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約5年前に書いたなろうテンプレについての考察

 普通の高校生だ、僕は。誰が何と言っても、僕がどんな存在で実は世間一般の普通平凡とは大凡かけ離れていたとしても僕が普通であるということは至上命令、絶対的な、侵すことが出来ない聖域だった。とかくして僕は普通の高校生だ。


「こんなもんでどうかな?」

「これで額面通り素直に主人公はありふれた普通の高校生だと認識してくれる読者、もしくは無理矢理納得する読者が居たら君はその人を大事にしなさい。いい読者は作者の宝だ」


 【私】がそう言ってくれたので【僕】はこの前説が必要とされていないことに気付く。突っ込む読者は悪い読者で普通警察でありノイズ……それか単に親切な人。だとして、そんなことはどうだっていいから早くトラックに突っ込もう。

 私が言う。

「君、何か死ぬ前に何かしておこう」

「何って何を?」

「例えば善行、それか悪行。昔は良いことをしただけで転生させてもらえたのさ」

 寂しそうな私の声を聞いて僕は相当自分というものが抑圧されていたことを知った。転生欲がありあまってる。しかし善行……

「実際の所、死ぬ理由と死ぬ前にすることは密接な関係があるはずだ。子供を庇わなければトラックに轢かれることはないだろう? 君みたいにひとりでに死に行く馬鹿は知らないが。ストーカーと付き合ってもいいし」

「他には? 何で他が浮かばないの? どうして僕はそれを覚えていない?」

「実際の所、やはり素直にトラックで死ぬべきなんだよ。それこそ主人公が死刑囚で、電気椅子にて死んで、エレクトリックな能力を身に付けて転生するとかでない限りね。君の能力が活かされない場合に関しても普通の高校生が望ましい」

「普通の高校生が望ましい」

「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない。何故なら(とは少し違うが)拳銃は発射されるために存在するからだ」


 僕はそれで大体は納得してトラックに轢かれようと思ったが、庇う対象が見つからなかった。


「ちょっと待った。子供を庇うのか? 何だかそれって嫌だ、”アフリカの子供たち~と同レベルだ」

「君はトラックの運転手に同情すべきだよ、違うかい?」

「トラックが愛されてるのは知ってるさ。一体どれだけのトラックが異世界転移/転生した?」

「確かに。別に嫌なら他を庇えばいい」

「それってチェーホフの銃に反さないか? 普通の高校生が庇おうと思える限界は? 子供なら無条件、だからこそ危うい」

「よし、じゃあなろうの作品の例を参照しようか」


 へ? と声が出た。何だって急にそんなことを、

 私が言う。

「無職転生という作品が在るね」

「信者が多いから止めときなよ」

「別に……深い意図はないさ。若干のネタバレになるけど、この作品のプロローグで庇われた人物はちゃんと活用されている訳だ」

「転生してからスライムだった件、は日常への回帰というのがあるね。大ネタバレだけど、帰る場所としてのプロローグ」

「蜘蛛ですが、なにか? ……は止めとこ。こんな風に、プロローグの活用はあれど何を庇うかとか誰に殺されるのかとか、そもそもKnight's & Magicは庇ってないし。大して重要な事ではないんだ。大事なのは、主人公が生前どういった人物であるかというのを出来るだけ簡潔にして殺すこと」

「っていうかもはや僕が死ぬ過程すら必要ないのでは? 人狼への転生、魔王の副官はそこすっ飛ばしてる」

「でも、主人公が前世どんな人物だったかというのは重要だよ。前世ありきの異世界転生だからね」

 

