3年ぶりの再会と決別
2章開幕...
「こ、小雪…?」
突然立ち上がった望月さんからは、俺の古い記憶の中にある小雪のような雰囲気を潜在的に感じた。
いや、そんなわけないか…
多分俺の気のせいだ。
「先生お腹が痛いので、早退します」
そう小雪に似た望月さんが、先生に告げる。
突然早退するといい出した望月さんは、クラスの視線をたくさん集めていた。
先生の反応を待たずして、望月さんは鞄を持ってこちらに向かってくる。
近くに来て向かい合うと、いつもの望月さんとは、やっぱり違う雰囲気な気がする。
そんなことを考えていると、望月さんが俺の手を引っ張ってくる。
「ちょ、ちょっと望月さんどうしたの?」
すごく強い力だ。
俺は手を引っ張られ、廊下を転びそうになりながら歩く。
俺が入ってきてすぐに早退すると言い出したり、手を引っ張るわで、急にどうしたのだろうか。
「いいから」
望月さんはそれだけ言って、他は何も言わなかった。
俺が引っ張られてやってきたのは、学校の近くにある小さな喫茶店だった。
歴史のある感じでおしゃれなお店だ。
時間も中途半端だったので店内には、誰もいない。
ドアを開けると「ガランガラン」と鈴の音が鳴る。
「何名様ですか?」
カウンターから、グラスを拭きながら風格のある40代くらいのマスターが聞いてくる。
「2人です」
望月さんが答える。
「では、そちらのテーブルにお掛けください」
そう言って、窓から富士山が綺麗に見える席に案内される。
望月さんと反対の席にすわる。
今は、向かい合うような形だ。
席に座るとすぐにお冷が出てくる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「湊音は、決まった?」
学校から一度も話しかけてこなかった望月さんがやっと口を開く。
「うん。俺は決まってる」
俺はふとその会話に、違和感を覚える。
いつもは「湊音くん」と呼んでいたのに、今日は「湊音」呼びなのだ。
「私は、この粗挽きコーヒーをお願いします」
望月さんが、メニュー表を指さして注文する。
「俺は、日替わりコーヒーを1つ」
続いて俺も注文する。
コーヒーは詳しくないので、無難なものを選んでおく。
「かしこまりました。失礼致します」
そう言って、マスターはカウンターに戻っていく。
マスターが豆をザラザラと挽き始める。
その音と同時に、望月さんが口を開く。
「久しぶりね。3年ぶりかしら」
学校ぶりに話をした望月さんは、少し不機嫌のように感じた。
「望月さん、久しぶりって昨日会ったばかりだろ」
呑気に富士山を横目に、冗談混じりでそう答える。
望月さんとは、八王子でショッピングをしたりして昨日ぶりだ。
「昨日ぶり?」
「私たち3年ぶり、久しぶりの再会でしょ」
「いや、昨日八王子に一緒に行ったじゃないか」
昨日の出来事をありのままに伝える。
「バン」
望月さんが急に立ち上がって、机に凄い衝撃が走る。
グラスの中の水が、波のぶつかり合うように揺れる。
「昨日?」
「ふざけないでよ…」
望月さんが、机を思いっきり叩いて言う。
「自分から姿を消しておいて、3年ぶりに姿を見せて言ったことが、昨日会ったばかりだろって?」
「ふざけるのもいい加減にしてよ」
え?
「あの時、湊音は突然いなくなるし、お母さんとお父さんの仲はどんどん悪くなる一方で、すごく辛かった」
「湊音言ったよね?お母さんとお父さんが喧嘩して私が落ち込んでいる時、俺が小雪のこと笑顔にするって」
立ち上がった望月さん…
いや、小雪が椅子に座って悲しそうに言う...
「そんな一番信用していた人に裏切られた私の気持ちなんて、湊音にはわからないでしょうね…」
突然の出来事に、思考が追いつかない。
小雪がこんなにも怒っているのは初めてだ。
嵐の過ぎ去った店内には、マスターが豆を引くザクザクとした音と、時計のチクタクという音だけが響き渡る。
「は?」
「3年前、姿を突然消したのは小雪の方だろ」
声を荒げて言う。
ある日小雪は、親の喧嘩がどんどん激しくなり俺に助けを求めた。
親が不仲になっていく、私に居場所はないと。
その時の俺は、小雪を守ると意気込んでいた。
好きな女の子を俺が守るんだと。
でも、その1週間後小雪は姿を消した。
俺は、確かに助けると言った。
だから、突然姿を消した小雪をすごく心配していた。
それで、3年ぶりに再会した小雪は何て言った?
俺は3年間ずっと心配していたのに、小雪は、俺が突然姿を消して約束を破った裏切り者と言った。
俺は約束を果たそうとしたのに、小雪が約束を放棄するように姿を消したんじゃないか。
それなのに、約束の責任から逃げた裏切り者なんて言われる筋合いはない。
目の前に俺の知っている小雪が現れたことなどどうでもいいくらいに、俺の内は、そんな怒りの感情で溢れていた。
「俺は、突然いなくなった小雪のことをすごく心配してたよ」
「なのに、小雪はなんだ」
「自分から姿を消したくせに、俺が姿を消したって?そっちがふざけるなよ」
「親が不仲で辛かったのは知っている。確かに笑顔にする約束もした」
「でも、そっちが身勝手に姿を消したんだろ。これ以上俺に何を望んでんだよ」
「いや、何言っているのよ。突…」
小雪の声をかき消すように怒りをぶつける。
「自分が辛かったからって、いいように記憶を改ざんしてるんじゃねーよ」
「裏切られたのは俺の方だよ」
俺は、息を切らして椅子に座る。
小雪は先ほどまでの怒りとは違う、困惑と悲しみで溢れるような顔をしていた。
その顔を見て、先ほどの発言に対しての後悔が胸の中でじわじわと広がる。
「ガランガラン」
小雪はコーヒーのお金を机に「バン」と置いて、バックを抱きながら走って喫茶店を後にする。
ガチャンと扉が閉まる。
「はあ」
思わずため息が漏れる。
とりあえず、机に置かれていた水を飲む。
その水は、なぜだか後悔の味がした。
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