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~豪華客船3~

はあ、はあっ……

廊下を走り抜け、向かうのは京真さまのもと!

どうしようどうしよう。あなたは無事?

危ない目にあってない?

ああ、一分一秒だって惜しい。

はやく、もっとはやく!

「ナツネちゃんっ!」

視界の横の部屋から、驚き眼のイブキさんと白雪さんがでてきた!

「すみません、急いでますっ!」

そのまま通り過ぎると、なぜか彼らも後ろをついてくる。

「ナツネちゃん!有力な情報がいくつか入ったわ!走りながら聞く!?」

「!」

現役の情報屋が収集した情報。京真さまにつながるものがなにかあるかもしれない。

「はい!」

走る速度を緩めずに言い捨てれば、二人とも苦しげに顔を歪ませた。

私が少し速度を緩めると、眉毛が下がり、口を開いた。

「さっき聞こえた大きな爆発音、ナツネちゃんも聞いたやろっ?俺は様子を見に部屋の外に出たけど、部屋におった白雪ちゃんが、この爆発音はくじらが船体にぶつかっただけだから、事故とは無関係だけど、念のため部屋からは出ないでほしいっていう放送を聞いたらしいねんっ。それで他の乗客がでてこんのはわかるけど、警察が動いてないのはおかしいうやろっ?そう思って、俺ら警察が止まってる部屋の階に行ってみたねん」

一息に喋ったイブキさんのあとに、白雪さんが続けた。

「私たちが警察の部屋を知ってたのは、何かあったときのためにと、事前に調べてたから。だけど他の乗客は、どこの部屋に泊まってて、何階にいるのかも知らないはず。なのに私たちがその階に着いたら、警察が泊まる部屋全部に、催眠ガスが充満してたの。警察は全員眠ってた」

「えっ!?」

「警察を再起不能にして、乗客は部屋にとじこめる。なんとなくだけど、これは事件の匂いがするわね。犯人がいて、“誰か”を狙ってる。こんなことができるのはこの船を操作する船員か、警察の一人か、はたまた……」

「……たぶんなんですけど、その“誰か”が、京真さまと香穂さんかもしれないんです」

「えっ!?京真くんと香穂さんってたしか、このパーティーでお披露目されてた…」

「……私が、京真さまの一人での行動を許してしまいました。どうしましょう、もしものことがあったらっ……」

沈黙が下りた。とにかく、とあせった様子でイブキさんが続けた。

「俺らも京真くんを探すのと、引き続き情報収集を続ける。俺はこの廊下を左、ナツネちゃんはまっすぐ、白雪ちゃんは右に!各自何かわかったら、何でもいい、おっきな音をだして!すぐにかけつけるから!」

「わかりました!必ずお二人もご無事で!」

「「りょうかい!」」

私たちは勢いを殺さないまま、それぞれの方向へ!

少し走ると、大きな扉が左手に見えた。

「ここは……」

私は息を切らしながら、そびえたつ扉にたちはだかる。

燃えるように熱い手のひらで取っ手を握ると、妙にひんやりとしていた。

扉を開けると、そこはパーティー会場だった。

「さすがにこんなとこにはいないか……」

扉を閉めようとすると、暗闇から誰かが、ゆっくりと近づいてきているのが見えた。

おもわず臨戦態勢に入る。

警官の服を着てるな。

もしかして白雪さんが言ってた、犯人?

いつでも反撃できるように相手の一挙手一投足に神経を注いでいると。

「み、ずき……?」

ゆっくりと見えるようになったその顔をみつめて、息をのむ。

「京真さまっ!」

ああよかった、無事だ!