 それを説明するには一先ず神様転生した方がいいらしい。僕は突然出現した菓子が超高速で頭に衝突して死んだ。所謂、神のミスというヤツである。




「神様を殴るという蛮行についてですが。単に非難されるようなものではないと思います」

「その心は?」

「幾つかのパターンに分岐してそれによって性格を示すことが可能だからです」


神様に会う➡感謝➡主人公は神様の言うことをホイホイ受け入れる

     ➡乱暴な対応➡説得、甘受する➡神様の位が低い

           ➡防ぐ、反撃する➡神様が敵であるという認識が高まる


「主人公の言うことを全く聞く気がない、一方的な神様に好感を懐くことは難しいでしょう。よってそいつは敵です。或いはうっかり神様です」

「何それ。チョロい神様はチートどっさりとか?」

「最近じゃ神様さえ圧倒する主人公が溢れているとか居ないとか。やっぱ神は屈服させるべきですね」

「どうして?」

「勇者召喚されたと考えてください」



『お前が王様か』

『何ぃっ! 王に向かってお前だと!?』

『不敬な』

『失敬な』

『『死刑だ!!』』

『お前は追放だ―!!』


「とするでしょう」

「うん」


『はっ、笑わせてくれるぜ』

『何だその顔は、お前は今王の前に居るのだぞ』

『俺は神を殴った』

『!?』

『今更お前ら如き王様に敬意を払ってやる覚えはないね』

『何だと!??』

『因みにその後神からの謝罪を受け取った。この意味、解るな? 俺が一番偉いってことだ』

『しゅ、主人公様』


「といった感じで、主人公の傲慢不遜が何ら問題ないことに出来るから」

「何か違う」

「一つ言えるのは、色んな主人公が居るということ。みんなちがってみんないい」


 そんな投げやりな結論でいいのだろうかと考えて、そういや今僕は誰と喋っているんだと疑問を抱き、それが神であることを認識する僕であった。

 私が言う。


「神様って策謀とか張り巡らせますかね?」

「はて? 何のことやら」

「神様転生が廃れた理由なんて知らないけれど。でも、必要なくなったのよね。神は同情によって二度死んだ。一回目に神聖さを奪われ、二回目には必要性を奪われた。三度目の神は娯楽だとかつまらない悪意に満ちた存在に落ちぶれたのよ。そうでないと神が転生させる必要性が無い。物語に出て来た神は必ず主人公を転生させなければならないという決まりによってね!」

「お主が信ずるものが神よ。偶には犬を拾って育てた恩返しに異世界へ行ってもよかろう」

「非神様転生こそがご都合主義なのよ! 神様も無しにどうやって異世界へ行くの、偶然かね、偶然か、その偶然って何だ!? 明かさないとするのなら出落ちの神様で構わないの」


 僕は全ての物事に理由を求められるほど好奇心豊かではない普通の高校生だから、やはり娯楽小説であることが大事だと思う。私が言ったように、神様が皆優しい訳ではないから、ご都合主義を排した途端悪魔に変貌する神を、必ずしも登場させる必要はないと思う。要するに、如何にストレスが掛からない世界にするかが重要である。


「私に倣って僕も例を出してみよう。魔王は世界を征服するようですという作品は、何故か異世界に転生する。そこに神はいない。何故いないかといえば恐らくそういう要素を排除するためだろうけど」


 私が言う。


「君はプロローグの話をしたいの? prologue 00と0があるね。00の方は主人公の境遇で0は転生するまでの過程だ。特に0は主人公が合計三回の善行を行っているね」

「多分、どうせ変えるなら最低でもこのくらいはやらなきゃいけないと思う。そうでなければ三行で転生すべきなんだ。中途半端に変えたってそれは奇をてらうだけで、それ以外何の意味も持たない、果たしてそんな部分が小説に必要だろうか?」

「結論」

「エロを増やすべきなんです」


 しまった。投げやりになってしまった。

 私が言う。


「オッカムの剃刀ね。必要でない部分をそぎ落とした結果。エロからの連想だけど、本当はコミュ難の俺が、交渉スキルに全振りして転生した結果、くらい丁寧にやるべきなのよ。何せ神様と対話するんだからね。kakugoだって、そういう被害に遭ったものの一つよ」

