エピローグ 英雄は悩みに悩み抜く。
――人族として、いや、人として生きていれば、一つや二つは悩むことがある。
“大食らいの悪魔団”と“魔王傭兵団”の連合軍の襲撃から一週間の時が経ち、腕に覚えのある悪党たちはこぞって第二帝都へと攻め入ること四つ目。
死屍累々。倒れ伏す悪党共。倒れ伏す悪党の一人に腰を下ろし、俺は溜息をつく。
「暴れて少しは気が晴れるかと思ったが……そうでもないな」
「ズィルバー。私も同じよ」
と、別の悪党に腰を下ろし、溜息をついてるノウェムが俺と同じことを漏らしている。
「て、テメエら……! よくも、俺たちを……!」
今回の騒動で俺たちのことはあまり知れ渡らなかった。それに関しては問題ない。
情報紙には“大食らいの悪魔団”と“魔王傭兵団”は一時的に手を組み、“残響”のオクタヴィアと激突と書かれている。追記する形で、“ティーターン学園”風紀委員を含めた三つ巴の乱戦と書かれていた。
まあ、事実だが、真実ではない。皇家も事態を完全に把握できていないのだろう。
そもそも、風紀委員の名が上がっても些か、問題がある。学園の評判が少しだけ下がるかもしれんからだ。
「まあ、運が悪かったと思え。悪党として生きるなら、そういうこともあると覚えておくがいい」
「十歳の子供に負けるのもなんだか憐れね」
気絶した悪党共は親衛隊の手に捕まる運命にある。俺の忠告など届いていないのだろう。
子供だと高をくくって名を上げに来る命知らずが多い。悪党や冒険者かぶれだからなのか直情的で考えなしなのも当然かもしれんが、だったら、命の危機くらいは感じとってほしいものだ。
自慢げに名乗り上げていたが、口ほどにもなさ過ぎて、既に俺の記憶にはない。これが今の平均かもしれんな。
そういう意味では神代の俺たち、大英雄は化物じみてるな。神代の一兵卒の兵士でも、この時代の悪党共には負けん。そういう意味では時代が変わった。いや、衰えたと認識してしまう。
「歯ごたえがなさすぎる」
「今までの相手が実力者揃いだったからね」
第二帝都に迷惑をかけないように外壁の外で戦った。既に親衛隊に捕らえられ、連行されていく悪党共。俺とノウェムは立ち上がり、第二帝都へと足を向ける。
心がモヤモヤするから気分転換に第二帝都の外に出て、考え事しながら散歩していた。
偶然、ノウェムと落ち合い、さらに、偶然に悪童共をかち合った。でも、金もろくすっぽ持っていない小物だった。
よく名を上げに来たものだと感心するぐらいの弱さだ。どちらかといえば、地下迷宮で“アステリオン”だの“獅子”だのと怪物共と戦うのがおかしい方だ。
親衛隊支部と正当防衛とはいえ、抗争したのは自業自得だが、“獅子”や“女王”、“魔王”はノウェムたち関連で恨み言を一つは言いたくなる。
でも、ノウェムたちに言うのはお門違いなのは分かっているので、余計に気が滅入っている。さらに、アキレスの登場。あの男は死んだというのを俺は知ってる。なにしろ、あいつの最後はリヒトから聞いたからだ。
あんな化物を復活させる輩なんて、普通に分かってしまうからこそ、頭が痛いかぎりだ。
ノウェムは別の問題で頭が痛くしていた。
「……ロレックスか」
「君の母が言っていた名前のことか」
数年ほど前まで暗躍していた帝国指名手配らしい。
らしい。かというと、皇家や親衛隊が彼らの情報のことごとくを揉み消していたためにあまり情報が出回っていないからだ。それでも人々の間でまことしやかに“教団”という存在が噂されている。壊滅したと報じられたが、団員の多くは散り散りになったと聞く。
あまりの残虐、冷酷な所業は瞬く間に国中に響き渡り、情報誌を使わずに、その脅威を国中に知らしめた。
“悪の代名詞”とまで言われるほど組織だったそうだ。
聞いているだけで気が滅入るし、怒りが積もるというものだ。
