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映美の容態には回復の兆しが一切見えない。このままでは確実に死ぬだろう。その事実は芽美の精神を確実にむしばんでいた。
自分そっくりの双子、映美。同じ日に生まれ、同じ遺伝子を分かち合うたった一人の存在。数々の思い出を共有する、両親以上に深いつながりのある唯一無二の人間。映美が死ぬことは私が死ぬことと同じかもしれない――そんな妄想めいた思考に芽美は憑りつかれつつあった。
だが何もできずにいる自分はあまりにも愚かで無力だとも思っている。
母に言われるがままに病院に通うことしかできない自分には吐き気すら覚えている。
そのくせ母や景太が看病する様を下手な芝居を観ているような冷めた気分で眺めている、自分。何の役にも立たないことをして、と半ば見下して。
こんなことをしていても何の意味もないのだ。
でも――。
もしもこんな日々にも意味があるとしたら――?
そう、芽美は現状について納得できる何かを切実に求めていたのであった。ただ痛くて苦しいだけの日々に何かしらの価値があるならば……と、そう願っていたのである。
「歩き続けることにどういう意味があるのか、痛い思いをすることで何か得られることがあるのか、知ることができたらって……そう思って……」
ただ、やっとの思いで芽美がここまで言っても、彼にはなんら響いていないようだった。
「意味なんてない。お前の言う通り、ただ痛いだけだ。自傷行為みたいなものだよ」
長い沈黙の後、ようやく「そっか」と芽美が言った。
「ごめんね。お仕事の邪魔して」
声が震えるのをごまかすことはもうできなかった。
「ほんとごめんっ……」
鉄仮面のように表情を崩さない彼を前に、芽美はいたたまれない思いで花屋を飛び出した。もうこの心の穴を塞ぐことのできるものはどこにもないのかもしれない――そんな虚無めいた思いを抱えながら。
◇◇◇