「時代はストレスフリー。なろうファンタジーにリアリティを求めるべきじゃない。千差万別、色んな人が居るからホントは尖ってた主人公の方が受けがいい。普通じゃない高校生からの脱却を目指した結果が、人でなしじゃ笑えない」

「テンプレは一種のお約束であるということを明示するためにあるのね。やたら庇うことに拘ってたけどそれは、主人公が目の前の人間を庇えるほどの人格を持っているということの証明だから?」

「キャラとしての面白み、糞みたいなリアリティによってそういう主人公が少しずつ駆逐されたというのは、まあ、被害妄想かもしれないけど。人を殺せる人が増えたなとは思う。実際、それが正しいと思ってる」

「ファンタジーという言葉の意味をどう捉える? 文字通りの幻想・空想世界、それともパラレル・IF、はたまたなろうテンプレ。重要なのは欲望をいかに充実させるかよ、出来れば可能なだけ婉曲的であると望ましい」


 こんな所で雑談していても仕方がないので、そろそろ転生しようかと思う。


「じゃあ、異世界に送るよ?」

「ちょっと待ってください。チートをください」

「どうして?」

「僕みたいな人間が、普通の高校生が転生したところで何が出来るっていうんですか」

「年月チートがある。現代知識? とか……オタ知識?」

「普通の高校生はヲタクではありません。多分。嗜み程度ね。転生はやっぱりおじさんじゃないと駄目だと思う。転移の方が相応しい」

「若いっていいね、そのまま活躍できるから。おじさんになるとちょっと、出来なくはないけど辛くて」

「二度目の人生を異世界で、ならチートで若さという人生経験+若さを転生もないのに強引に取得してるけどさ。勇者でもなければ僕は何にも出来ない自信がある、それこそ転生先に恵まれないと」

「イージーモード異世界ですね?」


 普通の高校生である僕は「うん」と大きく頷いた。怠惰とは常に心に潜む病であるからして、楽をしたいという根源的な欲求の奴隷である僕は確かに異世界を求めていた。


「何が欲しいですか? 一つ選んでください。・従順な奴隷が安価で買える異世界・ステータスがある(勿論貴方は上限突破!)異世界」

「ロボがある異世界とか」

「それ本心からの言葉じゃありませんね? 解ります」

「ステータスは必要だと思う。ステータスもスキルもレベルもない異世界なんて、欲望の充足には不適切、特に俺ツエーを使う分には。最初はステータスで埋めて、それから、少しずつステータスをフェードアウトさせていけばいい。つまりはお約束。ありふれた職業で世界最強にてステータスが再登場した時、意外と感動した。説明が難しいけど、ヒロインの胸が巨乳か貧乳かは実にどうでもいいことで、(人は胸ではない)それなのに重視されるというのは巨乳か貧乳かという違いが存在するからである。対立が価値を生み出す――ステータスの違いという解り易い格差がキャラの強さを保証してくれる。だからステータスは一つの、オッカムの剃刀だ」


 私が言う。


「本当に? レベルが高くとも、ステータスが高くとも弱いという例も」

「違う。それはレベルが高ければ、ステータスが高ければ強いという概念があって初めて成立する俺ツエーだ。必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がないを見れば解る」

