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〜番外編4〜

「今夜は、ホラー映画鑑賞会をするわよ〜」

頭に毛布を被り、下からの懐中電灯の光に照らされた白雪さん。

お盆である今、私たちは屋敷に集まってお泊まり会をしているのだけど。

夜ご飯を食べ終えたタイミングで、なぜかノリノリの白雪を除き、いつものメンツである3人は顔を見合わせた。

「こういうのはだいたいイブキさんが提案してくるんですけどね‥‥」

「お化けの格好しとる白雪ちゃんもかわええな♡」

「白雪さん怖いの好きなんですか?」

「ふふふ‥‥この前偶然ナサさんにお会いしたのよね。それで今ハマってる洋画の話になって、これおすすめしてくれたのよ。せっかく夏だし、お泊まり中だし、みんなで見てみないかしら?」

「これって?」

「◯Tよ!日本でも、ピエロの画像が話題になったでしょ?」

「確かに怖いって有名やな」

「友達といつかみてみたいと思ってたんです!みましょう!」

「そうくると思ってましたよ京真さま」

「水響ちゃんもはやこの流れ楽しんでるやろ。って、あれ!?どっかのタイミングでいるやろな〜とおもて用意してたジュースとお菓子が、目の前に!?なんてシゴデキなんやろ!褒めてくれてええで!?」

「夜にジュースとか太るわよ?食べるなら日中」

「京真さまの健康に悪いので却下で」

「ぴえん」

モデルと主人絶対メイドにことごとくダメ出しを喰らい、渋々片付けようとすると。

「夜にお菓子‥‥!“友達“がお泊まり会でやるやつですよね!?」

「なあ、水響ちゃんこの子なに?ホラー映画より怖いんやけど」

「京真さまはお家柄のためか、あまりお友達ができたことがないそうです。社交的なんですが、一歩踏み出した関係にはなれないとおっしゃっていました。だからおそらく、このお泊まり会も、すごく楽しみにしていらしたんです」

