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14.


「どうして店に入れないの!」


「申し訳ございません、只今高貴なお方がご来店なさっており、店内が混み合わない様順番にご入店いただいております。ですのでもう暫くお待ちください。」


「何よっわたくしだって同じ客でしょう?中もそんなに混んでいないのに何故待たねばならないのよ!いい?わたくしはウォーレン侯爵夫人からの紹介でこの店にわざわざ来てやったのよ? 分かったのなら早く案内なさい!」


「ブレンダおやめなさい、屋敷に他の宝石商を呼びましょう。こんな店、待って入るまでの価値はないわ」


「えーせっかく来たのに……。ねぇお母様ちょっと待って、わたくしそこの入り口に立っている護衛を連れて帰りたいわ! ねぇ、そこのあなた?あなたこの店の警備をしているのでしょう? ここよりもお給金を多く渡すからわたくしの護衛になりなさい!」


(フフ!顔もいいし、背も高いわ!こんな店の警護より、貴族でこんなにも美しいわたくしに仕える事の方が幸せよね?宝石は買えなかったけど、いい拾い物をしたわ)


 

 宝石店の前でちょっとした騒ぎが起きていたが、店側は入店を拒否したわけではなく、入店の順番を待てない一組の客が声を荒げ紹介者の名を出したり、自分達を優先するようにと案内係に絡んでいたのだった。しかしその迷惑な客が主張する爵位が通用する事はなかった。何故なら店内にいる客は王族に次ぐ爵位でありその場の誰よりも高貴な客であり、だからこその店側の措置であったからだ。


 自分達の主張が通らないと知った母娘であろうその二人組は、散々爵位を振りかざし喚いた挙句店の前で待機していた護衛達にまでちょっかいを出し、あろう事かその護衛を連れ帰ろうとした。

 しかしその護衛は店が雇っている護衛ではなく、店内で買い物中グランジュの公爵テオバルト達の護衛だったので、対処にあたっていた案内係が報告するべく慌てて店内に戻ろうとドアノブに手をかけたその時。



「グランジュ公爵様、本日はまことにありがとうございました。こちらは心ばかりの品ですが、当店から奥様への贈り物でございます。お改めいただき、よろしければお納めください」


 店を出た所で店主から贈り物を贈られた。俺は馬車が来るのを待つ間にその中身を確認する事にした。箱を開けると中身は小振りな髪飾りであり、公爵家に取り入ろうとする贈り物(袖の下)にしてはあまりにも地味な一品であった。

 しかしそれを見た時マリエッタが「あっ!」と小さな声で呟いた。その小さな髪飾りは店内でマリエッタが気に留めていた物だったことを思い出した。


「髪飾りか…...石も小振りで品がいい、店主よ気遣い感謝する。マリエッタ、俺が着けてやるから少し横を向いてくれないか………よしこれでいい! うん、君の髪に青い石は良く似合う! 店主世話になった。」


 俺はわざわざ店の前で贈り物をしてきた店主の宣伝効果を狙ったパフォーマンス、いわゆる下心に気付いていたが、店内でのサービスに加え、この様な細やかな心配りや商魂魂に感心しつつ少し大袈裟に店主に礼を言って見せたのであった。

 

 その声は順番待ちをしていた客達のみならず、通りを歩いている人々にも届いたようで視線を集め、興味を引いてしまったようだ。

 そんな中......何やらうちの護衛がもめている事に気付いた......。



(あら? 沢山人が出てきたわね、店主が自ら見送りしているって事は、あの人が高貴なお方ね、どちらの方かしら? ……えええっ! 待って! すぅっごく素敵な方じゃない! さっきの護衛の男も霞んでしまうぐらいいい男だわ。……女連れの様だけど婚約者?それとも既婚者かしら?あっ! 女がこっちを向くわ、顔を拝んでやるんだからっ!)


「え?」

「マリエッタ……?」


 髪飾りを付けてもらう為、向きを変えたマリエッタの顔を見た女二人が同時に声を上げ、年配の女の方がマリエッタの名を呟いた事で俺はピンときた。もう一人の方、おそらく娘なのであろうその者は途端に眉間に皺を寄せ不快感を表していた。


(お母様の口からあの女の名が聞こえたけど、まさか......あれはマリエッタなの?何? 何故あの女がここにいるのよっ! しかも何故あんなに着飾って、あんないい男の隣に立っているのよ!)


「お母様? 今マリエッタと言いました?何故あの女が? マリエッタのはずないわよね? だってあの女は……確かめなくちゃ!」


 

 俺は、俺の色を身に着けたマリエッタが更に嬉しそうに微笑んでいる顏が見れてとても満足していた。しかし、その空気を壊すようにいきなり見知らぬ若い女が声を掛けてきた。

 そのあまりの不躾さに俺が眉を顰めると、慌てて護衛がその女を引き離そうとする。が、その女の口からマリエッタの名が呼ばれ、それを聞いたマリエッタの顔からは表情が抜け落ちた。


「やっぱりマリエッタだったのね? あんたこんな所で何してるのよ! お父様はあんたを金持ちの偏屈じじいに売ったと言っていたのに! これは一体どういう事なのか説明しなさいよ! さっき店から贈られていたその髪留めはどういう事? それにその格好! 私が聞いていた話と違うじゃない!」


「おっお客様! 落ち着いてください。畏れながらこちらは、グランジュ公爵閣下とその奥様でございます。大切なお客様に店の前で不敬な態度をとり問題を起こすのはおやめください!」


 勢いもだが言葉も荒くマリエッタに詰め寄る人間に店主が慌てて俺の身を明かし護衛達と一緒に諫めようとするが、店主の言葉は裏目に出てしまった。


「はぁあ? グランジュ公爵ですって!?」


 その女も一応見た目は貴族の令嬢で、マリエッタとの関係性がはっきりとしない今、護衛は即座に拘束する事も出来ず、せめて近付かせないよう距離を取らせることしかできずにいた。




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