第3話 森林と遭難②
新聞紙は万能なのです。ライターは神なのです。
「何はともあれ、まずは食いもんだよな。それと…ここが何なのかだよなぁ。」
突然の非常から落ち着きを取り戻し、この状況を打開しようと進もうとするにも、食べ物がなければ持って3日で限界が来る。
そもそも、自分の身に何が起きたのか何もわかっておらず、ここが何処かも分からない。
人なるものがいるのかも分からない。
幸運にも食料を確保出来たとして、それが常時確保できるのかの算段もついておらず、現状はお先真っ暗である。
実は、衣服がそのままであることに気が付いた時に、配達時に持っていたバックや道具類が足元に落ちていることは把握している。
丈二は、まず、その持ち物を把握することに努める。
持っている物を整理するとこうだ。
・荷造り用のロープや紐を切るためのカッターナイフと予備の歯
・荷造り用のビニル紐
・プラスマイナスドライバーセット
・十徳ナイフ
・筆記用具と注文用メモ帳と諸々の用紙
・配達用の肩掛けカバンと10セット程度の新聞紙
・タオルとハンカチ
・財布と多少のお金
・タバコ4箱とZIPPO
・スマートフォン
である。
ナイフ類が豊富なことはありがたく、また、それなりに使えるものがあるようだと整理をしながらホッとする。
「取り合えずここを0ポイントと考えて、拠点ベースとして探索をしながら調べてみるかねぇ。いろいろ。」
と、近くにある木の中でひと際目を引く大きな広葉樹の根にナイフで印をし、根元から少し離れた場所に半円状に石を等間隔に置く。
この木の前面には少し開けたスペースがあり陽が落ちている。
スマホは当然圏外なのだが、時計機能は生きているようなので時間を見ながら方位と夜までの時間を考察することとした。
「取り合えず2時間ってとこかな。その頃に確認しよう。」
今の影の位置に沿い地面に線を描く。
「地面は意外と勾配が緩やかだな。こっちに下ってはいるけど…もっとハッキリしていれば尾根に川とか期待出来るんだが。」
山での遭難なら、水が反乱したときの危険性から尾根に下るは危ないとされているが、兎に角…水を期待したい。
下り側に目線を送る丈二の横を、何か導くように風が通り過ぎていく。
その風を頼りに、丈二は下りに向かって少しづつ進もうと決めるのであった。
※ ※ ※ ※
1時間程度、風を便りに森林を一直線に進んだ。それで分かったことがある。
樹木の根は一律で下りに向いており、また広葉樹の割合が増えている。
根は重心を支えるため下りに向きバランスを取っているのが伺え、広葉樹は温かい地に生息することが多い。
たかが1時間程度の探索なので、あくまで傾向でしかないのだろうが、尾根を目指すならこの方向でいい。
次に、食べれるのかもしれない植物や果実はあった。まぁ食べれるかは定かではないのだが。
だが、背に腹はかえれない。ここらで一度0ポイントのベースに戻るため帰りに確保することにしよう。
それに果実が食べれて水分を補給できるのなら、ベースを拠点としてもいい。
ただ、動物類は未だに確認できていないため、タンパク質の確保は今後の課題となるのかもしれない。
そう言えば、ベースは比較的針葉樹が多かった。なので、広葉樹の薪になりそうな枯れ木も確保する。
もう一つ分かったことがある。
葉が紅葉しているのだ。この世界が同じなのかは分からないが、日本に近い森林形態が見られるため、数か月後に冬が来るのかもしれない。
暖を確保出来なくなる可能性が近づいている…という現状ではあるが、実はそこまで心配の必要がないと思っている。
「想像ができる程度の情報は幾つかあったが…。それよりも…だよなぁ。」
「流石に凍えることは御免こうむりたいところだけどねぇ。まぁそうはならんか。」
恐らく今日、ベースまで戻ったら日没までに再出発をすることはリスクでしかない。
ベースを出発するなら明日以降と改めて、まずは、火をおこし、食べれるかもしれないシリーズの決死ディナータイムを行い、そして床を確保することとしよう。
とにかく、近い未来。とりわけ今夜を超すという目的が明確であるため、今すべきことはしなければいけない。
まさに、『未来とは、今である。』なんだろう。
丈二は、ひとつ息を吐き、付近の樹木に目印をつけて、来た道を戻るのであった。
[未来とは、今である:マーガレット・ミード
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