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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
問題児騒乱
89/302

英雄。戦闘準備に入る。

 部下たちからの報告を受け、俺は盛大に顔を顰めつつ、風紀委員本部へと向かっている。

「クソッ」

 なんで、このタイミングで動くんだ。こっちは地盤固め中だってのに。

 無性にイラつくぜ。ぶっ飛ばさないと俺の気を収まらん。

 イライラ感を募らせるも俺は堪える。

 ここで発散するのはお門違いなのは分かってるからだ。だからこそ、ぶつけるのは敵対するときのみ。それだけでいい。


 俺はイライラで不機嫌になりつつも本部に戻る。

 本部に戻れば、ビャクたちがティア殿下の指導の下、事務仕事に四苦八苦していた。

 そこに俺が帰れば、いやでも気づく。しかも、不機嫌そうに帰ってこれば、言わずもがなだ。

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

「……怒ってる?」

「怒ってない」

「怒ってるじゃない。なにかあったの?」

 ハァ~。やはり、彼女には俺の気持ちが理解できるか。

「ハクリュウたちから聞いてるか?」

「一応は、ね」

「あいつらは?」

「皆、宝物庫前に集合しているわ」

「分かった」

 皆の居場所を知り、俺は宝物庫へ歩きだす。

「それとティア」

 一度、足を止め、ティア殿下に告げる。

「なに?」

「ビャクたちも宝物庫前に集合させろ。緊急だが、新メンバー(全員)を強くさせる」

「強くさせる方法があるの?」

「あるにはある。ただし……」

 俺は振り返り、哀愁のこもった目で答える。

「それ相応の覚悟が必要だがな」

 俺の声質と目で彼女は理解した。

 おそらく、俺が教える方法はなにかを壊すに違いない。と。

「ティアは生徒会に、ニナたちは学園の講師たちに第二帝都で起きたことを伝えろ。終わり次第、各々の判断で動け」

「了解」

 ティア殿下は決意のこもった顔で頷き、すぐさま、行動に移る。

 彼女を見届けた後、俺は背を向けて、宝物庫へと歩きだす。


 宝物庫前まで来れば、部下全員が集合し、俺が来るのを待っていた。

「遅くない?」

 遅れてきたことに文句を言ってくるメイア。

「悪いな。出入口でティアと話していた」

 俺は歩きながら、質問に答え、宝物庫の扉まで来る。扉に背を向けて、俺は皆に声を飛ばす。

「既に知ってると思うが……どうやら、俺たちを標的(ターゲット)にしている輩がいる。よって、緊急だが、キミたちの基礎能力の向上に取りかかる」

「基礎能力の……」

「……向上、ね」

 メイアとギリスがなぜ、今になって基礎能力の向上を口にしたのか眉を顰める。

「簡単だ。俺たちに足りないのは実戦経験。基礎能力。そして、覚悟」

「覚悟……?」

「なんの覚悟?」

殺す覚悟(・・・・)。誰かを守るには誰かを斬り捨てないといけない。そのために俺たちに必要なのが“殺す覚悟”」

「殺す……覚悟……」

 俺が提示された必要事項。それを部下たちは一言一句耳に入れる。

「確かに俺たちは強い。十歳の子供にしては、だ。だけど、大人から見れば、それだけの印象しか思われていない」

「た、たしかに……」

「おそらく、モンドス先生から見れば、俺たちは見所のある子供(・・・・・・・)でしかない」

 俺は腕を組んで、部下たちを見回す。

「俺も含めて、全員。才能は無視できない。モンドス先生や冒険者、親衛隊はそこだけを認める。けど、それしかない。だからこそ、俺たちは強くなるほかない」

 速さはある。だが、実力者には及ばない。

 力もある。だが、これも実力者には及ばない。

 才能もある。だが、それを活かせるだけの経験が足りない。

 そして、最後に剣術、体術という技術がない。だけど、実力者は技術こそが強さの根幹だと知っている。

 それぞれに秘められた個性がある。だけど、それは初見のみ。以降はある程度、対策が取れる。

 つまり――

「今の俺たちでは、これからの戦いでは一番重要になる要素。それで子供の俺たちにとって、今、鍛えないといけない部分」

 とは言っても、それはこの戦いに参加せずに無理に指摘しなかったこと。

 これまでのことを考えると、十歳にしては今でも十分強い。

 だが、これからの相手は足りなさすぎる。未熟すぎるのだ。

 今の俺でも鍛えないといけないと思っている。それを分かっているのか、って言われたら、分からないのが、今のハクリュウたち(部下)の状況だ。

「今、必要なのは基礎能力。武術は独学で体得しろ。誰かに習うよりも見て覚えろ。真似て覚えろ」