パーティーサイズ用のジュースやお菓子を珍しげに物色する京真を、3人して振り返る。

「「京真くん‥‥」」

白雪とイブキに両側からそっと抱きつかれる京真。

それを無表情の裏で嫉妬する水響。

「水響ちゃんもきてええんやで〜?」

イブキがニマニマしているのに気づき、フンッとそっぽをむく水響。

「私まで触れたら、京真さまが暑いです」

「変な意地のつっぱりかたね〜」

本当は、私だって京真さまにああして触れたいけど、どうしても主人だからという固定概念が消えない。

しかもお二人の前で。二人きりの時なら、まだ勇気を出していけるけど。

「水響。おいで」

そういって、京真さまが両腕を広げる。

私の頭の中の葛藤なんて全て見透かしたかのような、柔和な笑み。

私がどうすれば動きやすいかというのを熟知している。

「‥‥‥」

この人には、敵わないなあ。

すぐそばまできた水響を、愛しいものを見るような瞳で見つめ、頭を撫でる。

抱きつくというよりすっぽりと収まりにいったという感じの二人をみて、両隣の大人組はそろって声を上げた。

「「何見せられてんねん」」


「ほな先方の希望ということで、飲み食いしながら見てくで〜」

「はい!」

そこでパチッと電気を消し、イブキがソファへと戻ってくる。

なお、テレビからみて左から京真、水響、白雪、イブキの順。

「ちょっと!?なんで電気消すのよ!?さらに怖み増すじゃない!」

「え、ホラー映画鑑賞といえばこれなんやけどな〜?」

イブキの言葉に目をキラキラさせる京真を、しまったという目で悔しげに見る白雪。

年下を買収されては、どうにもできなかった。

いや、あの純粋な瞳を汚すことはできなかったという方が近いかもしれない。

序盤から天気のせいで暗い映像が続く。

「多分この家族が遊園地に行くのよね‥そしたらピエロに攫われるとか、そんなものでしょ?」

「多分そうですよね」

小さな男の子が、流されていくボートを追いかけていく。

そして排水溝に引っかかった。

『はいジョージ♩』

なんと排水溝の奥から瞳を光らせたのは、メインキャラクターと思わせるピエロらしき人物。

「‥‥ん?これがピエロ?なんでこんなとこに‥」

「変態でしょうか」

「水響ちゃん、そこ?」

男の子が手を伸ばしてボートを掴もうとした時ーーピエロが、ブシャアッと男の子の腕を食いちぎった。

「人食うとか聞いてないんですけどおおおっ!?」

「ピエロの概念壊れそうですね」

「み、水響、こういうのびっくりしないの‥?」

「京真さまは、大丈夫ですか?」

意外と驚いていないなあと思って横をみてみると、変な笑顔で固まっている京真と目が合う。

なるほど。本当に怖がっている人は悲鳴すら出ないというやつか。

「大丈夫。ジュースなどどうですか?私がそばにおりますから、安心してご鑑賞ください」

「水響い‥‥」

こんなにもこのメイドがカッコよく見えたことはあっただろうか。

いやあるんだろうけど、暗殺者に殺されそうなのを守ってくれた時と同じくらい安心感が凄まじかった。

「しかし血と子供の演技がリアルですね。実際に痛がる子供とその血を入念に観察して作ったのでしょうか」

「水響いっ!?」

殺し屋の専門家のなかなかに高い評価が、無意識に京真の怖さのエンゲル係数を増やしていることに、水響は気づいていない。

そんな中、どんどん話は進んでいく。

途中親子間でのぶつかり合いや恋愛模様がありつつ、ピエロが徐々に、しかし確実に主人公たの生活に侵食しつつあった。

極め付けは脱衣所の蛇口の排水溝から出てきた黒髪と対峙する場面。

「なになに誰誰誰えっ!?」

そして部屋中に飛び散る血。

「片付け大変そうですね」

「水響ちゃんと映画見よったらいい意味で怖さ半分減るな」

なお京真は震えるてでジュースを飲んでいる。

そしてラストはもう‥‥とにかくすごかった。

あれ、ほんとにピエロ?なんか中身違くね?という考えが四人の頭をよぎった。

そうして無事に見終えた頃には、イブキと水響のぞをのぞいて残りの2名が伸びていた。

「洋画‥‥恐るべし‥‥」

「さすがナサさんのおすすめなだけある‥」

「これシリーズものらしいで。まだみる?」

にまあっと口の端を上げるイブキを、ギンッと白雪が鋭く睨みつける。

「何っであんたは平気そうなのよ!?殺し屋の水響ちゃんはともかく!」

「まあ、俺も映画制作する側やったから、撮影の裏側考えたり監督の技術の高さとか見てたらあんまり怖なかったっていうか‥」

絶賛職業病を発揮していた。

「もういやだ‥排水溝見れない‥」

と、たまたまカーテンを閉めていなかった窓の端に、赤い風船が揺らめいた。

「「「「!?」」」」」

見覚えしかないそれは、しばらくすると視界から消えた。

なお、彼らがいるのは2階である。

「「「「‥‥‥」」」」

そして外の天気は夕方から降り出した、雨。

「いやーーっ助けてジョージーっ!!」

「ピエロがいる!すぐそこにいるーっ!!」

「お二人とも落ち着いて!」

「まさかほんまにそうなんか‥?」

大きな屋敷で四人が騒ぐ中、外の方はというとーー。

「あっ、風船飛んでっちゃった〜っ」

「だからパパが持ってようかっていっただろ?でもまあ、夕方から雨が降って来たのは残念だったな。また晴れの日にでもディ◯ニーランド行こうか、3人で」

「そうね」

「うん!」

「ほら、車につくわよー」

外で見知らぬ家族の楽しげな会話がされていたとは、知る由もないのだったーー。



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