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[若月編] 歪なカタチの若い月①

少し遅れました。

 若月編


 コールマンはコールマンの、若月には若月の依頼があり、それぞれの報告をするため、門に入ってからは別々の行動をとることになった。


 若月は、今回の初依頼の中で考えさせられることが多かった。


 薬草が見分けられない。ひとりでは二つを守れない。この辺りのモンスターを倒すのは正直容易い、が、倒してからの処理がまったくわからない。


 確かにコールマンの指摘のように、ギルドに所属して師に仰ぐ必要があると彼女は思う。だがそれはギルドに入って師を見つけるではなく、師と仰ぐ人がいるギルドに入りたいと思う。


 当然、昨日この街に来た彼女には宛があるはずもなく、今ギルドに入るとしたら前者となるのであろうことが、彼女を悩ませ、冒険者組合に向かう足を重くさせていた。


 冒険者組合に着くと、カウンターの奥からリリアが声を掛けてくれた。

 無事に帰ったことと、依頼遂行の報告に労いの言葉をくれる。


「若月さん。無事に依頼遂行お疲れさまでした。そしてお帰りなさい。初依頼達成おめでとうございます。早速確認と報酬受け渡しを進めますね。」

 空いているカウンターに案内され待つ。


 リリアの準備が終わり、若月は雑薬草とゴブリンの耳、コモンウルフの牙を渡しながら、依頼中のことをリリアに話す。

 特に、コールマンがいなければ、雑薬草の区別がわからなかったことや、討伐部位の解体の仕方など、多分自分ひとりでは依頼の達成が困難であったことを中心に相談をした。


「ん…。若月さんは考えすぎな気もしますけどねぇ。初回の冒険なんて皆そんなもんですよ~?確かに雑薬草を見分けできないのって貴族様くらいな気がしますけど。」


 多くの新人冒険者を相手にしているリリアにとって、若月の心配は普通のことであり、良くある失敗の種であった。

 だからこその冒険者組合でそのサポートが彼女の仕事でもある。


「若月さん。いえ若月ちゃん!」

 リリアの目の力が少し怖い。


「若月ちゃん。依頼を受けるときに分からないことがあったら、私に遠慮なく知らないことをハッキリと伝えてください。それを受けて私がしっかりサポートします。恐らくそのコミュニケーションと信頼関係が今のお悩みは解決しちゃう気もします。だから私を頼ってください!案外できる子なんですよ。私!」


 歳が近いのもあるのもあり、リリアもこの若い冒険者の悩みが少しだけ分かり距離を無意識に縮める。


 若月もそれを嬉しく感じていたため、「ちゃん」で呼ばれて硬さが幾分かとれた。


「そうですね。私は少しばかり知らないことが多過ぎると思い知らされました。はい。リリアさん沢山頼らせてもらいますね!あとギルド?でしたっけ?そちらについても相談したいのですが。」


「ギルド!そうでした。そうでした。っとその前に報酬です。お疲れさまでした。護衛任務で銀貨1枚、コモンウルフ討伐他で銅貨5枚の合計銀貨1枚と銅貨5枚になります。お確かめください。」


 リリアから報酬と登録プレートを受け取ると、悩んでいたことを忘れるくらいの高揚感が彼女を包む。


「わぁ。初任給って奴ですね。これは想像よりも嬉しいものです!!コールマンさん達に何か買って帰りましょうか。どうしましょう。」


 その現金な素直な態度にリリアも嬉しくなる。


 若月が依頼を受けている間、リリアは、ギルドのリストアップをしていたようで、幾つかのおすすめギルドを紹介してくれた。


 紹介したギルドは4つで、2つは新人が最近設立したギルド、1つはこの街で4番目に大きなギルド、最後の1つは《《少し変わり種の中堅ギル…ド》》?であったが、彼女の中では、その最後の1つが彼女の悩みを解決してくれる最良のギルドだと思っていた。


 どのギルドも、新人で女の子の若月が入ることを考え、メンバーの構成から選んでいて、彼女が入りやすいものを選んでいるつもりだ。


 後は、若月のビジョンというか目的が「ギルドを大きくするのを楽しみたい」なら新人ギルドでいいし、「初めから最前線で頑張りたい」なら大きなギルドに入ればいい。


 ひと通りの説明を聞き、その間にすっかり打ち解けた若月は、帰り道に考えていたことを素直にリリアへ告げる。


「リリアさ…ちゃん。私には師匠が必要なのかもしれません。ギルドに入って師を見つけるではなく、師と仰ぐ人がいるギルドに入りたい。そんな思いがあるんです。我儘かなぁ。」


「それもひとつの考え方だよねぇ。そういう人もいるよ!だけど、その場合まず師匠を見つけることになるからそこが難しいのよねぇ。」

 う~んとリリアは腕を組む。


「でも何で?さっきの討伐依頼で自分の力量に不安を覚えたとか?採取と素材回収の問題点は分かったけど、戦いで困ったこととか何かあったのかな?」


「正直、コールマンさんの反応から自分の戦い方が独特なのかなぁ?と思うところはありました。何か困った顔をなされてたんですが、何が間違っていたかわからなくて…。ですが、今日のモンスターさん達は正直強くないと感じました。」


