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第4話 森林と遭難③

お読みいただきありがとうございます。

 

 帰りは色々採取をしたため予定より30分程度遅れて到着した。

 どうやら0ポイントの大木はこの辺りではかなり大きなものらしく、目標があることから迷うことなく着く。


 1時間進んだポイントの手前で、数本の照葉樹がどんぐりや栗に近い堅果類を実らせていたため、数十個、椎茸や舞茸、松茸に似たきのこ類を幾らか確保できた。


 果実としては梨に近いものが10個くらい確保ができた。貴重な水分である。


 山菜ではヨモギ、クレソンに似た野草と少し毒々しい気もしたがヤブガラシに似た草を摘んできている。


 ヤブガラシは新芽なら酢の物で食べれる野草だが秋と考えて食すのではなく茎の粘液が虫刺されに効果があるとじいさんが教えてくれたのを思い出し確保しておいた。


(虫はいるもんね…。かゆいのは勘弁だし蟲毒も怖いからなぁ。効くかは知らんけど。)


 決死のディナータイム戦利品は新聞に包んで袋に入れて、影時計の確認をすることにする。影は左に動いており30度程度進んでいるため、概ね24時間くらいが一日で良いと思う。


 また中央より影が進んでおり、今は午後であると予測ができるため、早めに床を作ることとした。


 作るのは「デブリハット」と呼ばれる木の枝を三角にしたものを棟屋の長い枝にムカデのように連ねて、それを格子状にツタなどで編み込んだものを骨組みとして作り落ち葉を被せて作るシェルターだ。


 幸いなことに新聞紙があるため、床部に敷ける。また落ち葉の屋根の下に敷いて落ち葉がシェルターの中に入りにくくすることができる。


 枝の長さを合わせるために必要な斧やのこぎりはないため、適当な長さの枝があれば三角の高さを調整すればいいのと、連結させる紐もあるためこの方法で床を作る。


 この環境ならと思っていたものの、ツタがあるのか心配ではあったが、多少の時間を費やしツタを見つけることが出来てほっとする。


 ツタを見つけてからは、1時間もかからず完成することが出来たのは、じいさんの非常時サバイバルスパルタのおかげであろう。


 次は火を熾すのだが、その前にタバコを一服。


 針葉樹の皮を剥ぎ、落ち葉と共にタバコの火で火種を熾す。ライターがあるのは助かった。

 流石に摩擦で火を熾す技術はない。


 針葉樹は繊維の密度が小さいため火が付きやすく、広葉樹は密度が高いため一度火が付けば長く燃える。これが難しいのだが。広葉樹に火が付くまで多少手間取ったが、日が暮れるまでには、床と暖と明かりを確保することができた。


「しかし、配達前の俺。グッジョブやな。仕事の道具が役に立つのもあるが、何よりタバコを4箱買ったのが偉い!大切に吸おう…。」



 ※ ※ ※ ※


「さて、一服もしたし。そろそろ腹を決めよう。」


 袋から食材(願望)を取り出す。

 まず、自分のいた世界の常識から考えて、きのこは生では食べれない。

 野草も基本的には火を入れたい。。

 調味料はない。油もない。あるのは火だけなので焼くしかないのだがフライパンもない。


「高校から使ってる思い出の品なんだけどなぁ…。」


 丈二は筆記用具の入っている筆箱「カンペン」を二つに折る。不格好なカントリーカップだ。


 どんぐりと栗もどきの実を一方に入れ、梨もどきを刻み数個入れ、火で消毒し冷ました石で擂って捏ねていく。


 実は梨もどきは帰り道に食べており、梨のような水分と甘みと柑橘類のような酸味があり美味しく食べれるのは確認しているため、その甘みと水分で劣化栗団子を作っているのである。

 それを後ほど焼いて食べる予定だ。


 山菜はどうしよう。クレソンはサラダで食べることが多いと思うが、流石に「もどき」でしかないため、生は怖い。


 ヨモギも乾燥させたり蒸したりして餅とかお茶として使ったり、てんぷらとして食べるくらいしか思いつかない。


「うーん。取り合えずカンペンカントリーカップで炒めて各々を食べてみよう。食べて良ければ、ヨモギもどきを栗団子に入れて、クレソンもどきはきのこ用のハーブとして使ってみよう。」


 きのこは…。何よりも食べるのが怖い…。だが。

 端の部分を切り、枝で作った串に刺し焼くことにした。お好みでクレソンをアクセントに。


 椎茸や松茸もどきの他に色鮮やかなきのこ等たくさん見つけたが、茶色一色で尚且つ食べた記憶のあるきのこの見た目をしたもののみ選んでいる。


 匂いも何となく知ってるものに近い香りがしているので、大丈夫…だと信じたい。特に松茸は赤松っぽい木の群生に生息していたものであるし。


「ここでお腹壊すと悲劇よなぁ…。お腹壊すくらいで済めばいいけどね。はは…。」


 今目の前にある食材はまさに『期待はあらゆる苦悩のもと。』だなと苦笑いをする。



 ※ ※ ※ ※



 食材達?を下ごしらえをし、良く火が回っている薪を一つ取り別け、まずはカンペンカントリーカップで山菜を焼く。


 火が通ったところで口に運ぶ。うん。味はクレソンとヨモギに近い。青臭い味が疲れている体には有難く、それは毒ではないと感じる。


「これなら、栗にも、きのこにも使って良さそうだな。」


 まずはの一安心で急にお腹がすいてくる。

 その勢いに任せて栗団子ときのこ串を焼き頬張る。


 結論から言うと栗は栗で栗団子は少し渋いが甘く、きのこも普通に椎茸や松茸の味がして、梨もどきの汁をかけて食べると絶品でもあった。


 それら時間をかけて食べれるだけ食べ、気が付くと辺りは日が落ちかけている。


「お腹も崩さないで済みそうだ。取り合えず食べ物はぎりぎり大丈夫かな。」


 日は落ち、少しづつ肌寒くなって来ている。焚火に薪を追加し、ゆっくりと風に揺られる火に当たりながら、夜を迎えるのであった。


 ※ ※ ※ ※


 薄暗くなる辺りとは反対に、焚火の明かりが強くなる。


 未知の場所、しかもなぜか森の中。辺りは暗く何が生息しているかもわからない。

 そんな恐怖を、焚火の火はゆらりゆらりと揺れ心を落ち着かせる。


 梨もどきをデザートに今日初めての休息時間。


「はぁ~。これでウォッカかバーボンがあったらなぁ。」


 ある程度の暖を取り、体が温まったところでデブリハットの寝床に入る。不思議な安心感とともに、非日常に疲れた体は深い眠りに着くのだった。感謝。



[期待はあらゆる苦悩のもと:シェイクスピア]

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