隣人
お読み頂けると幸せです。
経血以外で自分から流れる血を見たのは、今日が初めてだった。
窓越しの彼はその場から動かない。
椅子に座り、優しくこちらを見つめていた。
どうやら彼は口が聞けないらしい。
互いの距離は、家と家の間の僅か10メートル
分厚い窓には頑丈な格子がついており、
たとえ大声を出したとしても意味はないだろう。
互いが互いを見つめ合う。
だけ、、
たったそれだけの関係
彼女は刺激が欲しかった。
生まれて12年。
一度も、この部屋を出た事もない彼女の退屈さから
来る衝動。
いつも同じ場所、いつも同じ彼の仕草、目の色、
見えてるのに見えない心。
私は彼の動静を見つめるだけ。彼も同じか。
いや、彼は気狂いなのだ。
変化のない笑顔、まるで人形のよう。
すると私は、この部屋で飼われてるペットと形容しよう。
彼の変化が見たい。嗚呼、彼の変化が見たい。
私の存在は何なのか。
知りたい。
私は食事用のナイフを手元に当てて、それを横に引いた。
心地よい痛みが身体に伝わる。
経血以外で自分から流れる血を見たのは、今日が初めてだった。
ふと彼の方をみると
そこには、いつもの表情があった。
お読み頂き有難う御座います。