記憶の断片
「ということがあったんだよ」
「もう何が何だかわからん」
耳かきを終えた後、俺は、小雪と再会したこと、望月さんたちが消えたこと、姿が認識されないことなど、昨日のことを一通り話した。
「本当に昨日なのですか?」
「昨日は、確かに私と一緒でしたよね」
買い物に行ったのは、望月さんからしたら昨日。
俺に取っては、一昨日なのだ。
「俺は、24日を2回体験している」
「2回って、どういうことですか?」
不思議な顔で望月さんがいう。
この反応をするのは当たり前だ。
こんなことは現実ではあり得ないことだ。
「確かに23日に望月さんと買い物に行った。それは間違いない」
「そして、昨日、朝起きて正常に24日が始まったと思った。」
「そしたら、さっき話したたくさんの謎があって、今日起きたらまた24日だったわけだ」
望月さんは、こんな頭のおかしい話を真剣に聞いてくれた。
普通だったら、おかしな奴と揶揄されるところだが、俺が本気で悩んでいるのを見て、真面目に考えてくれる望月さんは本当に心の優しい人なのだと再認識する。
「同じ日が2回ですか…」
「すみません。私にも何が何だか…」
「そうだよな。俺も同じ感じで困っているんだよな…」
2人して、頭を抱える。
例のない出来事が起こっているのだ。
わからないのも当然だ。
そして解決策も原因もわからない。
だからこそ、俺も困っているのだ。
「今思いつく可能性としては、夢だったとかですかね?」
望月さんが考え込んだ後、そう言う。
望月さんの考えは、的確に的を射ていると思う。
「いや、それはないと思う」
「夢を見た次の日とかって、夢を見た事は覚えているけど内容までは覚えていない物だろ?」
「でも今回は、しっかり昨日のことを覚えているんだ」
「だから、夢ではないと思う」
とは言うものの、現実では起こり得ないことの連続で、夢の可能性が一番高いと俺も思った。
でも、それも違うとなると、もう八方塞がり状態だ。
「では、いったい何なのでしょう…」
「私がいなくなったと言うのも不思議ですね」
「私は、確かにここに居るのに」
本人に聞いても、望月さんが消えた事はわからないという。
「そうだな」
みんながいなくなった事に、関しては叶翔、詩乃にも聞いてみよう。
「となると、24日の2回目を体験したのは、やはり俺だけということになるのか?」
望月さんは、2回目の24日のことは知らないし、姿を現さなかった。
本人もそのことについては、身に覚えがないという。
「そうなりますね」
「漫画とかである、異世界に飛ばされたみたいな感じですね」
異世界に飛ばされた…
まさか、そんな事は現実にはないだろ。
それに、俺の通っている学校もあった。
富士山もしっかりあった。
少なくとも異世界とかではないと思う。
そもそも、異世界という選択肢が生まれる時点で、この謎は非現実的な現象が起こっているという事だ。
「日記があればもっと詳しいことが分かりそうなんだが…」
そう呟くように言う。
人間の短期的な記憶力では、全てを思い出す事は無理だ。
日記があれば、詳細なこともわかっていたのに、現状では、ざっくりとしか思い出せない。
大切なことを見落としているのかもしれない。
「あ」
俺のつぶやきを聞いて、何かを思い出したように望月さんがソファーから突然立つ。
「そういえば、私も最近不思議なことがあったんです」
「少し待っていてください」
そう言って、望月さんは寝室に走って行った。
「これなのですけど」
何かをもって帰ってきた望月さんがそう言って、『望月小雪』と少し崩れた文字で名前の書かれたノートを手渡される。
「これは?」
「多分、日記だと思います」
多分?
これは望月さんのものではないのか?
ノートの名前記入欄には、望月小雪と書かれているが...
「これは、望月さんの日記?」
「いえ、私にもよくわからなくて」
「なぜかとても大切な物な気がして実家から持ってきたのですが、こんなノートを使っていた覚えはないです」
「それに、この名前も私は書いた覚えがないんです」
謎の日記のページをペラペラとめくる。
その日記は、最初のページ以外白紙だった。
何かを書いた痕跡があったが、消したような跡があるので、誰かが消しゴムで消したのだと思う。
とりあえず、最初のページの内容を読む。
〜
2017-08-06
今日から日記を書くことにしました。
暗い顔をしていた私に、お父さんが日記を書くといいと教えてくれました。
お父さんとお母さんは、今日も喧嘩をしています。
引っ越した家も、もう嫌いになりそうです。
明日は、公園で友達を探しにいこうと思います。
家にいるのはとても辛いです。
〜
そんな、辛い日常が示された日記だった。
「このページは今日の朝、私が書いた物なんです」
「今まで日記の存在すら忘れていたのに、急に思い出したと言うか、なぜかこんな内容だったような気がして…」
「でも、こんな事昔に書いた覚えがないんです」
今が2020年だから3年前の日付だ。
望月さんは、3年前のことは何故か記憶がすっぽり抜けたように覚えていないと言っていたはずだ。
本当に、このノートは望月さんのものではないのだろう。
じゃあ、なんで急に…
3年前と聞くと、小雪のことを思い出す。
ちょうど、俺と小雪があっていたのは3年前の中学1年生の夏の頃だ。
それに、俺が小雪と初めて会った日は、この日記の次の日8月7日だ。
その日記は、まるで小雪の日常を綴った、そんな日記だった。
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