ノウェムも顔も知らない父のことを聞く時の表情がつらいものだ。
全く、とんだ親だこと。生まれてくる子供に罪がないとは言え、親の悪名のせいで、つらい人生を送られるなんざ。親としては最低だな。
暗澹たる気持ちを抱えながら、学園にある風紀委員本部へと帰路につく。
「気分は晴れたか? ノウェム?」
って聞いたところで晴れるわけないか。
「あまり、気分が晴れない。頭の痛くなることばかり」
「それだけ余裕があるというものだ。まあ、しばらくはゆっくりできる。今のうちに悩めるだけ悩んでおきな」
忙しいときは悩んでる暇なんざないからな。悩めるのは、それだけ余裕があるという証拠だ。
オクタヴィアっていう女の話に信憑性がないけど、話す相手は限定した方がいい。
どっかで聞いてる可能性があるからな。気をつけるに越したことがない。
「ズィルバーだって、悩みがあるみたいじゃない」
「まあな」
俺も俺で悩んでいる。
かつての仇敵、アキレスが復活したとはいえ、完全じゃない。なにしろ、千年前に死んだ男だ。
あいつを殺すとなれば、それ相応の覚悟をしないといけない気がする。
それに、あいつを奴らの呪縛から解放させてあげたいという思いがある。
「先日、戦った男のこと?」
「ああ、そうだ」
「何者なの? “魔王”とも呼ばれているカイが意図も容易く倒し、貴方と互角に戦える相手なんてそうはいないわよ」
「ほぅ~。ノウェムは俺のことを高く評価するのか?」
意外だなって思った。自分より強いと思っていたのに。
「“獅子”を返り討ちにして、有耶無耶になったとはいえ、“女王”と“魔王”と戦い抜き、最後は、あんな怪物と戦え抜いた時点で次元が違うと実感しているよ」
「そうか……」
そこまで言われると照れくさくなる。
「でも、いつかは追い抜くから。覚悟しておきなさい」
「その向上心があるだけマシさ。あと、あの時、戦った男はお前でも知っている大英雄だ」
「大英雄?」
「アキレス・J・オデュッセイア。それが、あいつの名前だ」
「ちょっと、その名前!?」
「ああ。[戦神ヘルト]と互角に渡り合えたとされる大英雄だ」
「そうじゃなくて、その名前、ヤマトやムサシ、コジロウと同じ名前じゃない!?」
そっちか。まあ、その理由も分かっていた。
「多かれ、少なかれ。三人はアキレスの子孫だろう。アキレスの恐ろしさは速さだけじゃない。いかなる攻撃を弾く鎧にある」
「鎧? あの軽鎧が?」
「いや、正確に言うなら、皮膚だ」
「皮膚? 皮膚がどうして、鎧なの?」
ふむ。どうやら、現代では神の力が知られていないようだな。
「アキレスは生まれて間もなく、その身を神聖なる炎を浴びて、不死身の身体を得たんだ」
「不死身って……ただの炎に、そんな効果があると思えない」
「確かに、普通の炎だったらな。でも、先も言ったとおり、神聖なる炎は現代の魔法を凌駕する力が秘めている」
「現代の魔法を凌駕する力?」
「そうだ。精霊もしかり。精霊は現代の魔法を凌駕する力を持っている」
と、言うよりも現代の魔法はかなり劣化しているとも言える。
「特に、千年前、この国が王国と呼ばれていた頃、人族の身でありながら、人智を超えた化物が存在した」
俺しかり。アキレスしかり。伝説を生きた者たち皆、人智を超える力を得ていた。
「アキレスは神聖なる炎を浴びたことである弱点を除けば、いかなる攻撃も寄せ付けない無敵の英雄となった」
「弱点?」
「あいつの名前は?」
「アキレス……あっ、そうか」
やはり、ノウェムは優秀だな。
「そう、アキレス腱……踵だ。でも、その弱点も、あの速さの前では無意味だけどな」
「じゃあ、どう戦えば」
「可笑しなことを言う、“静の闘気”を使えばいい。“静の闘気”は極めれば、先読みができる」
そうすれば、アキレスの動きにも対応ができるというもの。
「もっとも、それ相応の修練が必要だけどな」
と、口にする。
