英雄は姉が病気を患っているのを知る。
卒論を完成すれば、大卒できる。
だけど、面倒くさい。
ヒルデと対面する席に座るエルダ。彼女に話しかける父親のアーヴリル。
「エルダ。身体の方は大丈夫か?」
「はい。お父様。今のところは容態は安定しました」
「そうか」
ん? エルダ姉さんの顔が沈痛な表情だ。しかも、父親も冴えない表情だ。何かあるな。後で、ルキウスに聞いてみるとしよう。
そういえば、エルダ姉さんの配膳される料理が俺や父親、母親、ヒルデ姉さんとは違う。消化しやすい料理ばかりだ。肌も青白い。いや、肌の色は生まれつきなら良いが、彼処まで青白いとなれば病気としか思えないな。どういった病気だ。容態が安定したということは病弱か虚弱のどちらかだろう。あるいは、それ以外に問題があるのか、だな。そういった意味を込めて、後で、ルキウスに聞いてみるとしよう。
夕食を食べている最中、アーヴリルがエルダに仕えている執事に声をかける。
「エルダの容態はどうだ?」
「エルダ様の容態は比較的安定しています。ですが、いつ、容態が悪化するのか分かりません」
「……そうか」
やはり、冴えない表情だ。それに、エルダ姉さんもからげんきだ。
ん? そういえば、エルダ姉さんの瞳の色。藍色と蒼色の瞳だ。ヒルデ姉さんは藍色の瞳なのになんでだろう。やっぱり、後で、ルキウスに聞いてみよう。
夕食を食べ終えたら、朝の来た道を思いだし辿って自室に戻ってきた。自室に入ると、俺はベッドに腰を下ろして、今日、エルダ姉さんの病気のことを考えはじめた。
俺の予想じゃあ、エルダ姉さんの病気というのは、魔力の流れが不安定によるものだと思う。英雄だった頃、よく俺が陥っていたのとよく似ている。
人間の体内に流れている魔力循環は男女で僅かに違う。これは、性転換の異能体質を持つ俺だから分かることだ。最初の頃は、男から女に、女から男になった時の反動で、体調が悪くなったのを憶えている。俺は自己魔力調整を体得するまで、神々や精霊たちがケアしてくれたのを今でも憶えている。もしや、エルダ姉さんも魔力循環系が正常じゃないから体調が悪いのかもな。
俺はエルダ姉さんの病気、体調が悪い原因を突き詰めてると、不意にドクンと胸が、心臓が、鼓動が高鳴った。
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