購買でのこと
そういえばあいつの名前聞いていなかったな今度聞くとしよう。それにしても何か大切なことを忘れているような気がしたが購買へ向かった。
「だから言っているだろ。先に俺が取ったんだ!」
「いいや、私が先に取った!」
「いい加減にしないか二人とも!」
購買のほうから三人のケンカ声が聞こえてくる。
「やばいな孝志、この先に購買があるんだが関わりたくない連中がいるどうしよう!」
この先にいる二人は、この学校で恐れられている奴らだからだ。何しろとある裏の連中の息子や娘ということらしい。そんな奴らがいるところに焼きそばパンを買いに行かなきゃいけなのか…嫌だなぁ。
この先を右に曲がったら例の三人がいるのか。俺はこれから起こることを覚悟しながら購買へ行った。
購買に着いたらまず目に入った光景は、あたり一面のガラスの破片、ひっくり返った椅子や机の中で噂の二人を叱りながらなだめている男の姿だった。
「まったく、なんでいつもお前らは喧嘩ばかりするんだってんだ。こっちの身にもなってみやがれ。こんなに散らかして誰がこれをかたずけると思っているんだ!」
「それは、どうせ俺らだろ」
例の二人は、正座をさせられて文句を言っている。それはまるで子供が親に対して拗ねているようだ。
予想してたとは違う光景に俺は唖然としていた。
僕たちが少し離れたところで立ちすくんでいると彼らを叱っている奴がこちらに気づいた。
「そこのお前ら暇か?暇ならちょっと手伝ってくれよ」さっきまで人を叱っていた人とは思えないほどの穏やかさでこちらを招いてきた。
「用事があるからそれが終わった後でいいなら手伝ってもいいよ。それに、今ちょっと部活の奴らに追われているからかくまってくれないか?」突然の誘いに軽いパニックになってしまい即答してしまった。
「かくまうことはいいぞ。後はお前らの用事をさっさと終わらせよう。その用事ってのは何だ?」予想外の返答に俺は困惑していた矢先、後ろから僕たちを追ってきた奴らの足音が聞こえてきた。
「おい、ちょっとこっちのほうに来な」男はこちらに手招きをしながら右手を大きく横に振りぬいた。
それと同時に風が吹く。男の手にはさっきまで何も持っていなかったはずなのに鞭を持っていた。
「その線超えたらお前らもここの掃除の手伝いな」
何を言っているか分からなかったが、後ろを振り向いて理解した。さっきまで俺達が居た道は彫刻刀で削ったようになっていた。その後ろには、俺達を追ってきた人達が踏みとどまろうといる。
「おい、押すな出ちまうだろ!バカやめろ!うわあああ」止まることが出来なかった奴らがなだれ込んでくる。その後ろからは阿鼻叫喚の嵐が聞こえてくる。そして、次々と線を越えて人が流れ込んでくる。
一人また一人と人が流れ込んでくる。そのたびに、男がニコニコ笑っている。
孝志は、この状況が分かってないのか立ち尽くしている。
「さて、そろそろ用事とやらを教えてくれないか?」
「この人のことを南門まで連れて行きたいんだ。」なんだかこの人ならいいと思ってしまい頼んでしまった。
「それじゃあこいつらを連れていきな」男がそういうと叱られていた二人は驚いた表情でこちらを見た。
「えーウソだろ」
「や・る・よ・な」男は少し圧を放した。二人はしぶしぶ了承した。
僕は、焼きそばパンと頼もしい味方をゲットして購買を後にした。