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胃が痛い話

作者: 熊パン


ここ最近胃がキリリと痛む。

仕事も順調でなにかストレスがある訳でもなく、食生活もいたって健康そのものである。

それでもなにか自分では分からない不調があるのやも。そう思って病院にも行ってみた。


「ん〜…特に異常は無いですね…。

もし長く続くようであればまたいらしてください。」


との事。

つまり、医者にも原因は分からないということだ。

日常生活にそこまで支障がある訳では無いので我慢しながら過ごしていた。


ところがある日の夜、立ち上がれないほどの痛みに襲われた。

ベッドの中でうずくまり耐えるが一向に収まらない。それどころが痛すぎてむせてくる始末だった。

ひとしきりむせた後、何かが口の中から飛び出してきた。



よく見てみるとそれは小さな人だった。

驚きに目を見開いているとその小人は急にしゃべり出した。


「あっ君がこの世界の主だね!少し助けておくれよ!」


突然の話に何が何だか分からずはぁ…と気の抜けた返事をしてしまった。

すると


「良かった!」


そう言って小人は何かを呟いた。

そして私の視界はブラックアウトした。


――――――――――――――――――――――――


目を開けると見知らぬ顔が覗き込んでいた。

驚いて仰け反ると、その少女は笑いながら話し出した。


「さっきぶりだね!それじゃあ早速だけどこの世界の魔王を倒すのを手伝っておくれ!」


世界?魔王?自分は異世界にでも来てしまったのか?もしかして胃痛が原因で死んでしまった?それともこれは夢か?

混乱しながら独り言を呟いていると


「君は死んでなんかいないさ!それにここは異世界でもないよ。だってここは君の体の中だからね!」


完全に訳が分からなくなった自分は異世界じゃなくて胃世界か…と現実逃避気味にサムい考えを及ばせていた。


そうして訳が分からないまま魔王とやらを倒す旅をさせられた。

途中で何度も死にそうになりながらようやく魔王を倒した自分に少女はこう言った。


「ありがとう!とても助かったよ!君のおかげでこの世界は平和になった。きっと君の体の不調も治るんじゃないかな!あ、でも※□〇△◆♪*〒∞Ŷ!」


最後の言葉を聞いた瞬間、また意識がブラックアウトしていった。


――――――――――――――――――――――――


目が覚めると、自分のベッドの上だった。

なんだかやけにリアルな夢だったなと思いながら体を起こす。それに、あの少女は最後なんて言ったのだったか。

ふと気づくとあれほど酷かった胃の痛みが綺麗さっぱり消え去っていた。

理由は分からないが治ったのならいいか。

そう思って過ごすうちに変な夢のことも、胃が痛かった話も次第に忘れていった。


――――――――――――――――――――――――


数年が経ち、今自分はベッドの上で胃痛に悶えている。痛みのあまりむせながら前もこんなことあったような、とどこか冷静な頭で考えていた。

すると口の中から、何かが飛び出してきた。

そしてその何かは起き上がるとこう言った。


「あらァ、あんさんがこの世界の主かェ?えろうすんまへんけど手ェ、貸してくれへん?」

そういうと何か言葉を呟いた。


薄れていく意識の中で数年前の夢を思い出した。

そうだ、あの少女は最後にこう言ったのだ。


「あ、でも、君の世界って少し不安定だからもしかしたら同じことが起こるかもね!多分君の感覚だと数年後ぐらいじゃないかな?」


また、旅が始まる。

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