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これは、知っているのに知らない君と3年越しにまた恋をする涙の物語  作者: 雨夜かなめ
2章 3年ぶりの再会と多くの謎
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望月小雪

「な、なんでマスターがここにいるんですか?」


望月さんの病室に入ってきたのは、なぜかマスターだった。


「どこかでお会いしましたか?」


「え?2日前に、カフェでお世話になった者です」

「覚えていないですか?」


店員は、基本的にはいちいち客の顔など覚えていないだろう。


でも、俺の場合は話が違った。

カフェで小雪と喧嘩して、マスターにはとてもお世話になった。


それに、その出来事があったのは2日前だ。

流石に、そんな客をすぐに忘れてはいないと思うが…


「2日前?カフェ?」

「すみません。覚えがないのですが…」


マスターは、本当になんのことだかわからなそうな顔をして、少なくともとぼけている感じではなかった。


「えっと、ここのカフェのマスターですよね?」


そう言って俺は、スマホをポケットから取り出し、2日前に小雪と訪れたカフェの名前をネットで調べる。


「嘘だろ?」


しかし、何度調べても『検索条件と十分に一致する結果が見つかりません』と画面に表示されていた。

他のサイトで検索をかけてみても結果は変わらなかった。

まるで、2日前に訪れたカフェは最初からこの世界に存在していないみたいだった。


「どうかなさいましたか?」


マスターらしき人は、俺のことを不思議そうに見つめる。


「すみません。勘違いみたいです」


背格好、立ち振る舞いといい、この前のマスターだと思うのだが…


『ガラガラ』


そんな一連の出来事の最中、病室のドアが開く


「戻りました」


望月さんが検査から戻ってきたみたいだ。


「お父さん…」


「小雪、遅くなって申し訳ない」

「体調は大丈夫なのか?」


「うん。もう大丈夫だよ」


お父さん?小雪?

一連の少ない会話でも、この人は、望月さんのお父さんだということが容易にわかった。


「なんか、久しぶりだね」

「4ヶ月ぶりくらいかな…?」


「前回帰ったのはそのくらいか」

「あまり帰れていなくてすまない」


「しょうがないよ…お父さんもお仕事大変でしょ?」


そう言うが、望月さんの顔はさっきから暗いようにも思える。


「この方が、望月さんのお父さん?」


「うん」

「そっか、湊音くんは初めてだよね?」

「私のお父さんは、こっちに滅多に帰ってこないから…」


さっき俺が話した人が、望月さんのお父さんみたいだ。


しかし、滅多に帰ってこないと言うことは、出張の多い仕事なのだろう。

見れば見るほどマスターにしか見えないが、やはりマスターではないみたいだ。


『トントントン』


そんな中、病室のドアがノックされる。


「望月さん、診察のお時間です」


ちょうど望月さんのお父さんが来たタイミングで、検査結果が出たみたいだ。


病室を後にして、診察室に入り医者の前に置いてある椅子に座る。


「頭部ct検査を行ったところ、今回の失神は、大脳皮質、つまり記憶を保管する場所にダメージを負たことにより起こったものだと思います」

「望月さん、もしかして昔の記憶が一部思い出せないなどの症状がありませんか?」


「えっと、3年前の記憶が、抜け落ちたみたいに思い出せないです…」


望月さんは、やけに言い淀んでそう言った。


「やはり…解離症」

「昔、記憶のことに関して検査していませんよね?」


「はい」

「病院に行く、機会がなくて…」


「記憶の空白が見られるのは、解離症の一種だと考えられます」

「お父さん、解離症は自覚しにくい病気です。少しでも娘さんを気遣ってあげてください」


解離症って確か、自分が自分でないような感覚に陥ってしまう、こんな感じの病気だったよな。

望月さんが、解離症…?


