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寂しい森の木霊  作者: えだまめ
1/1

はい。皆様こんにちは、えだまめです。

みてくださってありがとうございます。

今回は自分で作り上げた世界の物語を書いてみました。

今回は上下になっておりますので続きます。


「はあ。」

ある森の小さな生き物がため息をつきました。

彼女の名前はリー。

森の木霊(こだま)です。

森の木霊とは森の神様が産んだ子供のことです。

見た目は30cm程。耳はエルフのようにとんがっています。まるで5才程の幼児のような、キラキラと輝いている目が印象的です。顔は比較的整っています。しかし、子供のようなあなどけさがありました。

服はきれいな花びらでできた服です。

ここまで来たら羽もはえてきそうですが、はえていません。

ちなみに痛み、寒さ、暑さ等は感じません。

そんな森の木霊ですがニンゲン界では森の木霊を怒らせると来年は不作になると、恐れられていました。

森の動物達は______森の木霊は森の力でしょっちゅう悪戯をしていましたので______[森の悪魔]と呼んでいました。

リーは昔から孤独でした。いえ、リーだけではありません。他の森の木霊達もです。

でもおそらく一人が寂しいというのはリーだけでした。

お母さん_____つまり、森の神様のことです______とは一年に一度の森の祭典でしか会ったことはありません。祭典ですら話さない事もありました。

森の神様は忙しいですからワガママなんて言えません。

でも頭では分かっていても心は欲しがっているのです。恐らく_____いえ、絶対にもらえないであろう、母親の愛情を。

リーはニンゲンではありません。

でも心はあります。

ニンゲンのようなガラス細工のような心を。

だから、さびしくてさびしくてたまらないのです。

リーは毎日思っています。

友達が出来ないかな、と。

兄妹が出来ないかな、と。

誰かからの本物の愛情をもらえないかな、と。

でも友達なんてできっこないのです。

だって恐れられ、避けられているから。

兄妹なんかできっこないのです。

後継者争いが起こるから、最初に生まれた者意外は殺されてしまうのです。

叶いっこない、夢。

それは叶わないからこそ、輝いていましたが、同時にむなしくもありました。

リーは一人ぼっちの悲しい、森の木霊です。




この前、祭典がありました。

行っている途中で栗鼠(りす)の親子を見つけました。

大縄をしていました。

大人数でしか出来ない大縄はリーの憧れの一つでもありました。

お父さんとお母さんらしき栗鼠が縄を回しています。

小さな栗鼠が三匹、上手に縄を飛び越えています。

祭典にいかなければならない事も忘れてリーは見いってしまいました。

もっと近くで見たくて一歩踏み出した、その時でした。

バキッ!!

足元には二本に折れた、木の枝が転がっていました。

栗鼠の親子達がじっとこっちを見ています。

ごめんなさい、と言おうとした時、栗鼠の親子が走り出しました。

「悪魔だー!!!悪魔が来たぞー!!!森の悪魔が来たぞ!!」

と、叫んで。

三匹の子供のうち、一匹はぶるぶると震え、そう本物の悪魔を見ているような目で地べたに座っていました。

すかさず、その子を母親らしき、栗鼠が抱き上げあっという間に栗鼠の親子は消えてしまいました。

どんなに悲しかったでしょう、リーは。

そのまま、リーは立ち尽くしていました。

そして、歩き始めました。

祭典では舞いの出し物をする予定でしたが、失敗してしまいました。

隣の山の木霊のコロから、笑われてしまいました。

締め付けられるような気持ちで席に座りました。

駄目だな、私って。

そんな風に思いながら、リーとはうってかわった完璧な出し物を見ていました。




お母さんの使いに呼ばれました。

コロの、あいつ下手過ぎて怒られるんじゃねw、っていう声が気になりましたがリーは気にしていないように振るまっておきました。

ああいう、ガキほど怒ると楽しくてもっと煽るからなあ・・・。

とか、思いながら森の神様の部屋に行きました。

相変わらず、豪華な部屋でした。

白を基調とした、清楚な部屋でした。

小物などはすべてスカイブルーや、エメラルドグリーン、水色などの涼しい色合いで夏にぴったりです。

秋にはブラウンで統一されており、赤や黄色、オレンジ色がアクセントになっていました。

冬には青で統一されており、白がアクセントになっていました。色合いは夏に似ていますが、もふもふのカーペットが敷いてあったりして暖かそうでした。

春には若草色で統一されていて、桜色がアクセントになっていました。

びっくりするのはこの部屋は神様の暮らしている部屋なんですが、噂ではこの部屋を売るだけで一生遊んで暮らせるらしいということです。

美しい部屋に感嘆のため息を少しもらしながら、

「なんでしょうか、お母様。」

「今回の舞いみたよ。」

ごくりと喉を鳴らし、リーは絹のカーテンの奥にいるお母さんの様子を想像しました。

「どうしの、他の人たちは見事だったわ。」

ああ、おこってる。

リーは心の中で呟きました。

でも仕方のない事でした。

この舞いは出来によってその保護者_______つまり、森の神様の評判が決まるといっても過言ではありませんでした。

好かれたいのに逆に嫌われちゃう________

そんな不安でいっぱいでした。

しばらくして、絞り出すように言えたのはたった一言だけでした。

「何でもないです。」

「・・・そうですか。次は失敗などしないように。」

「はい。」


祭典が終わり、のろのろとリーは家に帰っていました。

「ねえ、ねえ。」

小さな女の子が話しかけられました。

「______!!!」

「あなた、もしかして森の木霊?」

「あ、う、うん」

リーは思わず、反射的に答えてしまいました。

また逃げられる・・・

リーはそう心の中で呟きました。

しかし可愛らしい声で返ってきた言葉はリーの予想とはまったく違うものでした。

「本当に!?」

嬉しそうにぴょんぴょんとびはねながら、少女は言いました。

「う、うん」

「じゃあ、私と友達になろう!?」

え________?

