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2.

再訪してくださりありがとうございます。




 気持ちが落ち着いた私は挨拶を受け食事を頂いた。

 私専属だという、落ち着いた雰囲気の女性が部屋まで温かい食事を運んでくれ、ナタリーと自己紹介されたので「ナタリーさん」と呼ぶと優しく注意された。公爵家の奥様なのだからだと、そう認めて貰えるのかとまた瞳が潤んでしまった。


 温かくて美味しいスープとパンとお肉とフルーツを食べた、半分も食べられなかったが食べながらその美味しさに涙が出てきた、次から次に……。


 私は壊れてしまったのだろうか?


 今までみたいに我慢が出来ない、おかしい。実家を出るまではいつもと同じだったと思う、どこからおかしくなったのだろうか?

 閣下の前に立った時? サインをした時?閣下のお気持ちを聞いた時? 期待をした……時だわ! あの時願ってしまったもの。ようやく抜け出せるかもしれないと、そして旦那様となる人に感情を……心を預けられるかもしれないと、そう期待してしまったのだろう。


 しかしその想いは早急に霧散した。何故ならこの結婚は『契約』だったのだから。

 せめてご迷惑にならないようにと、いつもの様に"無"になろうとしても感情のコントロール出来ない。


 困惑しつつ湯浴みと髪や肌の手入れもしてもらい、私はベッドに入りナタリーに綺麗にしてもらったお礼を言うと、ナタリーは喜んでくれた。おやすみなさいと挨拶をすると、「おやすみなさいませ、いい夢を」と返事をしてくれて上掛けをきれいに掛けてくれた。返事がある事、それだけで私はドキドキと胸が苦しくなり目を閉じる。流れる涙をそのままに私は眠りについた。



ーーーーーーーーーー



 暫く城に泊まるつもりだったが、王太子であるルーカスに新婚だから帰れと言われた。従うつもりはなかったが何故かあの女の涙が頭をよぎり少しだけ思案した。しかし結局俺は屋敷に帰らず城に寝泊まりをして、王女が来る事で増えた面倒な仕事を片付ける事に専念した。もとより俺は忙しいんだ。


 そして一週間後、屋敷に帰っていない事に気付いたルーカスに叱責され、強制的に屋敷に帰される事となった。

 城にいる間、屋敷からの報告や帰宅を促すような知らせが届いており、中にはあの女が倒れたとの報告もあった。

 しかし伯爵と契約を交わす際、あの女の巷の噂話とともに"娘は虚言で相手の気を引こうとするから信じてはいけない"と進言されていたので、「早速か」と思い家令達に対応を任せ執務関連だけを返答しておいた。


 屋敷に着くと使用人達と一緒にあの女も出迎えていた。

 契約を交わしたあの日から一週間ぶりだが、話す事もない為そのまま通り過ぎようとしたら声がした。

微かに震え泣いている様な声に立ち止まりそちらに顔を向けると一瞬だけ目が合った。しかし女はすぐに顔を伏せて礼を言ってきた。「部屋や侍女、そして気遣いをありがとうございます」と。


(また…...泣いている? すぐに屋敷に戻らなかった俺に怒りをぶつけはしないのか?)

「そんな事、貴女は気にしなくて良い。倒れたと聞いたがもう良いのか? 今後も何かあれば侍女長なり屋敷の者に言ってくれ! 出迎えも今後は必要ない」


 そう言い捨て俺は執務室に向かった。家令達や侍女長までも自ら報告に来たが忙しいからと後回しにして、そのまま湯浴みをして食事を一人で済ませた。

 帰宅してからずっと、何やら使用人達の様子がおかしいように感じたが、溜まっていた屋敷の執務に手をつけ報告は翌朝に先延ばしにして仕事を優先した。

 片付いた時はやはり夜も更けていたが、寝台で横になると妻となったあの女の事が頭をよぎる。

 聞いていた噂や、伯爵が話していた人物像と実物ではどこかちぐはぐで違和感があったのだ。

(気が強くプライドの高い女が、わめかず涙を流すだろうか?先ほども泣いているような声だったし礼を言っていたな……明日は少し話をしてみるか)


 あぁリチャードの話も聞かなければな、と明日やるべき事を考えながら俺は眠りについた。


 習慣で早くに目が覚めたので、部屋から庭を見下ろすと二つの人影が見えた。あの女が散歩でもして、侍従のリチャードが付いているのだろう。


 リチャードは俺の侍従だが、契約期間中は妻となるあの女に付ける事にしていた。

 二人が近付き、リチャードがハンカチを女に渡しているようだが泣いているのか?女がそのハンカチを目に当て言葉を交わしているようだ。


 俺は手早く着替えて庭に降りた。別に焦っている訳ではない、確かめに行くだけだ。ただの散歩で何があったのかと…...ただそれだけだ。


 何故か俺はそうして自分の咄嗟の行動に言い訳をしながら、二人の元に急いだのだった。





続きを気にしていただけるよう頑張りますので、

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