「なんでこんなところにいるんですか!?なんで」

どんどん距離が近づいてくると思ったら、腕をまわされ、ぽすっと頭をおしつけられた。

いわゆる、ハグ状態。

「えっ!?京真さま!?」

急な近い距離に、ぼぼっと顔が赤くなるのがわかった。

「水響、暑い」

「あなたを探して、走ってたので……」

「そっか」

するりと髪を一房すくった指が長くて、なんだかこそばゆい。

「水響の行動はいつも、俺のことを思ってのことだよね。海に飛び込んできてくれたときもそうだった」

彼がそのまま話し出すから、じっと聞き入る。

「あのとき実はさ。もうこのまま、沈んでもいいかな、なんて思ったんだ。別に死にたいとかじゃないけど、いっそ沈んだ方が楽になれるんじゃないかって思って。……だけど君は、静かで冷たい真っ暗闇の中に、飛び込んで手を伸ばしてくれた。あのとき、どれだけ俺が救われたかわかってる?今までだって、俺はたくさん水響に救われてきた」

ケホッと彼がせきこんだ。

私は言葉を失ったまま。

「最後に、伝えたいことがあるんだ」

腕の力がぎゅうっと強くなった。だけどその息苦しさは、なぜかとても心地が良い。

「……愛してる」

瞳がゆらいだ。彼の声も、震えてた。

「今まで、ありがとう。ずっとそばにいて、俺を守ってくれてありがとう。俺も君の役にたちたかったんだけど、こんなふがいない男でごめん」

ねえ、さっきから何を言っているの?

「ずっと、君のこと…」

わからないよ。ねえ。何が起きてるの?

「きょうま」

「かはっ」

びしゃっと、液体が飛び散る音が響いた。

そして、視界から京真さまが消えていた。

「えっ?」

下を見下ろすと、うつぶせに倒れている“彼”。

「京真さま?」

彼の体に触れると、ねとりと粘着質な液体が指についた。

暗くてよくわからないけど、これは、血――?

「ナツネさん、さっきぶりです。貴堂京真は殺しておきましたよ」

「は?」

奥のステージから、先ほどの殺し屋二人がでてきた。

彼らの顔には、笑みが広がっている。

「いやー、逃げるからまあまあてこずったんですよ?でも依頼人がいるわけだから、何が何でも殺さなきゃじゃないですか。てことなので、ナツネさんはもう彼を殺す必要はなくなりましたよ」

「…あなたたちは、私がまだ殺し屋だと思っているの?」

「え?」

「私はもうとっくに殺し屋をやめてる。あなたたち、最近はいったばかりなんじゃないの?だから私について、あまり知らない」

暗闇でも、彼らが動揺したのが分かった。

「えっ、そうだったんですか?じゃあ、この状況ってやばいんじゃ……」

「京真さまを殺したのはおまえたち?」

ゆらりと立ち上がって、彼らを見据える。

カーテンの隙間から、月光が差し込んだ。

「依頼人の名前を教えろ」

「むっ、無理です!ナツネさんだって、吐けって言われて吐かないですよね!?」

「そっか」

ネクタイをゆるめて髪をかきあげる。

あいつら、許せない。

「じゃあ殺す」

そのまま、彼らへと突進していった。


ゴッ ゴッ

気が付いたら、二人とも顔の原型が分からないほど殴っていた。

辺りは血でびしゃびしゃ。

「ひっ…おねがいします、許してっ…」

「だから依頼人誰だって言ってんだよ!!」

もう一発うちこもうとしたら、誰かにぱしっと腕をつかまれた。

視線を走らせると、見覚えのある笑みをはりつけた警官だった。

「ナツネちゃん、だめじゃん。こんなボロボロにしたら」

彼が胸ポケットに手を走らせる。

私は勢いのまま、数十メートル後ろへと下がった。

彼の手には、拳銃。

「わあすごい。まだ取り出してもなかったのに、きづいたんだ?」

パチパチと拍手をする男をにらみあげる。

彼の後ろには殺し屋たち。

もう意識はないけど。

「京真さんっ!?えっ、血がでてる!?」

「とりあえず、急患室に連れていきますよ!?」

後ろで、花鳥の慌てる声が聞こえた。

私もつられてハッとする。

「だめじゃん。復讐よりも、主人のケガをどうにかしないと」

たしかに、そのとおりだ。京真さまの方が大事なはずなのに、彼よりも犯人が誰かを問いただした。

「君たち殺し屋の仕事は、“警察が依頼した重要犯罪人を殺すこと”。警察に頼まれてもいない、ましてや重要犯罪人でもない男たちを、君は殺しかけた。これは君の“仕事”じゃない」

