 体温が一気に上昇していく。頭がごちゃごちゃになってパンクしそうだ。


「良かった。君には数え切れないくらいの恩があるからな。ここに来てから、ほとんど外に出ていないだろう? だから日々の礼を兼ねて、羽を伸ばしてほしいと思ったんだ」


 日々王宮に閉じこもってポーション作りに励んでいるリーシャを、フェイムスは気遣ってくれたのだろう。

 なんて優しい人だろうか。

 

 でもそれはつまり気にかけてくれたというだけで、決してデートのお誘いという訳ではなくて。


(なんだ……そういうことだったのね。早とちりしちゃったわ)


 どうやら、心の準備は必要なかったみたいだ。

 その事実に半分ホッと、もう半分はショックを受けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