経験不足
あれから数日が経った。三人とも弱点を克服しつつある。そんな時だった。
「失礼するよー。」
「Y1か。どうしたんだ。」
「いやーやっぱりSに3人とも預けるのは気が引けてさぁ。だから個人個人に教官をつけることにしたんだよね。」
「そんな暇な奴がいるのか?」
「Sも知ってる人だよ。」
「??」
「入ってきていいよ。」
Y1がそういうと後ろから2人の男女が入って来た。
「な!お前らは!」
「久しぶりだね。」
E1とY2。二人とも俺らと同期で両方とも超凄腕の殺し屋だ。
「ちょっと待て。こいつらも俺と同じぐらい忙しかったはずだぞ。どうやったんだ?」
「それがね。二人とも最近は仕事が回ってこないんだって。」
「?どういうことだ?」
「私が説明するよ。簡単に言うと他の子たちの腕が上がって私たちレベルが必要な依頼がほとんどなくなったってこと。だらか意外と凄腕の人たちほど仕事がなかったりするんだよ。」
「そうなのか?でも俺は意外と仕事が来てた気がするが…」
「お前の場合はどんな無茶な依頼でも達成できるからだろ。俺らレベルでも出来ない依頼がお前に沢山回ってたってことだ。」
「そういうものなのか。で、お前らは誰を引き取るんだ?」
「私はY1-1を育てようかな。」
「俺はY1-2だな。」
「じゃあ俺はY1-3か。」
そして二人はY1-1とY1-2のもとに近づき見定める。
「うーん…うん。鍛えがいがあるね。」
「こっちもだ。まだまだ伸びしろがあるなぁ。若い奴はうらやましいぜ。それじゃあそれぞれ移動するぞ。SもY1-3を自分の部屋で鍛えるようにした方がいいぞ。そっちの方がいろいろあるだろ?」
「まあ、そうだな。」
今まではY1の部屋で鍛えていたがY1はもともと情報収集が主だったため鍛える用のものがかなり少なかった。そのため俺の部屋から一々持ってきてたりした。
「それじゃあ行くぞ。」
「うん…」
そして俺はY1-3を連れて自分の部屋に向かう。
・・・
「一対一で教えられるようになったし、いろいろ言っていくぞ。」
「はい。」
「まずは相手の視点の誘導はまあまあ出来ている。そこら辺の下っ端、もしくはそれより少し上程度なら引っかかるだろうな。次に必要なのは経験だ。経験が圧倒的に足りない。だからこれから1週間、毎日俺と模擬戦を行う。」
「?人を変えた方がいいのではないですか?」
「そもそもそんな暇な奴が少ない。それに俺は1つの戦い方しかしないわけではない。変な奴らと100回模擬戦を行うより俺と1戦する方が経験になると思っていい。」
「わかりました。」
「それじゃあ、さっそくやるか。」
「わかりました。」
Y1-3は戦闘態勢をとる。
・・・
教官はただ立っているだけだった。普通の人なら油断しているように見えるだろう。でも私には見えていた。教官の凄さが。
『隙がない…』
隙が無かった。どこを攻撃してもカウンターを食らうイメージが湧いてくる。
「どうした?来ないのか?」
「・・・」
私は手元のナイフを投げる。それと同時に前にダッシュ。教官はナイフを打ち落とすために体勢を変える。その瞬間。ほんの少しだけ隙が生じた。私はそれを見逃さない。そこに向かってもう一本のナイフで斬りかかる。
『当たる!』
私がそう思った瞬間、私の身体は宙を舞っていた。見えなかった。何をされたのかは感覚で分かる。足を払われ、その勢いで身体を回されたのだ。
『なんで?』
確実に隙を突いたと思っていた。なのにその攻撃は当たらず、結局カウンターを食らっていた。そして私は地面に倒れた。
「いい判断だった。隙がない→隙を作る。ここまではよかった。だが最後に油断したな。その隙が罠であることに気づけなかった。」
「…ッ」
よくよく考えれば気づけたかもしれない。あれだけ隙の無い状態を普通に立っている状態で出来る人だ。あの程度の攻撃で隙を作れるわけがなかった。だったらそれでできた隙は罠。でもあの一瞬でそこまで頭を回すのはかなりの経験が必要だった。
「今日あったY2とE1はこんな罠には引っかからない。これは技術の差ではない。経験の差だ。そして経験の差は努力で埋めることができる。」
「わかりました。」
「それじゃあ次行くぞ。立て。」
「はい!」
私は教官に勝つ。今は無理でもいつか一撃入れる。そんなことを夢見て再び私は教官との模擬戦を始めた。




