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第20話 棚からぼた餅?

読んで頂きありがとうございます!

 



「それじゃあ先生、こいつの事お願いしますね」

「こっ、こいつって! 聞いた? ひおちゃん、湯真って裏の顔はこうなんだよ? ひどい奴なの!」


 このっ! ここまで付き添ってやったってのに……大体な? なに式柄(しきえ)先生の事あだ名で呼んでんだよ? それなりの付き合いとは言え、生徒と養護教諭。馴れ馴れし過ぎませんかね? せめて名前で呼びなっ! 日織(ひおり)先生ってな!


「もう、ここまで付き添ってくれたんだよ? 感謝しないと。湯真君? ありがとう。後は任せて?」

「すいません。お願いします」


 ガラガラ


 ―――でもひおちゃん? 湯真ってば何食わぬ顔で腰触って来たんだよ?―――

 ―――えぇ? でも、ケガを心配してくれてるんだし、その位は許してあげなよ?―――


 ……やっぱムカつくな? まぁいいや。痛手を負ってる奴にムキになるのは気が乗らな……


 ―――でもね? 限りなくお尻に近かったんだよ?―――

 ―――まぁ! でも、2人共仲良いからOKじゃない?―――


 ……落ち着け湯真。とりあえず、早急にこの場を離れよう。ストレスが最高潮に達する前にな。



 こうして、なんだかんだありながらも恋桜を無事保健室に連れてきた俺は、とりあえずグラウンドへ戻ろうとその歩みを進めた。

 誰も居ない、静かな廊下。

 自分の靴の音だけが響く、いつもじゃ考えられない光景。


 何とも不思議な感覚に包まれながらも、ただ1人ゆっくりと歩き続ける。


 にしても、恋桜の奴。割と元気そうで良かったな。保健室行く途中でも、


『こんくらいの速度で大丈夫か?』

『大丈夫大丈夫。サンキュー』


『別に、お前になんかあったら凜桜に嫌われそうだからな?』

『ははっ、確かに。でもどうせなら海真の肩借りたかったなぁ』


『……海真は色別リレーに出るんだろ? 無理だな』

『分かってて言ってるんです! はぁ海真の雄姿を近くで見れないなんて』


『保健室の窓から哀愁漂わせながら眺めるんだなっ!』

『あっ、ひどぉい!』


『はははっ』

『むー……でも、湯真。ありがとね』


 なんていつも通り。あの様子じゃ捻挫以上の怪我はなさそうだ。にしても……あいつ式柄先生の前では若干、素モード見せてなかったか? 大丈夫なのか……


 なんて、そんな事を考えていた時だった、ふと耳に入ってきた物音。それは数メートル先に見える昇降口の辺りから聞こえて来た。


 このクライマックス種目を目の前に校舎へ? 

 そんな疑問を抱きながらも、その歩みを進めていると……今度は紛れもなく誰かの足音が聞こえて来る。

 そして、徐に廊下に現れた人物の姿は……見覚えがあった。


「あっ……」


 その声も聞き覚えがあった。というより、分からない訳がない。

 抜群のスタイルに、整った顔立ち。似合い過ぎるショートカット。


「りっ、凜桜?」

「湯真!」


 月城凜桜で間違いない。


 って、凜桜? なんでここに? ヤバい……思わぬ状況に上手く口が開かねぇ!


「えっと……」

「とっ、湯真なんで校舎の中に?」


 いやいや。これはこっちのセリフなんだけど? ととっ、とにかく話せ。何か話せ俺!


「ん? いやいやそれはこっちのセリフだよ。もう少しでリレー始まるだろ?」

「えっ? そうなんだけど……ちょっと気になってね?」


「気になる?」 

「うん。ほら、学年対抗リレーで恋桜転んじゃったじゃない? それで心配だから様子見に行こうと思ったんだけど、リレー見てる中にも居ないし、テントにも居なかったから」


 マジか? それでもしかして保健室かと思って? ……やっぱ性格良いなぁ。妹を思う姉。最高かよっ!


