〜新年のご挨拶〜
「「皆様、新年、明けましておめでとうございます」」
俺、榊響はぎこちなく、隣りにいる彼女、白浜桃は丁寧な姿勢で深々と頭を下げる。
「もう2023年かあ。いろいろはやかったね」
ふわりと笑う彼女は、化粧をして口紅を塗り、袴を着ている。
桃という名前にぴったりの、可愛らしいピンク色の袴。
そういう俺も袴を着ているのだけど、正直袴は慣れない。
「そうだね。俺こういうの着るの七五三以来かも」
「私は中学校の卒業式で着たよ。まああの頃は、ここまで本格的なのじゃなかったけど」
「今の桃もすごくきれいだけど、中学の頃の幼い感じもみたかったな」
はっとして気づくと、桃の顔はみるみる赤く染まっていく。
「あ、ありがとう……うれしい」
気まずくて顔をそらすと、桃がこちらに体を向け距離が近くなる。
スッと袴がずれる音。
「そういう響くんも、今日は前髪あげてて、いつもより顔が見れるな。意外と瞳切れ長なんだね。かっこいい」
スリッと前髪に手が触れ、ビクッと反応してしまった。
「「あっ……」」
二人してかあっと熱くなり、あわてて距離をとる。
「と、とにかく、今年もこんな俺と、桃のことをよろしくお願いいたします!」
「皆様にとっても、よいお年となりますように」
「「皆様、新年、明けましておめでとうございます」」
俺、貴堂京真と、メイドの天宮水響は、同時にきっちりと頭を下げた。
「なぜ私のようなメイドがこのような特等席なのですか……私が貴方様の真横に居座っていることが十分理解できないのですが…」
「何で新年早々暗いんだよ。いや、こいつのはもともとか。俺のメイドなんだから、もっと堂々と振る舞え」
水響はハッとした表情になり、ぐっと手を握る。
「そうですよね。このようなめでたい場所なのに、京真さまの面子を、私のイメージでへし折ってしまうところでした」
「やっぱ暗え。そして重え」
俺は水響の手に目をやり、スッと持ち上げる。
日焼けを知らない白い肌に、真っ赤な赤が映えている。
「ネイルしたんだ」
「スタッフさんの意向で。今までしたことがなかったので、初めてでした」
「ふーん。でも、他に色あったんじゃねえの?」
俺はちらりと水響の顔を見る。
こいつの過去的に、赤色っていろいろ思い出してしまうんじゃ……。
「……そうですねぇ…しかし、最近はそんなこともないんですよ?」
彼女は赤く照り輝く爪で、俺の瞳を指す。
「知りませんでしたか?貴方様の瞳は、少し赤みがかってるんです。ほんとに少しですけどね。そして、何より貴方様の魅力の一つは、情熱があるところです。ですから、最近は気になってるんですよ?」
そこで水響は何かを思いついたように、今度は自分の瞳を指した。
「君、瞳きれいだね」
ぶふぉっと吹き出し、俺はきつい袴を着てることなんて忘れて、爆笑!
「すっ、すみませんっ調子に乗りすぎましたっ!?」
慌てて身を乗り出す水響に、いやいやと手を振る。
「それ、俺が水響に初対面のときに言った言葉じゃんっ……よく覚えてんな」
「私にとって、衝撃的な出会いでしたから」
水響は、態勢が崩れている俺の手をとってくれた。
この先も、こうやって二人で、支え合って手を取り合っていけたらいいな。
俺と水響はほほえみ合い、再び、手を膝に乗せ、頭を下げる。
「「それでは、よいお年を」」
〜四人の化粧や着付けを担当したスタッフさんたちから一言〜
「桃ちゃんっていうこ、すごく可愛らしかったわ!着付けする前はツインテールだったから、いつも髪をくくっているこなんだと思って、横サイドで三つ編みにしたんです。三つ編みに好きな飾りをつけれるよって言ったら、響くんの袴の色と同じ色の飾りがいいですって言ったの…!顔も赤くなっちゃって、可愛かった…!」
「榊さんは、下の名前教えてくれなかったんだよなあ。あれはたぶん、好きな子にしか心を許さないタイプだと思う!着付けにきてくれたときに、ピンときたんだよね。前髪が長めだけど、少し見えた瞳が切れ長で。これは絶対前髪をあげたほうがかっこいい!って思って前髪をあげさせてもらいました。それと、袴に扇子をつけるんだけど、どんな扇子がいい?ってきいたら、無言で桃の花の模様のを選んでてさ。アオハルっていいね〜」
「天宮さんは終始無表情だったんだけど、赤いネイルを塗ってるときと、貴堂様とおしゃべりしてるときは、表情が緩んでたような感じがするの!貴堂様とはどういう関係?ってきいたら、メイドでクラスメイトって言ったあとに、赤い顔で、大切な人でもあります、だって。もう〜恋やん!!」
「いや〜、俺初めて貴堂家の人を生で見たよ。しかも着付けとか担当させてもらったし!俺これから一生自慢できるわ。様をつけて呼ばれるのは慣れてないから京真でいいって言ってくれるほど、フレンドリーな子だったな。そんなお金持ちだったら、許嫁とか候補は多いでしょ!うらやましいな〜って言ったら、そうですね。でも俺が気になってる女子は、今んとこ一人だけですからってさ。恋…とはまだそこまで言い切れないけど、二人にはかたい絆があるんだろうなって思ったね」
〜おまけ〜
響と桃のスタッフさんたちが、お互いの試着室にのぞきに行こうとして、ばったりはちあわせ。
「「!」」
二人してにまあっと顔を緩ませ、それぞれ反対方向に向かって行きましたとさ。
みなさま、明けましておめでとうございまあぁす!!去年はどんな年でしたか?
私にとっては、いろいろと変化の年でした。
自分をとりまく環境だったり、自分の状態だったりとか。
それが良いときも悪いときもあったけれど、ひとまずまわりの人々、そして自分も健康に年を越せたことを何より嬉しく思っています。
皆様にとっても良い年となりますように。
皆様が健康でありますように。
自分らしくはばたいていく勇気を持てますように。
願いたいことや祈りたいことはつきません。
新年の2023年も、こんなチャロたんとチャロたん2をよろしくお願いいたしますね。