「積極的になろう小説を紹介していくスタイル?」

「全方面に喧嘩を売ればPVが稼げるらしい。これだけ紹介すれば誰か一人くらい怒るんじゃないかな、とは思う」

「打算的だね。現実主義者……いやなんでもない。それより奴隷よ、奴隷の方が大事に決まってる」

「どうして?」

「大いなる力には大きな責任が伴うから。奴隷は幾ら買っても使い道が幾らでも」

「さっきの覚悟の話だけどさ。僕の執筆中小説からちょっと抜き出すよ?」


『奴隷制は悪か? 悪法でも法だ』

『奴隷制が消えた理由を簡単に言えば、利益が減ったから』

『一つ言えるのは神にとって人は奴隷である』

『貴方は奴隷制を批判するが、実のところあなたも何らかの奴隷であることは間違いないはずだ』

『天は人の上に人を作らずと云えり。されど人は人の上に立つ』

『超人は法をも超越する資格を持つ』


「何これ」

「主人公が奴隷を買うことになって、記憶がフラッシュバックしている。長いのを抜粋した。結果的に主人公は奴隷を買う事を決める。また別の執筆中小説から抜粋」


 奴隷市場に居ると、心が荒む。人を物と扱うこと、良心が何か叫んでいる。煩い騒音だった


「これは地の文だけど、奴隷市場での出来事に一話使った」

「奴隷の扱い方? どうだっていいじゃん。都合のいいヒロインと都合のいい人材を突き詰めていった結果奴隷に行きつくというのは至極当然に思えるけど(そしてそれに文字を割かないというのも)」

「それってロボットで良くない?」

「は?」

「アンドロイドでいいはず。奴隷である必要性とは?」

「ありふれているから。現実にもあるし」

「合理性を探求した末に辿りつくのがテンプレ。先人たちの知恵は馬鹿にするものじゃない」


 そして僕はステータスがある世界に転生した。ロボット製作のチートも貰った。




 私が言う。


「授乳という行為にエロスを見出すべきか?」

「エロは大事、じゃなくて……おっぱいに興味が無い男なんて要るの?」

「…………どこを省くかが問題」


 転生する時に問題なのは時間配分、特に幼少期をどうするか。


「書かなければ転生した意味がないと思うのだけれど」

「そだ☆シスのように濃密な」

「確かに嫌だ。省くべき」

「神童描写も捨てがたいけど」

「天才になって何かいいことあるんですかね」

「才能を出し惜しみすると嫌われるよ。それに、拭いきれない違和感」


 あんまりボロが出ないようにするのが肝心。折角の異世界だから人間の成長の過程が違うでもいいと思うけど、それじゃ幼児のころにチートするというのが成り立たない。大切なのは、なのに出来る。


「転生の醍醐味として人間関係の再構築がある。前世で失敗したことを今世で成功させるという代償行為、教訓止まりでいいとは思わない。ガッツリ、欲望を剥き出しにしてこその異世界におけるスローライフ」

「矛盾してない?」

「怠惰系主人公はポーズだと思ってたんだけど、本当に大したことをしないのが出てきて僕は今更ながら驚いた。すべてのチートは俺ツエーに繋がるとばかり思っていた」

「復讐系がまるで復讐していないみたいな? 復讐系と悪役令嬢はどちらも短編に向いているらしいから合わせてみようかと思ったらそもそも悪役令嬢ものは復讐系だった」

「コメディが後だっけ??? 喉元過ぎれば熱さを忘れる、なんて感じに悪役令嬢がテンプレとして成立したからこそテンプレとしての悪役令嬢が増えたというか。時代とともにテンプレは変化するというのはそういうことなのかもしれない」

「だとしたら。幼児のころから無双することって必要なの?」

「というと?」

「たとえば、夜伽の国の月光姫は転生者だったからこそ異世界語がうまく話せなかった。こういうことは稀によくある。でもさ……大多数は転生したことがアドバンテージ。それが王道、そうでなければ最初から転生する必要なんてない。それなのに転生が入っているとしたら」

「転生ものへのアンチテーゼ? 夜伽の国の月光姫は勘違いものだから別枠だけど」

「テンプレは素材なのよ。それをどう生かすか、どう解釈するかは作者次第。そもそもなろうファンタジーというのは少なからず既存のものへの反抗が含まれているのだから」

「スライムが強いとか」

「そうね。バリエーションがいっぱいあって飽きないわ。・普通に強い・弱いけど数集めれば強い・(弱いけど)特性を付与したのは強い・弱いけど鍛えてやったから強い、などなど。だからなろうがやめられないのよ。一度嵌ったら病みつきに」

「バリエーション……ひょっとして幼児ものが嫌いなのはそれ?」

「幼児の時から出来ることといえば、何? 幼児の時にしか出来ないことって何? それは時間が掛かることなのよ。例外があるとしたら、子供だから許してもらえることとか……」

「授乳」

「――子供のころは自由だったのよ、その空き時間をどう使うか。今の時代ストレスフリーだから、親が束縛してこなくなって、子供の時間というのがそもそも必要じゃないことになったのかもね」

「あんまり親がロクデナシだけのは異世界では見ないね、創炎のヒストリア ~転生執事の日常~とか?」

「あったとしても、それは親が明確な敵として描かれている作品だったり」


 そこまで来て僕は思った。そもそも親というのは必要だろうか?


