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閑話 八木とケレース(下)

閑話のラストです。

八木君とケレースが主人公を助けるために頑張ったお話で終わります。


(中)の各々の目線から、ふたりを見守る第三者目線に戻ります。

「あるっちゃ~あるっすよ?でもジンジンは命掛けれるっすかぁ?」

 ケレースは満面の笑顔の中に少し冷たい光が籠る。


「問題なしー。僕が何かをすれば助けれるってことよね。」

 ケレースの予想通り、八木陣は何を言っても乗るであろう顔になっている。

 まぁ、そうなるっすよねと簡単に説明を始める。


「時間がないので簡単に説明するっす。ジンジン一旦あちらの世界に行く挑戦を受けるっす。そうすればば可能性が出るっす。時間がないのでYESかNOで即決するっす。」


「当然YES。」


 ※ ※ ※ ※


 八木陣の精神は、暗黒世界に飛ばされ彷徨う。

 丈二から、振り向けば元の世界に戻れることを聞いていたから振り向かない。

 必死に光を探し、見付けそれを目指す。


 これは…思ったより辛い。

 言葉で聞いて理解出来るものではない試練だ。

 何十回もの気力の理性の限界を超え、恐怖を覚えなくなった頃、光に辿り着く。


 辿り着いたのは広大な草原。

 立っている真横に広葉樹の木があり落ち葉を落としている。

 これが自分の思う文明のないイメージなんだなと八木陣は思う。


 恐らく、ケレースを呼び出すのは容易だが、聖霊の存在を感じることが出来ない。

 迷いながらも、まずはケレースと落ち合おうと考える。


「ケレた~ん。そろそろ出てきていいおー。」


「ぷぷぷ~。よく辿り着きましたっすね。流石ジンジン。あたしは本体っすから()()()()()()っすかね。」

 黄色いシルエットのケレースの口元が吊り上がる。


「いいっすか?今ジンジンはどちらの世界の時間軸に干渉していない世界にいるっす。なので時間を気にする必要はないっす。箱庭のクリア条件は分かってるっすよね。知っている人が来るなんて初体験っすよ~。責任取ってくださいっす~。」


「OK。あっちの世界に戻ったら死ぬまで分体さんを大事にするわ。」

「ふぇ。その返しは想定してなかったす。ちょっと照れるっすねぇ。でも面白いからゲーム友達からでど~っすか?」


「ゲーム友達かぁ~了解。」


「じゃ頑張るっすよ。クリア出来たら、分体で思いついた作戦を話すっす。」

「それも了解。」


 本当にこの子は~と慈愛の目をケレースは向ける。


 ※ ※ ※ ※

 箱庭の試練を抜けるために八木陣は2ヵ月を要した。

 理由は色々あったが、一番大きな理由は丈二から聞いた優しい風であった。

 彼は風を探し風を求めた。


 それが間違っていると気が付くのに1か月半かかる。

 その間違いに気が付いた時に生まれた探求心こそが、彼の試練へのヒントであったが、そこから答えを導き出すのに半月を費やした。


 存在を把握できたのは火の精霊ボレアースで鳥の見立て。半月掛かった原因は鳥を想像していなかった固定観念であるが、この鳥を火に結び付けていたのは彼のイメージであったことも事実であった。


 これらのことからも、ほぼ一日でこれをクリアした幼馴染が異常であることを彼は悟る。それと同時に自分の目的を再確認する。


「やぁケレたん。お久しぶり。何とかクリアしたぞー。」


「おつおつっす。固定観念って奴っすかねぇ。結構かかったっすねぇ。まぁこれでも頑張った方なんすがねぇ。ジョジさんとかが異常なんすよ。」


 とか?

 他にもこんなの初日クリアなんて出来るやついるんだと思うも、今は、そんなことどうでもいい。


「じゃ。ケレたんの作戦PLZ。」


「OKOKっす。本当はここからあたしの分体と契約って思っていたっすが、それは既に終わっているっす。ゲーム友達から始めるって奴っす。残念ながらジンジンが死ぬまでの平等な契約っす。」


「了。こんな美人なら願ったりかなったり。問題無。」


「では、次におかあ様に会って貰うっす。ジンジンはジョジさんの協力者っすから、次の世界に進むのは理に反する可能性が高いっす。なので謁見での願いは『協力者としての機能をアップデートすること、そのアップデートの権限をあたしに委ねる』よう願うっす。」


