第7話 眷属契約
一匹の狼とその目の前にいる男は、かれこれ2日は見つめあっている。
いや…眼を飛ばしあっている。
一匹の狼とその目の前にいる男は、かれこれ7日は見つめあっている。
いや…眼を飛ばしあっている。
一匹の狼とその目の前にいる男は、かれこれ10日は見つめあっている。
いや…眼を飛ばしあっている。
「いや~想像はしてたっすけど、1日ちょっとで箱庭をクリアしたのに10日目っすよ?このメンチ合戦。」
「なぁなぁ。ケレースさん。ノトスさんと多分パスってのは繋がっていると思うんだけど、眷属になって!いいよ!みたいな感じっす。ってのがわからないんすよ。」
「そうっすねぇ~。ノトスの分体の方もそれはわかってるみたいっすね。声とかは聞こえるんすか?」
「あぁ。ガウッとか、ワゥオ~ンみたいなのはわかるぞ?」
「ふぇ?何で犬語なんすか?」
「え?狼だからだろ?」
「え?」
「ノトスは聖霊で、ジョジさんのイメージで狼になってるだけっすよ?分体と言えど、あたしと同じで言葉ぺらぺらっすけど?」
「え?」
「う~~~~~ん。ジョジさん。しゃべれる狼をイメージしてみてくださいっす。後、名前って付けました?」
「え?ノトスさんじゃないのか?」
「分体眷属なんで便宜上ノトスって呼んでますけど、名前はないっすよ?分体ですから。そもそも眷属契約なんで、名前を付けるに決まってるじゃないっすか?あふぉなんですか?」
「そんなこと知らねーよ!お前が行ったの「眷属になって!いいよ!でOK」だけじゃねーかぁあ!!!」
「はぁ~ジョジさん。『人生のほとんどすべての不幸は、自分に関することがらについて、あやまった考え方をするところから生じる。できごとを健全に判断することは、幸福への大きな第一歩である。』って言うじゃないっすか。その無知がこの不幸を生んでるんすよ?」
「今のこの状況がお前もめんどくさいとか思ってるんだったら、ブーメランだからな。それ!!」
「あたしは楽しんでますからそうはならないっすよ。くすくす。」
はぁ~もういいやと、改めて狼と向き合う。
どっかの墜女神より、聖霊だと心から思っているし、堅狼以上の存在だとはもともと理解している。その考えを狼に対して真摯に向ける。
《…んと、…に…。》
《本当にケレース様は!そうではないかとずっと伝えていたではありませんか。》
嘆いているというか、呆れているような声が頭に伝わってくる。
《あ。声が聞こえた。ノトスさんの分体さんですか?》
こんな感じかな?と白銀の狼に向けて思念を投げかける。
《あぁ…。そうです!そうですそうです!本当にうちの上司がすいません。すいません。》
《いえいえ…お互い苦労しますね。》
《・・・。》
《あの、本当にすみません。あんな上司のせいで、うだうだになってしいましたが、まだ私と契約して旅をご一緒させていただけますでしょうか?》
既に泣き出しそうな声だ。本当にあの上司で苦労してたんだろうな。
《もちろんです。あなたのおかげで俺はあの状況で自我を失うことなく今があります。それが恩返しになるなら、こちらからもお願いします。》
本心を真っすぐに伝える。
《よかった…。すごく嬉しいです。それなら、私の気持ちは決まっていますので、名前を授けて頂ければ契約は成就されます。あと…あなた様が主人の眷属契約となりますので敬語ではなくてよいのですよ。》
《あ。はい。恩を返したい思いが強い契約です。眷属契約の主従関係の側面は仕方ないとしても、会話はお互い敬語でと思っていましたので、慣れたらそうさせて頂きます。》
《あなたは変わっていますね。わかりました。私はそれで大丈夫ですよ。では命名を。》
う~んと悩みこむ。今まで名前なんてものを付けたことがない。それを初めて会う白銀の狼である聖霊に名前を付けるのである。結構難しい。
《南の暖かい風で雲を吹き飛ばし晴天なイメージ。台風を発生させるって考え方もあるかもしれないが、Sunny…サニーでどうでしょう?私たちの世界で太陽の日が降り注ぐ光を意味します。日の光は黄色や金色のイメージを持つ人が多いみたいなのですが、私には真白と銀発光なんです》
《サニー!太陽神様のようで恐縮ですが素敵な響きです!ありがとうございます。嬉しいです!》
気にいった…のかな?なら良かったと思いながらも、契約前に聞きたかったことを投げかける。
《ではサニーさんでお願いします。それで、契約の前にひとつ聞いてもいいですか?》
《はい何でしょう。》
《何故自分を気にかけていただいて、付いて来ていただけるのでしょうか。特に何か特別なこともした覚えもないですし。》
《はい…。とても単純なことで気を悪くなされないでください。実はあの寝床なのです。デブリ…ハットと言ったでしょうか。昔、あれと同じものをこの箱庭で作られた方がいたのです。その方も私を見つけていただき、色々なご縁もありお供させていただきました。その時の素晴らしい思い出が今のこの役割を続ける糧となっているのです。》
《はは。確かに単純…というか、その人もまた…デブリハットなんてマニアックなもの。たまたまの偶然でですよ?それに良いのですか?自分みたいなのでは、その方のようにワクワクする思い出を見いだせないと思いますけどね。。》
《…多分それはないと思います。あなた様は私が風で導くとき、どんなに辛い状況の中でも、感謝の気持ちを心の中で言ってくれていました。実はそれもあの時と同じなのですよ。そんな方とまた旅が出来るのです。絶対楽しいですよ。ふふふ》
《それ…なら良いのですが。わかりました。それでお返しができるならそれで。では契約させていただきます。》
余程楽しかった思い出なのだろうか。笑い声がとても穏やかで暖かい。自分ではそこまで無理だなぁと思うがその半分くらいは楽しい思い出をと誓う。
「それでは、サニーさん。俺の眷属になってくれませんか?」
「はい。喜んで。」
こうして丈二とサニーは眷属契約を結んだのであった。
[人生のほとんどすべての不幸は、自分に関することがらについて、あやまった考え方をするところから生じる。できごとを健全に判断することは、幸福への大きな第一歩である:スタンダール]
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