他にもあるが、なにより、いかなる攻撃を弾く鎧というのは極めて厄介だ。
あんな化物を相手にできるのは俺ぐらいだろう。
同じ、神の加護を持っている者ではないと――。
俺はアキレスに打ち勝つ方法はそれしかないと胸中で口にした。
俺とノウェムが本部に戻ってきたら、部屋で休むと言い残し、俺は自室へと戻っていった。
その夜。
風紀委員本部の屋上にいながら、俺は夜空に浮かぶ星々を眺めていた。
「星はいつになっても綺麗だな」
「なに、しているの?」
と、そこにレインが小鳥から人の姿に戻り、俺の隣へ寄ってくる。
「いや、星を眺めていただけだ」
「そんな顔には見えないわよ」
指摘されてしまう。
「なに、思い詰めた顔をしているの」
そこまで見抜かれたか。やれやれ、俺はやっぱり、顔に出やすいな。
「先日、戦ったアキレスのことで、ちょっとな」
「ああ、彼ね。まさか、生きてたのね」
「生きてた、では語弊があるな。正確に言うなら、復活した、だ」
「どういうこと?」
「レインは知らないけど、アキレスは、ある国との戦争で死んだ。この事実は紛れもない事実だ。俺もアキレスも死んだのか、とやきもきしていた」
「でも、貴方……先日、あの男に思いっきり……」
「確かに俺はあいつの戦い方を嫌いで尊重できなかった。戦場で笑う者は敵への侮蔑に繋がることもある。でも、“陽気な奴ほど救われる”っていうのがあいつの口だった」
「昔、リヒトから聞いたことがあるの。貴方とアキレスが三日三晩の死闘を繰り広げても勝敗がつかなかった、って。それって本当?」
「本当だ。当時、俺とアキレスは戦線で暴れる指揮官だった。普通だったら、頭が潰れれば、軍は崩壊する。でも、俺だけはそれでも生き残り続けた」
俺は当時のことを鮮明に思いだす。
「そもそも、アキレスは誰かに付き従うような男じゃない。よくて、一匹狼のような怪物だ。でも、お互いにとって、切り札と言われてたのは確かだ」
今でも忘れない、リヒトから言われた言葉。
『ヘルト。もし、アキレスと戦うことになれば、お前でしか奴を抑えることはできん』
と。今でもリヒトの強い願望が思いだされる。
「なんで、アキレスが、あんなに硬いのか知らない。でも、貴方もリヒトもレイも異質とも思える力を持っていた」
ああ、俺もレイもひとえに加護を持っていた。
ある意味、異質とも言われてもおかしくない。あの時代は、そういった人間が伝説を残していった。
虚しいことにな。
「兎にも角にも、アキレスは、ある国との戦争で弱点と心臓を射貫かれても敵を殲滅するまで戦い続け死んだ。俺の耳にはそう語られた。でも、それは情報紙とかがない時代。全て、噂や口伝で知られたこと。情報がところどころで変わっていく時代でもあった」
でも、俺たちにはレイがいた。彼女の目で見たものは全て、真実として捉え、俺たちに教えられた。
少なくとも、俺はあいつと決着がつけられなかったってわけだ。
でも――。
「でも、今度こそは俺がアキレスを斬る」
「できるの?」
「やるしかない。この時代であいつに傷をつけれる敵はいない」
「必然的に貴方しかできないってわけね」
「ああ」
でも、今は。
「今は大人しくしていよう。ここ立て続けに大物との連戦だったんだ。平穏に過ごしてもいい気がするからな」
「ここしばらく、戦い続けてたんだから、いいんじゃない」
レインも俺と同じで平穏に過ごしたいようだ。
一週間後。
風紀委員本部、いや、白銀の黄昏に訪問客が来た。
親衛隊だ。
「……俺たちになんの用があるのか?」
「私が知るわけないでしょう。親衛隊が部隊を引き連れてきてるし……」
またぞろ厄介事か、と呟く。
ティアは無言でコクリと頷き、二人同時に肩を竦めた。
親衛隊から呼び出しを受けている。
今更だが、俺たちは俗に言う“問題児”に近い。警戒はするが……今、事を構える気がないと思う。心配の必要はないだろう。
