プロローグ 北方へ。
時は千年前。
北方に勢力拡大していた頃の話。
天幕で勢力拡大の段取りをしていたヘルトと一人の青年が論じていた。
そこに兵士が一人、緊急報告で天幕に入ってきた。
「失礼します! ヘルト様! メラン様。緊急報告です」
「話せ」
「ハッ! 北の方より、軍が動いているという情報あり」
「どこから来るか、わかるか?」
「北海に面して横一列に船影。陸の方から北東千人。北西千人。という当直の見張りからの報告です」
「三方から総攻撃、か」
「あるいは背後から強襲っていう線もあるぞ」
「どうする、メラン?」
ヘルトは中性的な顔立ちの青年、メランに問いかける。
「海上から攻めるにしては船を横一列で攻め込むのは難しい。ここいらの地形はこっちが有利なのは敵だって承知のはずだ」
「だとすれば、囮か」
「ああ、迎え撃たせ、手薄になった北方本部を壊滅させるっていうのが常識だ。陸の方はヘルト。お前が軍を率いてなんとかしてくれ。海の方は俺が受け持つ」
「できるのか?」
ヘルトは海上勢力も並ではないはずだ。
それを、軍を率いてとはいえ、難しいはずだ。
「愚問だな。俺を誰と心得る」
「北方と海上戦においては無敵の力を発揮する男だったな」
忘れていた。メランという男も神の加護を大英雄の一人。
彼の手には蒼き槍が握られ、ヘルトの手には白銀の剣が握られる。
「さあ、行こうじゃないか、メラン」
「ああ、行こう、ヘルト」
それが、千年前、ある海上戦でのことであった。
あれから、千年が経ち、北方を治めるレムア公爵家。
カズの腕につけられているブレスレット。
蒼き玉の中で未だ、眠りについている女性。
「メラン……メラン……貴方は……いったい、どこなの……」
今もなお、かつての主人に想いを馳せ、眠り続けていた。
氷帝レン。
彼女の思いが今、血筋であるカズにどう惹かれていくのか。
ヘルトの魂が転生されたズィルバーと復活したレイン。二人がレンと再会し、どのような変化が起きるか。
北方に新たな嵐が巻き起こす。
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