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「ご近所からも気味が悪いからどうにかしてくれって言われていたものね」


「ねえ。怖いくらい真面目な顔してせかせか同じところばかり歩き回られたら、誰だって落ち着かないわよねえ」


「確かもう三年くらい続いてるんでしょう?」


 三年?


 三年もあんなことを――?


 三年という時の長さと重みを時間した途端、すでに他人というカテゴリに分類していた彼の存在が急速に芽美の胸に迫ってきた。恐ろしいほどに急速に。容赦なく。遠慮なく。


「でも実害はないから警察もどうにもできないって話だったじゃない?」


 やけに速くなった鼓動を意識しながら芽美は耳をそばだて続けた。


「そうなのよ。でも小さい子供がいる家庭にしたら、ああいう人の存在って困るでしょ? それで紀陽小学校のPTAが動いたのよ。学校に直談判して、花屋に連絡してもらったっていうわけ」


「へえ。どんな?」


「あなたのところの店員の奇行が子供達を怖がらせているって」


 花屋――それは病院のすぐ隣にある花屋のことか。


 映美の病室を飾る花は、以前は母、今は景太が持ってきてくれるから、芽美はその花屋には一度も入ったことはない。けれど店の前はしょっちゅう通っている。病院にお見舞いに行く人をターゲットにした、わかりやすいコンセプトの店だ。


「相川さんたらよく知ってるわねえ」


「だって私、そのPTAの役員をやってるもの」


「なーるほど」


「それでね。歩いている理由が変なのよ。自分を痛めつけるためなんですって」


「痛めつける? 変態なのかしら? それとも変人?」


「どっちでも迷惑なことには変わりはないわよ。まったく、どうしたらやめさせられるのかしらねえ」



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