第27話 銅鉱山の戦い⑦ 後始末と推理
戦利品と街に帰るまでの考察回です。
「「おおおおい。カットレイ無事かあああ?」」
虎人族と狼人族の2人が応援を連れてようやく来る。
「このウスノロ!もう終わっとるわぁハゲええ!お陰でもう動けへん。にいちゃんも狼もやああ。はよ手を貸せええ。ぼけええ。」
カットレイがなけなしの力を声に変え叫ぶ。
「お前の気力には恐れ入るわ。俺はもう叫ぶ力もねぇよ…。そういえば銅鉱石1個足りないんじゃないか?街に付いたらやるから1杯奢れよ。その後は戦利品を山分けしてお前の仲間も一緒に宴でもしようや。」
「おう。ええでぇ。って言っても今のシャウトでワシの体力シャットアウトやけどなぁ。」
「さいですか…。」
俺は、こいつのことは何も知らないけど、戦友だ。この世界のことは何も知らないけど、戦場だった。それならこいつの仲間も一緒に生還を祝いたい。だから、一杯奢ってもらったら好きなだけ飲ましてやろう。
『よしわかった。じょっちゃん俺酒買ってくる。しばし離席~~おつうう。』
『へ?』
『あたしも一緒に酒買ってくるっす~。ノシっすよ~。』
『ちょ…まてお前ら。え?一緒?えっ?えっ??聞きたいことが…。え?』
うわ…まじで落ちやがった…。八木があの堕女神とリア友~とかなったら、この先の俺の異世界ライフが不安でしかない。それに、聞きたいことが山ほどあるのに。
サニーさんにパスでこのことを伝えると、何かがこと切れたように気を失った。
※ ※ ※ ※
虎と狼が先に着き、俺たちにポーションを飲ましてくれた。
しかし、俺とカットレイは体力が回復しただけで気力が回復しない。
体力が全開になり元気なのは、さっきまで気を失っていたサニーだけで、俺たちはまだ立てない。
そうこうしていると、兵士が駆けつける。
「大丈夫か?何があったんだ。」
俺は、交渉術のスキルを使い一部始終を説明する。証拠として黒蜘蛛の素材を見せる。
「信じられないがブラックオッドタランチュラで間違いなさそうだ。一体何故こんな初心者用の鉱山に…。」
「わからない。ただ言えるのは、そこで汁という汁を垂れ流して気を失っているジアス様が黒蜘蛛を怒らせ、そこに転がっている赤蜘蛛を20匹召喚した黒蜘蛛が俺たちを襲ったって事実だけだ。」
「その時、誰かその怒らせた原因を見ていなかったのか?」
「どうやら、ここの場所はジアス様の思い入れ領土らしいでぇ?全員手前の場所に追い出されとったから、誰もこのゴミが何をしたか把握してへん。」
カットレイがフォローしてくれる。
「わかった。今の話は私たちを迎えに来た全員と一致している。この件は冒険者組合に報告をするので、後で出頭して欲しい。私たちでは判断がつかない。」
「かまへんよ。どちゃにせよ依頼完遂の報告があるさかいなぁ。」
「俺もかまわない。っと言うよりこれの素材を組合で売るにしても説明が必要だろうから、むしろ面倒じゃなくて済む。」
2人とも兵士の申し出を了承する。
赤蜘蛛の素材は、虎と狼が解体して持ってくれるらしい。
代わりにサニーがカットレイを運ぶって伝えたら2人は大笑いだった。まぁ2人して動けないから、への字の人間2体が狼に背負われるシュールな絵になっているんだが。
「しかし、貴族様かどうかは知らないが迷惑な奴だ。」
兵士たちはゴミを担ぎ、丈二達と一緒に銅鉱山から出るのであった。
※ ※ ※ ※
小屋でランタンを返し、帰りの通行手続きを澄まして街への帰路に着く。
街までの道中は兵士が馬車で運んでくれた為、その中でカットレイ達と今回の異常事態について擦り合わせをする。
「にいちゃん。ほんならあのクズが奥のXに接したときは、そこまで強い感じの魔物ではなかった…ちゅーことかいな?確かにワシが感じた怖さもクズが死んだら笑い話やぁ程度のもんやったなぁ。オオカミン…サニーはんもそう判断してたんやろ?」