「はい。気をつけます」


望月さんのお父さんは、終始とても驚いた表情だった。

3年前の記憶がないことや、解離症について知らない、そんな様子だった。


「倒れる前、なにか昔のことを急に思い出したりしませんでしたか?」


「えっと、特には」


確か公園が懐かしく感じた、それ以外に思い当たる節はないと言っていた。


「今回の失神は、今後3年前の記憶が戻る前兆かもしれません」

「解離症にもいくつか種類があるので、今後は、解離症について重点的に検査していきましょう」

「これからは定期的に診察を受けに来てください」


望月さんは、うつむいたまま何も言わなかった。


「頭の痛みなどはもう大丈夫ですか?」


「今は、大丈夫です」


「では、診察はこれで終わりです」


「ありがとうございました」


そう言って、3人で診察室を後にして病室に戻る。

病室には、気まずい空気が流れる。


「なんで、知らないんですか…?」

「なんで、望月さんのことを3年も放置したんですか」


そんな空気を、ギザギザと荒く切り裂くように口を開く。

火に油とは、今の俺のことを言うのだと思う。


でも俺は、大切な人を簡単にあしらう、そんな望月さんのお父さんが許せなかった。


「いいの、湊音君いいから…」


望月さんが、俺の手を軽く引っ張る。

その手は、辛さ、悲しみからか、少し震えていた。


「良いわけがないだろ」

「あなたの娘でしょ?父親が娘のことを見てあげないで誰が見てあげるんですか?」

「3年間も望月さんはずっと一人で抱え込んできたんだ」

「これじゃあ、あまりにも望月さんが可哀想だ…」


『プルル、プルル』


そんな中、病室に携帯電話の着信の音が鳴り響く。

望月さんの、お父さんの電話のようだ。


「もういいです」


そういって、突き放すように望月さんのお父さんに背を向ける。


「すまない」


「はい。私だ」

「その件は、私のデスクにまとめておいた書類の…」


望月さんのお父さんは、電話をしながら病室を後にした。


なんで電話にでるんだよ。

娘が、病気だったんだぞ…


父親なら心配が先だろ?


「娘が大変だって言うのに、仕事優先って…」


望月さんのお父さんは、娘が病院にいるのに関わらず電話をとった。

それに、先ほどからまるで他人事みたいだ。

「大丈夫か?」の一言もない。


「あはは、お父さんいつもあんな感じなの」

「あくまで、仕事が第一優先」

「もう、慣れているから」


望月さんは、無理に笑いを顔に浮かべて、窓から遠くの景色を眺めながらそう言った。

そんな、望月さんの無理に作った表情は、少し悲しそうに見えた。


「慣れていても、辛いものは辛いよ」


人間の慣れは、適応しているとも言う。

でもその反面、すり減っていく自分の心の傷にも気づけなくなってしまう。


俺は、それをよく理解していた。

3年間小雪と会えなくなって、もう慣れてしまっていた俺がいた。

でも、久しぶりに小雪と再開して、いままで自分の心がすり減っていたことに気がついた。


だから、慣れていても辛いものは辛いのだ。


「ありがとう。そう言ってくれてすごく嬉しい」

「でもね、今は湊音くんが近くに居てくれるから私辛くないよ」

「湊音くんは、私にしっかり向き合ってくれる」

「私は、それがすっごく幸せなんだ」


いつも辛い時にそばにいてくれて、何度も助けられた。

俺も、望月さんが辛い時は、一緒に痛みを感じで寄り添っていきたいと思う。


俺の肩に、望月さんの頭がゆっくりと触れる。

二人で、病室の大きな窓から雨が降る外を眺める。


俺は、元気で危なっかしくて、支えたくなるような小雪も、イタズラ好きで子供っぽいところもあるけど、甘やかし上手で大人っぽい望月さん。

そんな二人が好きだ。

でも、どちらも選ぶことはできない。


どちらと一緒にいたいか。

これは決めなければいけないことだ。 

自分の心と向き合っていくしかない。


「体もまだ万全ではないし、そろそろ寝たほうが良いんじゃないか?」


「そうですね、そうします」


そう言って、望月さんはベッドに横たわる。


「湊音くん、わがまま言ってもいいですか?」


「お手柔らかでたのむ」


「今日は、寂しいのでずっと一緒にいてほしいです」


「ああ。そのくらいのことならお安い御用だ」


そう言って、望月さんを見守る形で椅子に座る。


「て、手握ってて」


今日の望月さんは、やけに甘えん坊だ。

今は、普段と同じように接してくれている望月さんだが、病気だっとわかって一番辛かったのは本人だと思う。

俺は、望月さんの3年分の心の傷を、俺のできる形で癒していきたい。


布団の横から、ちょこんと差し出された白くて綺麗な手を握る。


「安心してくれ。今日は、ずっとここにいるからな」


「ふふ、私は幸せものですね」


そう言って、望月さんは幸せそうな顔ですやすやと眠ってしまった。


「あの二人、かわいいわね」

「いいなー、私もあんな青春したかったなー」


なんか後ろから声が聞こえる。


声の方に振り返ると女性の看護師が、ドアの隙間からこちらを覗き込んでいるではないか。


目があった看護師たちは、足早に病室をさっていった。


うわ、恥ずかし。

そんなことも、青春だなと若いくせに思った夕暮れ時の病室だった。


俺は、そんな幸福感と恥ずかしさでいっぱいの病室で1日を終えた。


"作者からのお願いです"


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面白くないけど最後まで読んだから、星ふたつ

頑張ってるから、星みっつ

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