「それで親衛隊のクレト中将とマヒロ准将は部下を連れて、今度はなんの用ですか」
予期せぬ客に辟易しながら俺は一人で風紀委員本部の外で出る。
当然のように警戒した部下たちからは剣が抜ける体勢をするが、俺は一切気にすることなく、俺の前に対面するクレトとマヒロに視線を送る。
二人も武装こそしているが、戦意があるように感じられず、少々やれやれ感が滲み出ていた。
これだけで俺も面倒事の予感が過ぎる。
「久しぶりだな。クレト中将とマヒロ准将。この度はなに用でここに来たのか聞いても?」
「ああ、久しぶりだな。とは言っても、数日前のことだが」
苦笑するクレトは「お前に話があってきた」と言った。
眉を顰めて訝しがる俺に、マヒロが説明してくれる。
「“女王”と“魔王”の連合軍を相手に生還した。それだけでも十分、すごいことなの。それと度重なる戦いで第二帝都の経済が落ちてるし。食糧不足を懸念されていた」
「“獅子”との戦いから今日まで食糧の流通がストップしたからな……それでこれを機に売りさばこうと?」
「皇帝陛下からは費用負担は皇家が出すって言ってたわ」
まあ、食糧に関しては俺も懸念していたし。街の人や他の生徒にも迷惑をかけたから宝物庫の金銀をはたいて、食糧として寄付する予定だったからな。
「……画一的な物か? そもそも、食糧の配給なのか?」
「“栄養が偏らないといけないから”という理由で多種多様な食糧になった。食材をそのまま配るつもりとのことだ」
「皇帝陛下の判断とは言え、学園にも話していないな」
「ああ、皇帝陛下の独断だ」
関わるべきじゃないな。こういうのはティアやエリザベス殿下に任せよう、と即座に判断し、「俺に関係ないなら帰る」と踵を返した。
でも、クレトがそれを呼び止める。
「お前を呼んだのは別件だ。“残響”のオクタヴィアと謎の人物が現れたと聞き、情報をまとめるようにと言われている」
「そっちが本命だな。まあ、そうだな。俺たちに関係がありそうならそっちだよな」
ティアの父、皇帝が下した件と俺が呼んだ件は別のようだ。
やっかい事に関わらなくてよかったと喜ぶべきか、親衛隊に直接“情報を渡せ”と言われるようになったのを嘆くべきか、はたまた、その両方か。
クレトの部下と思われる女性が手にメモを持って質問する書き取る体勢に入っている。
そういえば、ここにいるはずのメンバーがいない。
「そういえば、グレンとシンはどうしたんだ?」
「あの二人は支部で激務だ」
「この数日間、荒れに荒れまくったから。非難殺到してね。支部の親衛隊、皆が対応に追われているの」
俺も思わず、同情してしまう。
確かに、あれだけのことがあれば、非難殺到するわな。
肩を竦めた後、“オクタヴィアっていう女はリンネンと戦って帰った”と告げる。
ノウェムと話していた内容は教えるつもりもない。ある程度、誤魔化した方がいいだろうと考えた。
アキレスに関しても“カイを倒して帰っていった”と言っておく。俺と戦ったことやいつの時代の人間だったのかを知られてはこっちが困るからな。
「ふむ……事前に聞いていた情報と変わらないな」
「バカ正直に話すバカがどこにおる?」
「俺の見立てでは、ノウェムっていう娘とオクタヴィアに特筆すべき感情がないはずだ。彼女も実の親であろうと殺すことができるタイプだろうと思っている」
「……俺の部下に変な言いがかりを付けるな」
これには文句を言わせてもらうぞ。
でも、クレトの観察力は大したものだ。実力もティアやジノたちとやり合えるだろう。
俺が戦えば負けはしないけど、食らいついてくるのは間違えないと感じていた。
「どこを拠点にしているのか言っていなかったのか? 今回、戦った目的とか?」
「さあな。そこまでは知らないよ。そこまで言葉を交わしていない」
「……そうか。ならば、本部にはそう報告しておこう」