「ああ。むしろ、赤蜘蛛の突撃時に、「クズ部屋まで黒いのが来て陣取っている」って言っただろ?あの時までは、まだそんなではなかった。変わったのは赤いのにカットレイが咬まれた辺りでだ。」
「そのときには、X’に置き換わっていた…ってことか。」
狼人族の…名前なんだっけ?がボソッと呟く。偽関西弁じゃないじゃん。
《ご主人様。ご主人様は何か仮説を立てているのではないですか?》
鋭いところを指摘される。
「そうだな。サニーさんに今指摘されたんだが、俺の仮説を聞いてくれるか?それに意見を出してもらい考察してみよう。」
「「「ええでぇ」」」
狼人族さん?ここは偽関西弁なんすか。
「では、Xは、元々蝙蝠の亜種であった。とする。これは過去にもあの鉱山で発生した情報から推測している。」
八木が辞典でそれは確認している。
「次に赤蜘蛛はこの国にいる魔物ではない。なので、黒蜘蛛から召喚されない限りあの数があんな初心者鉱山に発生することはありえない。と考える。また、黒蜘蛛は他国の中級ダンジョンの階層ボスであることも付け加えておく。」
これも確認済みだ。
「この場合、クズが遭遇して奇声を上げた魔物は黒蜘蛛そのものであったと考えられる。と、言うことは、俺が感知をしてクズが採掘をしている間にXはX’の黒蜘蛛にすり替わっていた。と推測する。これは、キャスリングと言うテイマー魔法で条件を満たせば可能であることを確認している。」
「では、クズが遭遇してから俺たちが脅威を覚えるまでに何があったのか。俺は可能性として、気配偽装をしていたと考えている。これも他人に付与することは可能なようだ。」
ここで、策士カットレイがまとめだす。
「ほんなら何か?何者かが気配偽装をしたX’の黒蜘蛛をキャスリングで、Xの蝙蝠亜種と入れ替えたっちゅーことかいな?…ただ、その場合の目的は何やっ!!」
狼人男も続く
「その場合のクズをどう考える?すべてがたまたまだったのか。クズを狙ったのか。クズが逆にキャスリングしたことも考えられるで?だとしたら、あの壮絶な汁まみれは称賛に値するけどな。」
「…気になることがもう一つあってな。あのクズは何故あの場で採掘するのを辞め奥に行ったのか。銅鉱石ならあの場所には50は拾えたはずなんだ。それに何故襲われなかった。何故コモンバットを連れて逃げ出し黒蜘蛛の止めを邪魔をした。」
丈二もサニーもここがどうしても引っかかっている。
「そこだけ考えるとあのクズの評価を改めなあかんなぁ~。せんけどな。」
カットレイも相当怒ってるんだろうなぁ。結果、最後の最後はあいつのせいで、2人して死にかけてたもんな。
「目的については、俺達では知り得ない理由があって当然だと思ってる。所詮は成り立て冒険者だ。知らないことだらけのこの世界で裏を考えても仕方がない。そこは組合の偉い人が勝手に想像するんじゃないかと思っている。」
「せやな。1つの可能性として組合の人にワシらから今のにいちゃんの仮説を投げかけて終いにしとこか。そもそも、こちとら単純に巻き込まれた可哀想な竜人族ちゃんなんやで!」
「『やるだけのことはやって、後のことは心の中で、そっと心配しておれば良いではないか。どうせなるようにしかならないよ。』ってやつだな。」
「まぁ…推理ごっこはそんなところでいいやろ。そろそろ着くで。」
虎人族が最後に一言でまとめる。
銅鉱山から街に着くまでの2時間あまり、時間潰しとして考察に花を咲かせたところで、馬車はフィルムの街に着いたのであった。
[やるだけのことはやって、後のことは心の中で、そっと心配しておれば良いではないか。どうせなるようにしかならないよ:勝海舟]
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