表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

5.

ここから連載版となります。


 ——コンコンコン——


「マリエッタ?少しいいだろうか?」


「閣下?どうぞお入り下さい」

 

「急にすまない食事中だっただろうか?」


「いいえ……先触れを頂きましたし大丈夫でございます。食事は…...すみません、食欲があまりなくて。閣下こそどうされたのでしょうか? わたくし何か先程以外にも失礼がありましたでしょうか? 申し訳ございません、閣下自ら足を運ばせてしまい。本当ならわたくしが! 罰でしたら、閣下が仰る...…」


「違っ! 違うのだっ! そうではない、謝るのは俺の方だ。庭では頭ごなしに変な事を言ってしまってすまなかった......。その、お、おっ、お茶を一緒に飲まないかと、さっ誘いに来たのだ」


「まぁっ! 本当でございますか?え? わたくしが閣下と? 本当にご一緒しても宜しいのですか?」


「泣くな! いやっ泣いていい、そして先程の事だけではなくこれまでも、初めて会ったあの日から今日までずっとすまなかった。契約時の態度もそうだが、一人にしてしまっていた事も反省している。だがもし貴女が許してくれるのであれば、これからは俺が貴女の側にいると約束をする! それともこんな薄情な男はやっぱりもうダメだろうか?」


「いいえっいいえ閣下! わたくし貴方様に謝られる様な事は何もっされておりませんっ! むしろっ、おっお礼を言いたくっいつもっやさっしい方っ達に...…」


「いいんだマリエッタ、君は何も遠慮する事はないんだ。これからは一緒に自由に楽しく暮らして沢山話をしよう、少しずつでもいいから貴女の事を聞かせてくれ。そして俺の事も閣下ではなく、テオバルトと名前で呼んでくれないだろうか?」


 泣き出したマリエッタを思わず抱きしめ、俺がそう聞くと腕の中のマリエッタが震えている。


「はい、テオバルト様。わたっくしも......貴方様が許して下さるのならずっとお側にいたいと、そう願っています」


 初めてきちんと顔を見て、初めて触れた彼女はとてもとても細くて、とても可憐な泣き顔であった。

 涙を拭いてやると、謝りながらもやっぱり泣きながらお礼を言っていた。なるほど、ハンカチが何枚あっても足りない訳だと、妙に納得をしながらソファーの隣に座らせて落ち着くのを待った。

 

 ナタリーとリチャードがお茶の準備をしてくれている。マーサやスチュワートまで様子を見に来た。マリエッタの心配なのか俺の心配なのか......「両方だな」と、改めて己の不甲斐無さを感じているとマリエッタがもじもじしているのでどうしたのかと聞くと、近すぎて落ち着かないと言う。そうか、急に距離を詰めるのも負担になるかと腰を上げると袖を引かれた?


「テオバルト様のお側に居させて下さい! 慣れるよう努力いたしますので、その......もう少しだけ一緒に」


 そう言ってまた涙を溜めている、しまった!


「ああっ! マリエッタ、違うんだ席を外すつもりではないのだ。貴女の負担にならぬように、少しだけ距離を取ろうとしただけだから何も心配はいらない。焦らなくていいし、今みたいになんでも気にせず口にしてくれ」


 慌てて説明をすると、マリエッタはコクンと頷いて安心した様に微笑んだ。その顔は泣き顔と同じ様に可憐でもあり、とても可愛らしかった。俺は初めて見たはずのマリエッタの笑顔に何故か懐かしさを感じた。しかしそう感じたのはほんの一瞬で、彼女をもっと笑顔にしたい、いや! するんだと心に誓ったのであった。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