「ふむ。良いけどケレたん常識の範囲でね。今の使い勝手が悪い訳じゃないんだし、僕は不具合があるのを直して貰えればあいつを助けられるって思っただけよ?」


「恐らく、その権限を与えられるのは、分体のあたしの方っす。今回は充電するマナも考えないといけないので、分体に持たせるマナではアップデートにはちょっと足りないんすよね。それをジンジンから貰うって算段なので大したことは出来ないっすよ?精々声と検索したことを自由に送れる程度っす。」


「元の世界でそれ出来るん?マナないんしょ?」


「その為の分体契約なんすよ。その為にジンジンの世界を統べているおとお様にも会って貰うっす。娘さんを下さい~って奴っすよ~きゃっ!後、このアップデートはジンジン世界側の協力者機能のアップデートなので筋を通さないとい怒られちゃうってことで理解して欲しいっす。」


「ういうい。了解~。」

「軽いっすね。もう腹決めてるっすから、何を言われてもやりまーすみたいな感じっすか?wまぁいいっす。それでは、謁見の扉を御開帳っす~。」


 ※ ※ ※ ※


「状況は理解しました。暁 丈二には私の力を与えることはもう出来ません。ですがこの不肖の娘の考えの通り、あなたには権能を手に入れる権利があります。望みは叶えましょう。但し娘の分体の範囲内でです。」

 オプスにはケレースから話が既に通っていたのであろう。スムーズに話が進む。


「そして暁 丈二との契約により、あなたは彼方(あちら)に縛られています。また、あなたと娘との契約により、あなたは彼方(あちら)で娘を養う縛りもありますので、こちらの世界には留まれません。従って、彼方あちらの世界に帰ることとなりますが、記憶を失わずマナを持っての帰還は私の統べるところではございません。夫であるサートゥルヌスに許しを得ることが条件となります。」


 少し哀愁が籠る目で八木陣を見るオプス。


「恐らく…きっとあなたなら大丈夫でしょう。ただ、娘の提案であなたはかなり無理をすることになりますので、自分自身にご自愛を持つよう心がけてください。では、夫の元に…。よろしくお伝え下さい。」


 その後、八木陣はサートゥルヌスに謁見をする。

 見た瞬間に「あ。え?この方なら大丈夫かな」と許しが出ることを悟る。彼はまず、サートゥルヌスに状況を説明し、併せて、ケレースを生涯大切にすることを約束した。


 そして、二つの条件を出される。


 ひとつはマナの消費に対する対価は痛みであること。


 もうひとつは、サートゥルヌスの指令を定期的にこなすこと。

 こちらは、ケレース分体がこちらの世界で体を維持をするために必要なマナをそれがない地球で補給ができる唯一の方法として出された条件であり、どちらかというと親心の気持ちが強く表れていた為、お願いでもあるのかなと彼は思った。


 それに、そんなことは日常的にさせられている。これなら別に大したことではないと彼は思う。


 ※ ※ ※ ※


 そして、現世に戻される。

 時間が動き出す。


 時が動き出した瞬間のケレースの対応はまさに神速で、瞬時にケレースは異世界TVにマナを送るとディスプレイが光り輝く。

 そして、ぐったりする中、八木陣に優しく口付けをする。


 ―――強烈な痛みが彼を襲い、彼の黒目は瞼の上のほうに移動し、手と足の指は硬直し小刻みに前進が震え、全身をビクンビクンと波立たせる。


 唇と唇を重ねただけの口づけを通し、歯をかみしめ鳴るギリギリという音がケレースにも響く。

 それを感じとったケレースは、マナを送っている反対の手で優しく彼の頭を撫でる。


 強烈な痛みとマナを奪われる倦怠感の中、女神の唇と優しく撫でる指先で彼は耐え凌ぐ―。

 お互いのマナが殆ど空になったとき、ディスプレイの光がいつものものに戻る。


 そして、異世界TVのアップデートを確認した二人は満身創痍の体を奮い立たせ思いっきり叫んだ。




『じょっちゃん。待たせたなぁああ。』ああっす』






 ※ ※ ※ ※


 戦いも終わり。お酒を買いに行くと言って倒れこむふたり。

 ――八木陣はパートナーとなった女神ケレースの分体の手を握りボソッと呟く。


「ケレたん。単純にケレたんがこっちに来てくれて助けてくれたってことにしていいかな?」


「…ん?っす。」


「多分、色々と契約したこととか…じょっちゃんには、()()黙っていたほうがいいと思うんだ。」

「それ…でいいんすか?」


「…言っておいた方がお互いの負担がないっすよ。ただでさえ…君は定期的にあたしの為に。」

「そだねー。それでもだね。頼むよケレたん。」


「…しょうがないっすねぇ。」

 ケレースは強く彼の手を握り返し答えた。

読者の皆様

次回から新章となります。引き続きよろしくお願い致します。


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