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これは、知っているのに知らない君と3年越しにまた恋をする涙の物語  作者: 雨夜かなめ
1章 僕の知らないキミ
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湊音くんにならしてあげても良いですよ…

「私、お二人に聞きたいことがあります。」


そう望月さんがいきなり切り出したのは、ご飯を食べ始めてすぐのことだった。

お二人というのは、叶翔かなと詩乃しののことだろう。


「んー?何。」


そう、詩乃がもぐもぐしながら言う。

一回、落ち着きなさい。


「詩乃、食べるか喋るかどっちかにしな。」

「それに、口に汚れがついてる」


「ごめんごめん」


叶翔が汚れを拭き取る。

叶翔の奴、詩乃のことになると、すごい過保護になるんだよな。

それに、詩乃は叶翔に気を許している感じだ。


「詩乃と叶翔君は、その…付き合っているのですか?」


望月さんが少し恥ずかしそうにそんなことを聞く。

気になるとはこのことらしい。


俺も気になっていた。

初登校日にも関わらず二人は、気の許し合っている仲に見えた。

カップルといえば、確かにそう見えるかもしれない。


「あっはは、叶翔、私たちがカップルだって」

「あっはは、おっかしいー」


詩乃が腹を抱えて大笑いしている。

俺と望月さんは、何が面白いのかわからなくてポカンとした顔をする。


「そうだよな。高校からの友達だから知らないよな」

「俺たちは、いとこ同士。」


「そう。だから、家族ってところかなー。」


二人が慣れた感じで説明してくれる。

あ、そうなの?

どうりで親しげな訳だ。

詩乃が叶翔の言うことだけ素直に聞き入れるのにも納得がいく。


「そうなのですね。」

「ごめんなさい。とても仲が良かったのでカップルかと…」


「いいのいいの。いつも間違えられるから」


やはり、みんな勘違いしてしまうらしい。

それもそうだ。こんなにも仲の良い、いとこ同士は珍しいと思う。

ていうか、見たことない。

そんなことを考えていると、詩乃がニヤニヤしながら何かを企んでいる顔をしているのを見てしまった。


「そういうお二人さんは、どういう関係なんですかー?」

「もしかして、カップルとか?」


また、詩乃の悪いからかいの癖が出ている。

いつも止めに入ってくれる叶翔は、やれやれと顔をしている。

いや、助けてほしい。

叶翔は、もう止められるほどの燃料は残っていないらしい。


「あのな。なんでそうなるんだよ」


俺は、ため息混じりにそう弁明する。


「だって、みなとっちは初日から熱い告白していたし、二人きりで朝イチャイチャしてたじゃんか」


あれ?

俺の記憶と違う情報ばかりだ。

詩乃に勝手に改ざんされている。


「そうだよね?小雪ちゃん」


おい、そこで望月さんに聞くのはずるいぞ。

俺に聞くと、あれやこれやと言い訳を並べられるとわかっているらしく、望月さんにターゲットが向く。

詩乃はこういう時だけ本当に頭の回転が早い。


「えっと、本当に、そういう訳では…」

「私と、湊音くんは友達です…」


望月さんは、弁明できずにあわあわしている。

それに、ものすごく顔が赤い。

耳まで真っ赤になっている。

本当に何もしていないのに、望月さんが露骨に恥ずかしそうにしているから、何かをしていたみたいになっている。

望月さんは、男女のことにはとことん弱いらしい。

それに気づいたのか、詩乃暴走列車はどんどんスピードを上げていく。

叶翔というブレーキは、絶賛故障中だ。

もう、誰も止められない。


「じゃあ、友達ならみなとっちにあ~んしてみてよ」


詩乃が望月さんにそう言う。

いや、絶対そうはならないだろ。

「あーん」なんてカップルがやることであって、男女の友達は絶対にやらない。

それに、俺たちはまだ出会って2日目だ。

友達の証明材料としてはいささかおかしいと思う。


「いや、そうはなら」


俺が弁明しようとすると、それを遮るように望月さんが口を開く。


「わかりました。私と湊音くんが友達と証明できるならやります」


そう言って、隣に座っていた望月さんが自分のオムライスをスプーンですくう。


いや、え?

どう考えても詩乃に振り回されているでしょうが。

詩乃の顔を見て欲しい。

露骨に顔がニヤけている。


望月さんは真っ赤な顔でスプーンをこちらに差し出してくる。

その瞳は、いたって真面目だ。

望月さんは、かなりの天然だったのだ。


「望月さん、無理しなくていいんだよ」


あまりにも顔が赤いので、一様そう言っておく。


「いえ、やります」

「それに、湊音くんにならしてあげても良いです…」


そんなことを恥ずかしそうに言う。

あまりの不意打ちに、俺まで顔が赤くなってしまう。


「あの…湊音くん、私も恥ずかしいんですから早く口開けてください」


恥ずかしさで頭の温度も上がりすぎて、もう何も考えられない。

言われるがまま口を開ける。


「はい、あ~ん」


真っ赤な顔の、望月さんと目が合う。

差し出されたスプーンに乗ったオムライスを食べる。

あ、幸せ。

不意にそんなことを考えてしまう。

緊張しすぎてオムライスの味は全然わからなかった。


「こ、こ、これで私たちは友達です」

望月さんは、あわあわしながらそんなことを言う。


「そうだったね。2人は友達だったね」

「友達ならあ~んくらい普通だもんね」


詩乃はそんなことを、これでもかと言うほどの満面な笑みで言う。


「それに、みなとっちは嬉しそうで良かったよー」


詩乃にはお見通しらしい。

恥ずかしいけど、嬉しくなかった訳ではない。

というか、男なら女の子に食べさせてもらうのは夢だろ。

それに、望月さんは、クラスの中でもずば抜けて可愛い。

食堂ですれ違った男どもが、チラチラ望月さんを見ていたのを知っている。

うれしいに決まっているだろ。


「まあ、美味しかった」


嘘は言っていない。

味はわからなかったが、美味しく感じた。


「本当、みなとっちは素直じゃないねー」


うるさい。


「キーンコーンカーンコーン」


昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴る。

それを聞いた叶翔が、立ち上がる。


「昼休みも終わりだし、片付けて教室戻ろうぜ」


みんなでお皿を返却に向かう。

まだ、顔の温度は下がりそうにない。

今日は、もう望月さんと顔を合わせられる気がしない。

まあ、昨日と朝のことの弁明ができたのはよかった。

いや、良かったのか?


望月さんと俺は、2人とも顔を真っ赤にしながら教室に戻った。


"作者からのお願いです"


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面白くないけど最後まで読んだから、星ふたつ

頑張ってるから、星みっつ

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