信じられませんでした。

私と友達に?

私が、あの子と?

そ、そんなわけないよ・・・

そうだ、夢なんだ。

これは夢なんだ。

夢じゃなければ良かったな・・・

でもすぐにリーは考え直しました。

ううん。現実じゃない方がいいや。

だって本当に現実だったらどーせ、言い間違えとかだから。

「ね、いい?」

夢なんだから楽しもうかな・・・?

「うん。」

「やった!!!」

そう言って黒色の髪を揺らした彼女は、普通の民家の服を着ていました。

キラキラと輝いている目は黒くて美しく、 真っ白な肌は雪のようであどけない整った顔は凄く可愛らしいものでした。

年齢はリーと同じぐらいです。

といってもリーはニンゲンよりも平均IQが高いので精神年齢は3、4才離れているでしょうが。

「ね、何する?」

その時、カーカー、とカラスの鳴き声が響きました。

空は気付くと真っ赤に染まっていて東の空は濃厚な紺色がもう占領していました。

「帰らなきゃ、いけないね。」

「うん」

あんまり悲しそうに言うのでリーは、遊んでもいいかな、と思いましたが女の子はすぐに言いました。

「でも、帰んなきゃね。」

「うん、そだね。」

少女はニヤリと笑い、森の木々に消えて行きました。

いい夢だったな・・・

リーは寂しそうに微笑みました。

空は紺にそまり、リーの心を現しているようでした___________


ピーンポーン

気付くと、リーは家のベットに横たわっていました。

しかし、いつもと違うことがありました。

チャイムで起きたことです。

リーの家には客が来たことはありませんでした。

まだ起きていない頭をたたき起こし、丸太のドアを開けました。

「!?」

そこには________漆黒のさらさらの髪にあどけない黒い瞳、そしてあの笑み。

「遊ぼ!森の木霊さん。」

少女はそう言ってリーの手を引きました。

まだ起きていない目が夏の日光にさらされ、眩しくぎゅっと目をつむりました。

「ま、眩し・・・」

リーは手を引かれながら呟きました。

「_______まぶしい・・・?」

はっとしてリーは思わず、足を止めました。

[眩しい]は夢では感じられない事の一つ・・・だよね?

リーは己に問いかけました。

うん、そうだよね。

リーはもう一度、太陽を見ました。

それはもう、眩しく、リーはにっこりしました。

その眩しさはリーが本当に欲しかったものの輝きでもありました。



それから毎日はとても楽しいものでした。

リーがやりたかった事はほとんどやりました。

少女の名はララといいました。

リーのお母さんがララ・ミゼラブルといった名前だったので似てるね、と笑い、にらめっこや、かくれんぼ、キャッチボールなど色々なことをしました。

本当にリーにとって夢のような事でした。



1年後______



今日は祭典の日です。

舞いは今年もやることになりました。

ただし、去年よりも難しいものにしました。

でも、リーは少女と楽しく練習したので凄く上手に出来るようになりました。

実際、祭典では上手に舞えました。

しばらくして、リーはお母さんの使いに呼ばれました。

褒めてくれるかな。

リーはそう思いながら、お母さんの部屋に向かいました。

相変わらず、豪華な部屋でしたが去年とは違い、秋っぽい部屋に模様替えされていました。

「なんでしょうか、お母様。」

去年とまったく同じ事を言いましたが、心境はまったく違うものでした。

「ララとは上手くいってる?」

リーが想像していたものとはまったく違うものでした。

「なぜ、知っているんですか?」

リーはとっさに答えました。

「・・・実は、ね」

リーの背筋に冷たいものが走りました。

「ララは私の使いなのよ。」

リーは頭が追い付かず、しばらくボーッとしていました。

ようやく理解すると、ほぼ同時にお母さんは言いました。

「でも、代わりの_______ララの代わりが訳あって________ ね。」

来られなくなった・・・

リーは心の中で続きを言いました。

もう、次の言葉・・・分かっちゃったな。

リーは身構えしました。山の神様_____母親から発せられる、言葉に。

「だからララは戻らなければならないの。」

リーは口から息を音をたてて吐きました。

「大丈夫よ。ララは操っていただけだから本心ではないのよ。」

本心じゃあ、なかったんだ。そうだよね。当たり前だよ。そうだよ。こんなの起こるわけないじゃん。夢なんか見るんじゃなかった。

「一人で大丈夫よね。」

リーは言いました。

「大丈夫です。」

でも堪えきれなかったモノがうつむいた、リーの瞳からキラリと光って落ちました。
















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[良い点] 森の神様のセリフ、ぐさっと来ちゃった! とても寂しいリーの気持ちがわかりました!! [一言] めちゃくちゃ面白い! 続きが楽しみです!
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