「それで保健室に居るのかなって思ったんだけど……湯真はどうして? もしかして……」

「ん? あぁ、一応付き添いで保健室連れて行ってたんだ。なんか捻挫してるっぽかったし」


「えぇ! 捻挫?」

「まぁ様子を見る限り軽い感じだったよ?」

「癖にならなきゃ良いけど……これからチア部が活躍する季節到来するし。でもさすが湯真、ありがとっ」


 おぉ! これはポイント高くないか? 結構良い感じじゃね? いやいや、恋桜を保健室に連れて行って結果オーライだわ。

 ……ん? ちょっと待て? 冷静に考えろよ湯真? この状況……かなり最高なのでは? 恋桜は保健室。海真は……色別対抗リレー! と言う事は誰も来ない? ちょっと時間はないけど、2人で話せるチャンスでは? 

 むしろ……勇気振り絞って、遊びに行くのを誘う絶好のチャンスでは!?


 …………その通りだ……行くぜっ!


「全然だって。それにしてもリレー見に行かなくて良いのか?」

「まだ選手紹介だから大丈夫でしょっ。各色が逆転するには何位になって何点必要とか、最後の種目だけあってちゃんと説明するしね?」


「あぁ、後は出場全選手の紹介だな?」

「うんうん。テンション上がっちゃうよね?」


「まぁ俺はそんな場に居たくはないけどな?」

「そう? 湯真は足速いから大丈夫だってっ!」


「いやいや、てか凜桜こそヤバかっただろ? 4人抜きだろ? 目立ってた」

「たまたまだよ?」


「にしては、凄過ぎだけどな?」

「だったら、湯真はアンカーで1位で……格好良かったよ?」


「あっ、ありがと」


 ……キッ、キタァ! 格好良い? 格好良いって言った? これは素晴らしい。出来ればボイスレコーダーで録音しておきたかった! それ位嬉しいんだが? 

 なんだ? 今日はなんだ? 全てが上手くいき過ぎてないか? これはもしかして、遊びに誘ってもOK貰えるんじゃ? 2人きりでだぞ? でも……上手くいきそうな気がする。 


 ただ……そのキッカケにどう持って行くか……


「ふふっ。そう言えばそろそろ湯真達関東大会だよね?」

「あぁ、そうだな」


「私達も応援行くからさ? 頑張ってよぉ?」

「けっ、怪我しない程度にな?」


 はっ! 待て? 関東大会? 応援に来る? ……これだ! 良いぞ? 頭まで冴えわたっていやがる。

 そうだ……交換条件だ! 


「もう……応援の予定は準決勝からだからね? 負けちゃダメよっ」

「だな。頑張る……よ。あっ、凜桜……ちょっと良いか?」


「ん? なになに?」

「えっと、こんな事、今言うのもあれなんだけどさ? ちょっとお願いがあって……」


「えっ!? 湯真が私にお願い? 珍しいっ! どしたの?」

「……えっと……」


 ヤバいな……ここが踏ん張りどころだぞ? 行け湯真! 今日のお前なら……行ける!!


「あのさ? 遊びに行かないか?」

「遊びに? いつかな? 恋桜達にも聞いて……」


「いや、2人で……」

「ふっ、2人?」


 はっ! やっぱこうなるよな? 驚くよな? ダメだ、ここで考える暇を与えるな! こっちのペースに引き込め。


「いやっ、ちょっとな? でもあれだ。もし、関東大会で優勝できたらで良い」

「えっと……優勝? もしかして2人には内緒にしたい事情があるとか……?」


「そっ、そんな感じ! でもさ、とにかく優勝したら、ちゃんと俺が活躍して完勝したら。だからその……もしそれを達成できたらで良い。2人で……」


「出掛けないか?」


 言ったぁぁぁ! ついに口に出来たぞ? 雨宮湯真! これは大きな一歩だぞ? 自分で一番驚いてる。でも……問題は……


「……うんっ! 良いよ?」

「えっ?」


 へっ? 良いよ? なんかめっちゃ軽くね? ててっ、てか良いの!?


「えっ? 良いのか?」

「うん! 湯真から行こうって言う位なら、それなりの理由がありそうだし……全然良いよ?」


 おぉ! これは! なんか俺の言葉を違う意味で捉えていそうだけど……勝ちは勝ちだっ! 


「本当か? ありがとう。じゃあ、圧勝しないと」

「うん! 私も恋桜も、一生懸命応援するね?」


 夢じゃないよな? 現実だよな? ……だとしたら、今日という日は……


「本当か? じゃあ任せた」

「ふふっ、頑張ってね? 湯真っ!」

「あぁ」



 なんて良い日なんだぁぁぁ!!




次話も宜しくお願いします(*'▽')

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