「用件はそれだけか?」
「ああ、手間を取らせたな……感謝する」
「…………」
クレトが感謝する? なぜ、感謝だ。俺は思わず、呆気にとられた。
「俺も焼きが回ったのか。こんな子供に感謝なんざなどと言ったことが不思議だと言わんばかりの顔だな」
「俺の見立てでも人に感謝しようとする男には見えないが」
「グレンやシンからよく言われている」
「でも、仕事はきっちりやるタイプか」
なんか、妙な好感が持てる。
「俺は俺の善で動いている。お前をまだ悪と断じていない」
「そいつは僥倖だな。キミは中将の中でも上位に位置する。敵に回したくない相手だ」
「直接戦っていないが、お前が強いのは俺でも分かってる。いつかは手合わせしたいと思っている――それと、俺は中将の中でも真ん中あたりだ」
なるほど。
“獅子盗賊団”とやり合った際、陣頭指揮を執っていたが、確固たる実力を持っていたわけか。
“教団”というのが壊滅以降、悪は強大化しているのに対し、親衛隊も戦力を求めているというわけか。
大変だな、と俺は他人事のように考える。いや、全く以て他人事ではないんだが。
階級で判断するほど愚かじゃない。実質、俺が前に相手したグレンなんて准将か、少将クラスはある。
「でも、皇家が俺たちに手厚いと余所から口撃されないのか?」
「俺も同じ考えだが、お前が五大公爵家の一つ、ファーレン公爵家の跡取りとなれば、誰もが口を閉ざした」
「どうして?」
「“格が違うからだ”そうだ」
格が違う? 意味が分からん、首をかしげる。
「五大公爵家は千年の歴史を持つ名家だ。貴族の中でも格が違う。相手にすること自体が烏滸がましいのだよ」
「なるほど」
確かに俺やメランたちの子孫の家だと手が出せないよな。
俺は顎に手を添えて納得する。
「ほかに用事がないのなら、俺は戻る」
「ああ、手間を取らせた――そうだ。お前たちはこれから学業に勤しむのか?」
「当たり前だ。俺たちは学園の生徒だ。学業に勤しむのが当然だろう」
「確かに、その通りだな。親衛隊としてもお前たちの所在と行動を把握しておいた方がいろいろ楽でな」
「喧嘩とかしたいのなら、余所でやれ」
「言われずとも、俺とマヒロは明日、明後日には本部に戻る。ここ最近、大物悪党たちが次々と動きを見せ始めたからな。しばらくはお前たちと関わる余裕はない」
“獅子”と“女王”と“魔王”が第二帝都に来たせいで、帝国中の悪党が動き始めた。
悪党が動けば、民たちに被害を受ける以上、親衛隊としてもこれを無視できないわけだ。
しかも、“教団”の幹部の残党が生きていたとなれば、俺たちに裂く戦力などないわけだ。
「“残響”の足取りを探す必要もある。俺とマヒロも警邏に当たりたいのだが、皇家がな……」
「そっちはティアとエリザベス殿下に任せるよ」
その方が、かってが利く。
「そう言ってもらえると助かる」
皇家の命令とはいえ、動く親衛隊も可哀想だなと俺は思うが、お門違いだと思い、口にしなかった。
――そうして、数ヶ月後。
俺たちの狩ろうと多くの悪党が第二帝都に押し寄せてきたが、全員返り討ちにして、第二帝都、“ティーターン学園”に僅かな平穏が訪れた。
当然、俺、ティア、ニナ、ジノ、ナルスリー、シューテルは選択学科の授業を受け、好成績で進級する。
第二帝都と学園に迷惑かけた責任として、学園内を清掃、第二帝都の外壁の修繕費を提供した。
その中で、世界中を轟かせたニュースが情報紙に記載されていた。
――“獅子盗賊団”、“大食らいの悪魔団”、“魔王傭兵団”を使って、俺たち白銀の黄昏を潰そうと“エドモンド殿下”が手引きしたっていう容疑がかけられ、彼に加担する貴族を含め、謹慎処分を受けられたと記載されていた。
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