「…私は、もう殺し屋ではありません」

「もう?両手をみてみろよ。殺し屋のときとなんら変わらない、真っ赤に染まったべたべたの手。どこが違うんだよ」

何も言えない。むかつくけど、あの男の言うことは間違ってないんだ。

京真さまのおかげで、少しずつこんな私でもいいんだって思ってた気持ちが、音を立ててガラガラと崩れていく。

「あ…あ…」

やっぱり私は、汚れてる。

「勝負しよう、ナツネ。方法は殺し合い。君が勝ったら、この男たちを好きなようにいたぶればいい。そうすれば依頼人も聞けるさ。ただし俺が勝ったら。君には、殺し屋に復帰してもらう」

彼が何かを空中に投げた。

それをキャッチすると、硬い金属の拳銃だった。

「なぜ殺し屋に復帰しなければいけないんですか」

「俺は君が殺しの仕事をしてるときの姿が好きなんだよ。孤高で気高く、まわりをよせつけない。またあの姿がもう一度見たいといったら、憎むかい?」

はっと笑いがもれた。

「その必要はないです。勝つので」

「へえ。随分余裕じゃん。あんまり警察をなめないでくれる?」

「実力の違いを思い知らせてやりますよ」

私たちはお互いに、銃口を向き合わせた。

                                続く






おひさしぶりです!

すっごくひさしぶりなきがする…

今回の話も長くなってしまったのですが、最後まで読んでくれた方は本当にありがとうございます!

いろいろ用事があってかけていなかったので、かききってすっきり!

あ、ちなみになんですが、この従順メイドはクラスメイト、あと数話で完結となります!

そこで新作を考えていたのですが、冒頭部分をちら~っとご紹介します!

興味ない方は読み飛ばしていただいてもらって大丈夫です!


『教室の幽霊』

何もかもに嫌気がさしてた。

もういっそ死んじまおうと思って、夜に大嫌いな学校に来た。

昼間はたぶんすごく騒がしかっただろう教室は、今だけ、俺だけの秘密基地だ。

自分のクラスにきたの、いつぶりだっけ。

自分の席がどこかも、今はわかんねえや。

窓際まできて、夜空を見上げた。

今日は満月。

俺の命日となるには、輝きすぎな日かな。

そう思いながらぼんやりとほおづえをついていたら、ガラッと扉が開いた。

反射的に振り返ると、見たこともない女が立っていた。

腰まである長い髪。

スラリと長いスウェットパンツ。

遠くから見ると、驚くほど白い肌。

「何をしてるの?」

凛とした彼女の声もあいまって、俺はおもわず口をひらいていた。

「天使だったらいいのに」

「え?」

「あなたが天使だったら、俺をあの世につれてってくれるな、って」

そこまで言ってから、バッと口をふさぐ。

やば、何言ってんだ俺。

長らく他人と話してないから、人との会話を忘れてしまっている。

女は笑うのかとも、ばかにするのかとも思ったが、口元に指を添え、いたって真剣な顔で近づいてきた。

「そうだなー。私は天使ではないけど、でもね」

気づくと目の前にきていた女は、俺と同じように窓に手をついて、空を見上げた。

「一緒に飛んであげることはできるよ?」

彼女は俺をふりかえり、ふふっと笑った。

白いブラウスに、揺れる長く艶やかな黒髪。

いや、幽霊なのかも、と思った。

彼女の首からさげた証明書が、月光に反射してキラリと光った。


ここまでが試し読みです!

不登校男子高校生と、新任女性教師の物語です。

幽霊とはどういう存在をあらわすのか、誰にとっての幽霊なのか、今後の物語の展開とともにしっていってもらえたら嬉しいです。

最後に、ここまでほんとにずーっと長く読み続けてくださったあなたさま!

いつも本当にありがとうございます。感謝がたえません!

そういえばですが、体調にきをつけてくださいね。最近風邪がはやっているので、みなさんどうかご無事で!しんどいときは無理しちゃだめですよ。

読んでくださりありがとうございました!!



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