「両親が明確な役割を果たすとしたらそれは親殺しだ。弱者は正義を語らない 〜最悪で最低の異世界転生〜ではそれをやった。アンチテンプレだけど。キャラが記号化されたから両親というのが必要でなくなったんじゃないかと思う。両親がそのキャラの役割から抜け出せないから要らなくて、それは他でも代用できて。甘いのか辛いのか無関心なのかという感じに」

「両親が明確な役割を果たすとしたら、君自身も言ってるけど授乳……性的対象としてね。そだ☆シスは本当に……オンリーワンで、だからこそ私はサモナーさんが行くとそだ☆シスが書籍化されたことが去年を象徴する」

「逸脱してる」

「失礼。さっき私は欲望を如何に婉曲的に満たすかという話をしたけど、母親への欲情というのは結構直接的なもの。読み間違えで、下種な主人公だとアピールするテンプレ的表現だったのかもしれない」

「いや……? 単にポジションの問題なのかもしれない」

「その心は」

「ネタバレだけどさ……ありふれた職業で世界最強にて、高校生である主人公のハーレムに先生が入ったとき、微妙な気持ちになった」

「無職転生で主人公のハーレムに家庭教師が入ったみたいな?」

「母親への欲情を真面目に書けばそりゃ夜想曲だけど。なんで皆その辺大人なんだろうね」


 両親問題を真面目に考えるとポケモンやドラクエとの関連性まで書かなければならないので僕はこの話題を打ち切った。


「あ、でも殺人の必然性は続ける。さっき親殺しで例に出そうと思ったけど、奴隷キャリアプランナーは成功できる職業にて奴隷である主人公は主を殺した」

「しかし書き直され、奴隷キャリアプランナーは成功できる職業 ~おまけ集~に旧版は移された。奴隷キャリアプランナーは成功できる職業では主人公が主を殺さない。この差異?」

「そうじゃなくて。ランキングの上位だった頃は読者で、感想欄も見てたけど何回か主人公の殺しについて必然性を問われてたんだ」

「kakugo?」

「というよりかは。倫理は勿論どうでもいいけど、主人公はなぜ殺人に至ったか。殺害動機の」

「バリエーション」

「まあシチュエーション。意味もなく殺す、殺したいから殺す。殺害じゃないと気が済まないような、誰が煽っているのかは分からないけど」

「死ねばいいのに、に代表されるストレスフリー。人を殺せる主人公がテンプレ。君は主人公の善性の保証を声高に叫んでいたね」


 平和な日本で生まれ育ち人を殺せるかなんてわからないけど、仏教的原罪が考慮されないのは悲しい。


「ご馳走様というテンプレだけ残って、感謝の心が亡くなるのは虚しい」


 普通の高校生である僕はそのことを嘆いた。




 数年後

 僕は学園に通うことになった。


「なんでみんな律儀に学園に通うの? 退学は?」

「ないことはない。でもそれなりの事情が必要だから、スキップには有効な手段とはいえ簡単に使える訳ではないよ」

 

 僕は普通の高校生だからそんな、退学になるようなことを起こせないのか。納得。

 私が言う。


「何時までその普通を引きずるの?」

「僕のアイディンティだ。僕が普通の高校生でないとするならば、僕が転生者である必然性が無くなり、有能な現地人と区別できない」

「私は神様転生を支持するから、転生者でも出来るようなことを現代知識なしで有能な現地人にやらせるのは気が進まない。勿論、有能な現地人にでも出来ることを転生者にやらせる必要はないから、当然有能な現地人でもいいけど。ものによっては転生設定が足を引っ張る」

