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3.


「何をしている!猫を被り、私だけでなく屋敷の人間をも誑かすつもりか?」


 俺が急に現れそう問い詰めると、顔を伏せ「申し訳ありません」と謝り、言い訳もせずに部屋に戻ろうとする。


「待て、話はまだ終わっていない!」


 女を引き留めようとする俺にリチャードが珍しく意見してきた。


「旦那様、私は主人あるじである旦那様に何を言われても構いませんが、奥様は違います。その様に頭のおかしな発言で奥様を無闇に傷付けるのはおやめ下さい!」


「は?」


 俺の乳兄弟で歳上のリチャードが俺の事を旦那様と呼ぶ時は怒っている時だ。


「リチャード、やめて下さい。いいのです、わたくしは部屋に戻ります。閣下、朝早くに閣下の気分を害してしまい申し訳ございません。本日は城ではなくこちらにいらっしゃるとの事で、マーサとナタリーが閣下との朝食をと準備をしてくれていたのです。その為、代わりにリチャードに付いてもらっていました。閣下の侍従を私の用事に付き合わせてしまい申し訳ございません、リチャードはお返しします」


 女はリチャードを制止し、俺に言い返す事なく素直に頭をさげたので、従順なふりをしているのだろうと疑い警戒していると、


「リチャード、ナタリーに私の朝食は部屋に運んでくれる様頼んでもいいですか?ナタリーにも手間をかけてしまうから謝っていたと伝えてください。私は一人で戻れますから二人への伝言をお願いしますね」


「それでは閣下失礼いたします……」


「マリエッタ様! こちらもお使い下さい、朝食と氷もお持ちしますからそれまで休んでいて下さいね?そうでないとあの歪んだ性格の旦那様を止められなかった事も含めて、私がマーサに怒られてしまいますから。ね ?」


「フフ、リチャードはマーサが怖いのですか?でも閣下は何も悪くありませんから、マーサには何も言わないで下さい。それとハンカチを何枚もごめんなさい、こんな私の事を気遣ってくれてありがとうございます」


 そうリチャードに言ってあっさり俺から離れていく女の背中を呆然と見ていると、声を低く怒りを隠さない表情でリチャードから声がかかる。


「旦那様、朝食は後にして執務室に参りましょう」と。有無を言わせず静かに怒っている?


「いや、待て! 何が起きた? 何故あの女はあんなに泣いていたんだ?」


「あの女? 旦那様? もしや旦那様は奥様の事をあの女と呼ばれているのですか?」


「いや、だからちょっと待て!どうしたリチャード、何故そんなに肩入れしている? そもそもお前達は何故名前で呼び合っているんだ?まさかっ本当にたぶらかされたのかっ?」


 そう言った瞬間俺の前髪が凍った! リチャードが滅多に使わない魔法を使ったのだ。


「テオバルト、勘違いするなよ? 俺は魔法を発動させていない。怒りで漏れ出たんだ…...わかるな? 今すぐその腐った眼と頭を正常に戻し、自分の眼で見て自分の頭で考えるんだ。さもないと次こそ俺は己の意思でお前に魔法を向けるからな」


「わ、わかった! わかったから殺気をしまってくれ! ……部屋で聞こう」


 執務室に入りメイドに茶を用意させていると、リチャードが花を生けていた。「何故お前がその様な事を?」と聞くと、あの女に頼まれた事だと言う。頼まれた? いつ、何故? ……疑問が疑問を呼んでいると家令と執事と侍女長の三人が訪れた。


「さて、皆さん揃いましたね。ではこれより、頭の悪い旦那様にもご理解頂ける様に私どもからご報告とご説明をいたします。お覚悟は宜しいですか?」


 リチャードのやつ、皮肉なのか単なる悪口なのか......、言い返したいところではあるが、俺は我慢して皆の報告を聞くことにした。


 そう言えば、屋敷からの報告には執務の事だけしか返事をしていなかった事や、執拗に屋敷に戻る様に書いてあった事が、今更ながらに思い出されて何やら嫌な予感がする。昨夜からの使用人達の態度も気になっていた。


 あの女…...いや、マリエッタだったか。使用人達といい、リチャードといい、一体何があったのだ? 確かにすぐ帰らなかった俺も悪いかもしれんが、変わり過ぎだ! 何かに影響されているのか? 本当はこちらからいくつも質問を投げ掛けたかったが、ひとまず報告を聞かなければと自分を落ち着かせつつ紅茶を一口飲んで報告する様に先を促した。


 

もう少しだけシリアス感が続きます。



もう一本の連載中の作品は、ほんわか笑い多めですので

お時間ある方は是非お立ち寄り下さい。

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