「コールマンさんが困った顔かぁ。若月ちゃん思い出せる範囲でその戦いのことを教えて貰っていい?まずゴブリンを何体倒したんだっけ?」


「8体だったと思います。全員で私を囲もうとしていたので、敢えて囲ませて一連の流れですべてを倒してしまって…正直、数は間違っているかもしれません。」


「え!? …続けて。」

 リリアの顔が少し強張るも、笑顔を保ち若月の説明を聞きく。


 確かに、誰かが彼女の常識のなさを理解し、少し導いてあげないといけないなぁと考えた。きっと、そのコールマンの困った顔の意図はそこにあると彼女には思える。


 が、リリアが一番の気になったのは、彼女の戦いを振り返ったときの表現である。

 まるで、魚屋に売っている魚を「魚の死体」と捉えるのではなく「食材」と人が捉えるような表現をモンスターに向けている。


 ゴブリンに負ければ孕まされる…。


 彼女は知らないだけなのかもしれないが、一般的にはゴブリンを多数相手をするとき、特に女性は、上級冒険者であってもその危険があり、犯され廃人になることもままある。

 そのことから、女性冒険者の対多数ゴブリン戦では、恐怖心を忘れず、絶対に退路を確保して囲ませないことが常識である。


 冒険者がその対策をする行為は、ある意味では、ゴブリンに対する命のやり取りをしている敬意の裏返しでもあるが、彼女の説明からは、その相手に対して、命の奪い合っていることへのリスペクトが「全く伝わってこない」。


 むしろ、「ゴブリンさんの顔を切ったときの剣の角度が気持ち良くて、そのまま隣のも一緒に綺麗に斬っちゃいました」と彼女が言った言葉が、「魚を背開きで処理したら、今日は腹骨も綺麗に処理出来てたので食べるときに骨が残っていませんでした」のような表現に思える。

 確かにこれは、戦いに慣れた上中級冒険者なら普通に言って功を誇っている表現なのかもしれないが…。


 それでいて、雑薬草の採取を振り返っては、「足元にある草を全部毟り、どうしましょう?どうしましょう?と、わたし頭が真っ白になってしまいました」と両手を頬に当て笑顔できゃっきゃと首を振りながら乙女のように説明をしてくる。


 ―――なんとなく…(いびつ)だ。


 話を最後まで聞いていて彼女が感じたのはそれであった。


 彼女は確信する。この子はきっと…。

 そして、今は彼女自身にギルドを選ばせる時ではない、というか…彼女を導けるギルドは少ないだろうと思う。


 だから方針を変えて提案をしてみる。


「若月ちゃん。少しの間、私の斡旋した仕事を受けながら、師というか若月ちゃんを導いてくれそうなギルドを探してみない?街のお手伝い依頼とかそんなのも入れて、この街のことを知っていくのも若月ちゃんの相談に対する答えのひとつかな~?なんて思っちゃった。」


 少し悩んでいたが、若槻はリリアの提案を承諾する。


 やっぱり直感は当たったかな…後であの人に相談をしてみようとリリアは思った。

 そして彼女に斡旋する明日の依頼を考える。


 ※ ※ ※ ※


 コールマンは採取の報告をしに知合いの店に寄っていた。


「いらっしゃい。お!コールマンさん。こんな時間に珍しい。何か飲みます?開店前だから一杯奢るよ。」


「あぁ。ちょっとお前に報告があってな。悪いがキンキンに冷えたエールを頼む。」


「報告?何かあったんですか?」

 店主はグラスを冷やしながらコールマンに聞く。


「いやな、昨日門外で面白いものを持ってるお嬢ちゃんと知りあってな。それでちょっと世話を焼いたんだが、取り合えずこれを。」

 とコインを店主に向けて指で弾く。


「ん。これ…は?」

「軽いだろ?そして精度が凄いだろ?同じものを見たが寸分たがわずなんだが、ここの数字だけ違ぇんだ。」


「へ…へぇ。」


「でな。ヒビキの宿を使ってくれることが縁にもなって、流れで冒険者登録に一緒に行って、その後に俺のブラックマウント鉱石の採取につき合わせたんだ。報告のひとつは、鉱石が大分減ってきたとってのだ。誰かが先に拾っていったのかもしれない。」


「あんな場所にあれが落ちてるって気が付く奴がいるのかねぇ。いいですよ。こっちでもその点は探っときます。お待たせしましたエールです。冷たいうちにどうぞ。」

 店主はコースターを引き、酒を出す。


「悪いな。そっちは任せた。でだ…。」

 出された冷えたエールを一口飲み話を続ける。


「そのお嬢ちゃんなんだが。リリア嬢ちゃんが担当だったんで、俺の採取を指名依頼にして貰って、併せてゴブリンとコモンウルフの討伐、雑薬草の採取を斡旋してもらったんだが…。」

「相変わらず世話焼きだなぁ。ん?どうしました。」


「正直、(いびつ)だった…」


 同じ頃、違う場所で、若月に対するリリアの感想とコールマンが現地で感じた直感は、くしくも同じ言葉で表される。


(いびつ)?」

「色々とな…。」


 店主は、コールマンの表情を見て、これは話が少し長くなりそうだなと、彼に2杯目のエールを出し、自分もバーボンのロックをちびりと口にしてから、ゆっくり煙草に火をつけた。

「続きが気になる!」「面白そう♪」など思われましたら、下記にあるブックマーク登録・レビュー・評価(広告の下にある☆☆☆☆☆→★★★★★)をいただけると、嬉しいです♪


今後の執筆活動の励みになりますし、この作品の展開を考える参考にもなりますので、よろしくお願いします!

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