[若月編] 飽くなき欲求(女子会デート)
若月編3本目です。次回から丈二編にもどります。
平日は19時のアップを目指していますので、寝る前のお供に読んでいただければ幸いです。
若月編
装備の確認をして、所持金を見る。
現在の若月の所持金は、銀貨47枚と銅貨9枚である。
正直暫くは何とかなる。
だが、有限であることもわかっているため働き貯める。そしてお風呂を改造する。
そんなことを考えて横になっていたら朝になっていた。
久々に腰が痛くならない寝床である。しかもかなり質がいい。
若月の部屋にある自分のベットより正直寝心地がいいのかもしれない。
そして、何より落ち着いた場所で…寝ることができる。疲れもあるのだろうが、それが何より安眠を誘い、そして深い眠りについたのであった。
日の光に交感神経を刺激され、気持ちよく目が覚めた若月は、ひとつ伸びをして立ち上がる。
この街のよいところは何よりも水源が確保されていることで、宿にもカウンターで鉄銭貨を払えば1リットル程度の水を自由に使わせてくれる洗面所のような場所がある。
カウンターでお金を払い、洗面所で顔を洗う。
下着類は2セット持っているため、昨日の風呂で着替えたものとヒビキから貰った布とを合わせて、風呂の石鹸の残りで洗う。
部屋に戻り、洗濯物を干す用のロープがあるため、そこに洗濯物を掛けて乾かす。ゲストルームから自分用の部屋への移動は夕方からと聞いていたためそれまでには乾くであろう。
そんな朝の仕度をしていたら、部屋の外からノックの音がする。
「若月~迎えに来たよー。起きてるかなー?」
くるるが迎えに来てくれたようだ。
「おはようございます。くるる。迎えに行こうと準備していたのですが早いですね。」
正直時間感覚がないため適切な表現なのか迷ったが、迎えに行こうと思っていたのは本当であるためそう答える。
「ううん。ちょっと早めに来た感じ。お父さんが若月は疲れているだろうから起こしに行ってやれってー。」
「あら。そうだったんですね。なら丁度いい時間ということで。ふふふ」
「そうだねぇー。あははは。」
そんな挨拶をしながら身なりを整えて、くるると部屋を出る。
さて、念願の街の観光。サイトシーンだ。
「まず露店でご飯でも食べよー。お父さんから涎垂らしてみてたって聞いてるし。ウシシ。」
「わぁ~。コールマンさんったら。もう。」
と、言いつつもあの露店で何を食べようかと考える。
コールマンズマテリアルスミスから中央の川沿いに戻り露店街に着くと、昨日興味をそそられた活気と匂いが若月のお腹をぐ~と鳴らす。
「『ぐううううぅぅ~。』・・・うぅ。恥ずかしい。」
お腹の虫を聞かれ赤くなる。
「はははー。わかるわかるよーここの匂いはズルいよね。特に食べたいものがないのなら、私のおすすめ行っとく?」
くるるは、そういうと若月の同意を待たずに進み出す。
露店街の少し外れにある子洒落た屋台の前で止まり、くるるは幾つか注文をし、若月にはお店の横にあるテーブル席で待つように指示を出す。
「おまたせー。最近ここで朝食するのにはまってて~。はいこれ、リンゴ茶にコモンボアサンド。イケてるよ?」
木のマグカップにリンゴの皮を入れた紅茶とコモンボアと言われる猪モンスターのサンドイッチと少しの野菜が載っている木製プレートを手渡される。
「わぁ~~。女子力高いの出てきました~。たまりません。」
見た目も中身も美味しそうで、何より露店街の端にあるが川沿いでロケーションも良く、まるで彼女の世界のカフェのようでテンションがマックスになる。
「女子力…ってのがわからないけど、喜んでるのはわかるねー。食べてみてよー。奢りだぜぃ。」
「そんな~。朝食はご馳走しようと思っていましたのに。後で何かお礼させてくださいね。」
「あははー。いいのいいの。食べて食べてー。これは友達記念ってことで。」
友達という言葉にじわりと来た。なら後で何かプレゼントしようと思う。
「では、いただいちゃいます。」
ボアサンドをほおばる。酸味のあるソースに少し癖のある肉とそれから出る肉汁がじわ~と湧き出し上品だが野性味のある味がしておいしい。
その癖のある味をリンゴ茶がほどよく消し食欲を促す。
「ほんと。イケてます。めちゃくちゃおいしいです!」
「でしょでしょー。まだそこまで流行ってないんだけど、そのうち行列が出来そうだと私は睨んでるんだー。」
「あら。それは困りますね。一緒に通いますから声をかけてください。」
「なら明日の朝も行っとくー?仕事前にここでどうせ食べるし。」
「喜んで!」
異世界でまさかのカフェと女子会を楽しみ、川沿いのカフェを出る。
次に向かったのは女性用の服屋であった。
「昨日行きたいって言ってた店がここなんだー。下着を新調したくて。」
「私も下着が欲しかったところだったんです。助かる~。」
下着は2セットしかもっておらず、下着の新調は不可欠であったため本当に助かる。そんな状況もあり二人できゃっきゃと言いながら下着を選んだ。
こちらの下着のトップは、元の世界のブラジャーではなく、タンクトップに近い。
大きさもカップや採寸で選ぶ訳ではないので、くるるに手計をしてもらい大体で選んでもらう。
パンツは紐パンが主流で麻の生地で包む簡素な感じである。こちらも「任せて!」とノリノリで選んでくれた。
見た目の可愛いものあったが、冒険用であるため普通のものを3セット購入する。
代わりに、朝食のお礼にと、くるるが欲しそうにしていたフリルの付いた下着をプレゼントした。
他には、普段着用の服に少し見栄えの良い服と寝巻用の軽めの服を2着ずつ、くるるの意見を参考にして購入した。
なるほど、この世界の流行はこんな感じなのですねと目を輝かせる。
値段は、自分用の下着3セットで銅貨1枚、プレゼントしたもので銅貨1枚、普段着と寝間着で合わせて銀貨1枚で、思ったより安いんだなと思い店を出る。
女の子二人の散策である。カフェと服選びで時間は予定の半分以上を過ぎており、その後は駆け足で中央にある警備隊事務所やら図書館、くるるの働く神殿などを巡りコールマンの店に戻ってくる。
駆け足であったが、くるるの案内は、「この街の警備隊は真面目でしっかりしている」とか、「図書館は街の登録をしたものならお金を払えば誰でも利用できる」だとか、要点を捉えた説明でわかりやすかった。
神殿では少し中に入り、彼女の担当している適正職業の神託のことや礼拝する教会を案内された。神殿を巡る際に、少し気になることがあったので、紹介された神官に、また訪れたいことをお願いし快諾されて帰宅する。
そんな感じであっという間に午前中の時間は過ぎ、2人はコールマンの店に帰ってきた。
若月にとって、改めてフィルムの街はいい街だなと思う朝の観光となった。
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