「学園に関しては転生者との親和性は高いと思うけど」


 一人だけ違う視点を持つというのは、学校では大事だろう。同調圧力で酷い目にあったけど仕方がないね。


「内政チートと幼児の相性も悪くはない」

「幼児の戯言を実行してくれるかどうかはともかく、現代知識というのは年月を経ても変わらない訳で。(寧ろ劣化する)たとえば、詰みかけ転生領主の改革?」

「総称して知識チート。つまり幼児で強かったら可笑しい訳で話の幅も狭い」

「だから好きじゃないのよ」

「まあ一口に言えばそうだとしても、知識の幅は広いから」

「私やっぱりリバーシがジャスティスだと思うのよ。コスト・生産性・バリエーション・独創性、利益率だけが足りないのかもしれないけどそんなものは金貸しでもやっておけばいい」

「それだと主人公が外道に」

「返せなかったら奴隷ってなろうファンタジーに最適だと思わない?」


 それはそうなのだがそういう金融業は専門的な知識が必要なので一部の人しか出来ない。


「取り立てどうするの」

「主人公ツエーの出番よ。というか整合性なんてどうだっていいじゃない、なろうでそんなの気にするだけ無駄よ」

「ちょっと待った。僕は今までその整合性について話をしてきたと思ったんだが」

「物語についてはね。主人公が強い理由なんてごまんとあるの。それより主人公の周りが馬鹿である理由を考えた方が有意義だ」

「閃いた。文系しかいない世界に理系が転移する」

「それって女しかいない世界に男が転移するのと何が違うの?」

「ん……異世界は近くて遠いね。多分異世界ってのは共通幻想になるんだろうけど、学園というのは異世界化しやすい場所だと思う。自分の近くから異世界化していく感じで」

「そして新宿駅がダンジョンになった?」


 カクヨムなんてものは知らない。


「ダンジョンといえば…………」


 普通の高校生である僕はゲームが好きだ。学園にはダンジョンのお試しとしてVRゲームがある。


「いや、おかしいでしょ」

「どうして?」

「異世界にそんな」

「異世界には魔法があるよ? 第一VRゲームなんて現実でも未だ実現していないのだから、魔法の出番では?」

「異世界に異世界を重ねるの? そんなものチートの理由でしかないわ。異世界人だからVRゲームが強いというのは既にある。結局どちらかを主軸にするしかないのよ。二つの異世界を登場させると作者が持て余すからなろう小説の枠を飛び出してしまう」

「僕が提案するのは学園編の皮を被った何かだ。その一つにVRを提案した」

「学園編が難航する理由の一つはそこが閉鎖された空間だからだ、それにVRを足したところで解決策にならないのでは?」

「いや。学園=1とする。これにVRと冒険者ギルドを足す。1は変わらないので学園+VR+冒険者ギルド=1だ。結果として、学園が三分の一になる。VRのキャラは学園のキャラで、VRの敵は冒険者ギルドの敵にすれば多少は楽になると思う」


 それじゃ学園をやる意味がないと私が言った。


「そんなことはない。なまじ転生して成熟した主人公だと忘れがちだが、学校というのは教師から教わる場、つまり人間的に成長できる場でもある。失敗しても許される場所だ。ゲームだってそうだ。ところが、魔物と戦うときに失敗したらリカバリーは難しい。決定的な敗北になるかもしれない。それはストレスだ」

「だからVRと異世界は相性が良いって?」

「それ以前にVRと学園の相性が良い。二重生活、学校に行きながら異世界に通うというのが最も簡単に成し遂げられるプランだ。言い換えれば、日常と非日常を行き来する。それはライフハック、チートへと繋がっていくはずだ」

「ライフハック?」

「ここでは異世界の力を現実で利用する、または現実での知識を異世界で応用することという定義にしよう。







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