2. 2
「……どういうこと?」
競歩めいた彼の足に合わせて半ば駆け足で追いかけ続けた芽美だが、三十分後には目を白黒させていた。理由は二つ。一つは当然というかなんというか、日ごろの運動不足がたたってついていくだけでも相当大変だということ。そしてもう一つは――。
「なんでまた同じ場所を歩いているわけ?」
あれから彼は病院の敷地沿いの歩道を進み、角を左に曲がり、また左に曲がり、さらに左に曲がり――彼を最初に発見したコンビニの前へと戻ってきたのである。
「なんなのよもう……!」
道を間違えたのか。落とし物か忘れ物でもしたのか。それとも尾行に気がついて敢えて同じ場所に戻ってきたのか。特に最後の可能性についてはあり得るが、彼は背後を一度も振り返らないから、それはない。……そう思いたい。
「こうなったらとことんついていってやるんだから……!」
意地だけで彼の背中を追いかけ続ける自分はよっぽどの暇人だと芽美は思う。コンビニで買ったスムージーはすっかりぬるくなってしまっているが、そんなことはもう気にする余裕もなかった。
ただ、意気込みだけはよかったものの、限界はあっけなくやってきた。
「だめ、もう無理……」
同じコースの三周目に突入し、彼が病院の前を通過したところで――戦線離脱。芽美の足はふらふらと病院へ向かっていった。何かの勝負をしていたわけでも願掛けをしていたわけでもないのに、妙な敗北感を味わいながら。