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これは、知っているのに知らない君と3年越しにまた恋をする涙の物語  作者: 雨夜かなめ
1章 僕の知らないキミ
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席替え

今日も今日とて、仕方がなく学校に来ている。

卒業資格を取るためには仕方がないことだ。

そんなことを考えると、隣で詩乃と望月さんがコソコソと喋っている。


「小雪ちゃん、みなとっちなんであんなに死んだ顔してんの?」


「なんか、席替えがあるってメールで教えてあげたらあんな感じに」


多分、俺に聞こえないように言っていると思うのだが聞こえているんだよなー。


「おい。そこ、聞こえているぞ」


2人はびっくりしたのか、ビクッとしている。


「湊音は、席替えしたくないのか?」


やりとりを聞いていた叶翔がそんなことを聞いてくる。

確かに、席替えは全学生が喜ぶイベントの一つだ。

でも、今回は事情が違う。

せっかく望月さんと隣の席になれたのだから、席は変えたくはない。

なんなら、一生この席でも良いと思っている。

今更、知らない女子の隣とか勘弁してほしい。

他の女子が嫌とかではない。

望月さんが頼りになりすぎるのだ。


「みなとっち、もしかして、小雪ちゃんの隣がいいから席替えしたくないとか〜?」


なんでわかった。

本当にこの女の子はこういう時だけ、恐ろしい。


「まあ、なんだ…知り合いの方がいいに越したことはないな」


ここで、望月さんの隣がいいからと素直に言ったら、また詩乃にからかわれるのは目に見えている。慎重に言葉を選ばなければ。


「じゃあ、小雪ちゃんじゃなくて他の女の子でも良いってこと?」


「できれば、望月さんがいい…かな」


もう、めんどうくさくなって来たので、素直に認める。


「おー、珍しく素直でよろしい」

「小雪ちゃんも、みなとっちの隣がいいって言ってたもんねー」


「げほげほ、ちょっと詩乃!?」

「それは言わない約束じゃ」


水を飲んでいた時にそんなことを言われて、咳き込む望月さん。

そんなに恥ずかしそうにしないでくれ、こっちまで恥ずかしくなってくる。


「今は俺たちと遠いから席が近くなるといいな」


叶翔が、割り込んで良い未来の話をする。

そのおかげか、詩乃はこれ以上からかってこなかった。

叶翔には、いつもお世話になっている。


「よーし、お前らの待ちに待った席替えをするぞー」


先生が教室に入ってくるなり、教壇から穴の空いた箱を取り出す。

俺たちのクラス1年2組は、くじ引きで席を決めるらしい。


「1年2組は、半年に1回しか席替えしないから慎重に選べ」


1回しか席替えをしないだって?

そういえば、この先生はめんどくさがり屋だった。


右の席の人からくじ引きを引いていき、俺がくじを引く番になった。


くじが複数枚ある中、俺は慎重に選ぶ。

この席替えで半年の運命が決まるわけだ。

望月さんと離れると、介抱してくれる人がいなくなって困る。


結局、どれにするか決まらず直感でくじを選んだ。

こういうのは、以外に直感で選ぶと良い結果になる気がする。


「結果は、放課後発表するから。お前ら震えて勉強するのだな」


先生は、少し笑いながら教室を後にする。

教室は「え〜」という声で溢れかえっていたが無視のようだ。


「隣になれるといいですね」


望月さんがそう微笑んでくれる。


「そうだな」


そして、放課後の席替え発表後。


「湊音、そういう時もある」


「そうだよー」

「席が遠くても昼休み喋れるじゃん?」


「お昼ご飯は一緒に食べましょう」


みんなに慰められる俺。

なんでかって?

俺だけみんなから離れた一番前の席になったからだ。

俺以外は運が良く後ろで固まっている。

詩乃と叶翔は隣同士で、その後ろが望月さん。

望月さんの隣は知らない男子生徒だった。

肝心の俺は先生の机の前だ。

よりにもよってあの先生の机の前なんて…

いつもの俺なら、まあしょうがないだろと割り切っているかもしれない。

しかし、今回ばかりは不運としか言えない。

物事は慎重に行うべきだ。

今日で、そう学んだ。


望月さんに別れを告げ、席を前に運ぶ。


「よろしく。湊音」


先生が悪い顔で言ってくる。


「最悪です」

「何か仕組みました?」


「流石に何もしていない。不運だっただけだ」


俺が少し問題児だからって流石に仕込みなどはしないことはわかっている。

でも、ここまで不運だと疑ってしまう。


「よーし、今日からこの席で…」


先生が、そう言おうとした瞬間だった。


「先生、目が悪いので前に行きたいです」


望月さんの隣の男子生徒がそう告げたのだ。

でも、俺はその男子生徒とは別の列なので交換はできないと思う。

俺は、この席で過ごしていくしかないと割り切る。


「じゃあ、湊音。お前が代わってやれ」


その時だった、先生が俺を指名したのだ。


「え?俺ですか」


指名されないと思っていたので、嬉しいよりも驚きの気持ちが先行してしまう。


「なんだ、嫌なら変わらなくてもいいんだぞ」


「いえ、ぜひ変わらせていただきます」 


なんと、落胆している俺を見て、先生が気を利かせて交換してくださったのだ。

先生、一生ついていきます。


席を移動するとき、交換してくれた男子生徒に熱い眼差しを送る。

男子生徒は俺と目があって、見てはいけないものを見たような感じで目をそらされてしまった。

でも、結果オーライだ。


「かなとっち、ラッキーだねー」

「明日、トラックにでも轢かれるんじゃないの?」


おい、物騒なことを言うな。

でも、そのくらいラッキーなことなのは間違いない。


「湊音くん、またよろしくお願いしますね」


「うん。よろしく」


いつものように望月さんと挨拶をする。


結果的には、仲の良い4人組で集まれた。

素直に望月さんの隣で本当によかった。


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