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これは、知っているのに知らない君と3年越しにまた恋をする涙の物語  作者: 雨夜かなめ
1章 僕の知らないキミ
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苦悩

「…音。湊音、起きて」


「ちょっと寝すぎだよ湊音ー。」


その声を聞いて勢いよく体を押し上げる。

周りを見渡すと救急箱が並んだ棚や、よく見る身長を測る機械がある。

それに、隣には知らない男子が驚いた顔をしてこちらを見ている。


「先生!起きました」


隣にいる男子が白衣を着た女性を呼ぶ。

白衣を着た若い女性はめんどうくさそうににゆっくりこちらにきて少し心配そうな顔をしている。


「あ、君大丈夫?」


「えっと…ここは?」

「俺はたしかさっきまで教室にいて…それから…」


「君、突然教室で倒れたんだよ。そこにいる三枝くんが突然保健室に入って来た時はびっくりしたよ。」


「お前、本当に大丈夫か?いきなり教室に入って来て突然叫んで倒れたけど。」


「えっと…今は大丈夫」


どうやらここは保健室で俺は教室で倒れたらしい。隣にいる男子は三枝さえぐさという名前で、俺を助けてくれたらしい。


そういえば教室で見た顔だ。


「多分、貧血だね。顔色もあまりよくないし、君まともな食事をとっていないでしょ。」

「それなのに廊下をあんなに全速力で走るから。」


その通りだ。

最近は一人暮らしを始めてずっとインスタントラーメンばかりの生活だった。

それに、昨日は限界まで春休みを終わらせたくなくて寝ずに粘っていたので寝不足でもあった。


「始業式はもう終わってみんな帰っている頃だろ。」

「とりあえずこの後昼飯でも一緒に食おうぜ。お腹空いているだろ」


始業式はもう終わってしまったらしい。

幸先の悪い形で俺の高校生活は始まってしまった。


保健室にある時計を見ると13時30分を指していた。

この学校は始業式の後に交流を深めるため生徒同士で昼食を取る文化があるらしいのだが、三枝君は俺に付き合っていたせいで、昼飯のタイミングを逃してしまったらしい。


起きてから時間も経っている。

状況の整理がつき脳が活性化してきた。


そうだ!教室には小雪がいたんだ。



「そんなことより小雪は?小雪が話しかけてきた気がするんだ」


そう。小雪が昔のようにさっき話しかけて来たはずだ。それで目を覚ました。


「小雪って。望月小雪さんのことか?」


そうだ。望月小雪。


「新入生はみんな帰っているし、この学校にいるのは私と三枝(さえぐさ)君、それと君だけだよ。」


いや、確かに小雪は話しかけて来てた。

意識ははっきりしていなかったけどあれは明らかに小雪の声だ。


「そんなはずない。さっき、小雪の声がしたんだ」


「えっと…君、やっぱりまだ少し体調が悪いんだよ。」


そう言って保健室の先生は棚の中にある救急箱を開け、貧血に効く薬を渡してきた。


「とりあえず、今日は一旦家に帰って明日に備えてゆっくり休んだほうがいい。三枝君はこの後どうする?」


「俺もこのあと特にようはないので一緒に帰ります。それに心配なので。」


「わかった。バスを呼んでおくから三枝君お願いね。」


俺は訳のわからないまま三枝君につれられて裸足で保健室を後にする。

脱ぎ捨てたはずの靴は綺麗に揃えられて下駄箱に置いてきぼりにされていた。


靴を履いて昇降口を後にして俺たちはバスを待つ。

バスはすぐに来た。保健室の先生が気を利かせて呼んでくれていたらしい。


バスの中は運転手を抜かせば俺と三枝君の2人だけだ。


「俺の名前は、三枝叶翔(かなと)。名前は?」


「矢野湊音」


俺は名前だけを言う。

今は人と話す気分ではない。


頭の中は小雪のことでいっぱいだったからだ。 

小雪は確かに俺を見て「誰ですか?」と言った。

正直、冗談だと思いたい。

でも、教室にいた小雪は昔と比べて話し方はおろか、まとっている空気感が全く違った。

昔の小雪は、雨上がりに雲の隙間から差し込む太陽の光のように俺を照らしてくれる元気な女の子だった。

でも、俺のあった小雪は、まるで月明かりに照らされた水のように落ち着いた雰囲気をまとっていた。

まるで別人のような感じだった。


人はそう簡単には変わらない。

3年間会っていなかったとしても、真逆のような性格にはならないはずだ。

それでも、あの綺麗な水色の瞳と亜麻色の髪は間違いなく俺の知っている小雪だった。


明日、もう一度確認してみよう。何かの間違いのはずだ。


「じゃあ湊音でいいよな。一緒のクラスだし1年間よろしくな!俺の事は叶翔って呼んでくれ。」


「うん」


俺は無愛想に一言だけ返事をする。


「すごい勢いで教室に入って来た時はめっちゃびっくりしたぞ。最初は強盗とかが入って来たのかと思って、これは俺の出番きた!とか思った。」


「ごめん」


「あー、別に謝ってほしくて言ったわけじゃないんだ。ちょっとびっくりしただけ。」


その後は、特に何も話さなかった。バスの走る音と叶翔のスマホの通知音だけが車内に響いていた。

叶翔には気を遣わせてしまった。


バスが駅に着いて2人は一緒に降りる。


「俺の家この辺だからまた明日な!」


そう言って叶翔は走って行った。


「俺も今日はもう帰ろう。」



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頑張ってるから、星みっつ

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