 俺は部下全員に“技術は自分でなんとかしろ”と言う。扉の方に振り向き、扉を開ける。

 宝物庫にある財宝に変化ない。あるとすれば、金貨や宝石が減っているだけだ。

 部下たちは安置されている金銀財宝に目を輝かせている中、俺は「ついて来い」とだけ告げる。

 ハクリュウたち(彼ら)は言葉に従い、俺に追従する。その様は親ガモについて来る小ガモだな。

 宝物庫の奥、祭壇。祭壇から左のヴェールを見る。

 左のヴェールに歩み寄り、「姿を見せよ」と声を発する。

 声を発した途端、ヴェールが消え去り、目の前に広がるだだっ広い草原。


 部下の皆は、ヴェールが消えた途端、広い草原が見て驚愕し、目を見開く。

 俺は草原に指をさし、部下たちに

「入れ」

 と、言い放つ。

「え?」

 キョトンとする部下たち。俺はただ、“入れ”と言っただけだ。

「つべこべ言わずにさっさと入らんか!!」

「は、はい!」

 怒号を飛ばし、部下全員を草原へと送り込む。

 駆け足に草原へと駆け込む部下たち。

 駆け込んだ途端、ゲホッ、ゴホッと咳き込み、吐瀉物を出して、倒れ込む。

「な、なんだ……これは……」

「息が苦しい……」

「……気持ち悪い」

 顔が真っ青になり、真面に呼吸していない。ふむ。このままでは死ぬな。だが、過酷な環境の中で強くならなければ、この先、勝てないだろう。

 俺は出入口の境に立ち、声を出す。

「ここがキミたちの修行場だ。今日から二日(・・)。ここで修行しろ。無断で出ることは許さん。いいな? 自分で戦い方を見出せ。できなかったらそこまでだ、と思え!!」

 俺はグロッキーになった部下たちに言い放って、「姿を隠せ」と言い放ち、出入口をヴェールで隠された。

 俺は背に向け、宝物庫をあとにする。

「さて、今日から二日間。生きてられるかね。こればっかりは賭けだな。ハクリュウたち(あいつら)がどこまで強くなるかにかかっている」

 このまま成長せず、ただ無為に時を過ごしたのなら、その時、見限ることにしよう。それでも、あいつらが這い上がってきたときは手を差し伸べ、掬ってやろう。

 それぐらいの時間はあるはずだ。

 俺はクスッと微笑んだ。

 おっと、いかんな。今は時間がないんだ。




 ズィルバー()が宝物庫に出た直後、宝物庫前にはティア殿下とレイン。そして、生徒会長のエリザベス殿下がいた。

 彼女たちの顔を見れば、心境など察せる。

 俺は足を止めずにティア殿下に問う。

「ティア。現状は?」

「今、親衛隊が学園に避難するよう呼びかけがあったわ」

「早いな。向こうも向こうで最善を尽くすという考え、か」

「おそらくね。学園は授業を一時取りやめ。学生寮で現状待機を命じられたわ」

 学園の動きと親衛隊の動きを聞き、俺はここから導きだされる最善策を講じる。


 皇族も状況を把握している。にもかかわらず、出されているのは避難勧告と現状待機の命令のみ。

 しかも、狙いは俺たちだ。

 と、すれば。俺は第三者視点で自分らの動きを推察する。

 周りは俺たちと“獅子盗賊団”との衝突で共倒れを狙っている。いや、むしろ、ここで“獅子”を倒せばいいと思っている。

 それじゃあ、虫が良すぎる。ここは親衛隊にも尻ぬぐいをしてもらわないと。

 顎に手を当てて考えている俺を見るティア殿下。彼女はハアと息をつき、エリザベス殿下に話しだす。

「リズ姉様。ここは私たちに任せて。姉様は生徒たちを元気づけてあげて」

「でも、それじゃあ……」

「分かってる。子供の私たちに、一体なにができるって、話よ」

「だったら――」

「それでも、私は皇族。そして、ズィルバーは貴族。有事の際、民を守らずして誰が民を守るって言うの」

 既に覚悟はできているティア殿下。ここで罵倒なり、叱咤なりすれば、それこそ、彼女の覚悟を侮辱することになる。

 ハァ~ッと息を吐き、エリザベス殿下はこう申せられた。

「ズィルバーくん」

「はい」

 俺は一度、立ち止まり、話に耳を傾ける。

「妹のことは頼んだよ」

「分かってます」

 なにを今更、そんなことを聞くんですか? 意味が分かりません。

 俺は内心、疑問符を浮かべるもすぐに払拭し、再び、歩きだした。


 俺はその足で鍛錬部屋へ向かった。ティア殿下もエリザベス殿下と一緒に歩き始めた。

「それにしても、親衛隊も今は“獅子”と“魔王”、“女王”の対処で忙しいし。今のうちにやるべきことを済ませたいのに」

「裏の大物がなんでこんなところに来るのかはさっぱり(・・・・)だけど、私としては嫌な予感がしっぱなしよ」

「杞憂ね、と笑い飛ばしたいところよ」

 “ライヒ大帝国”において、帝国指名手配されている三人が急に第二帝都へ向かっているのに、それなりの理由があるはずだ、とエリザベス殿下は言う。

 もうぶつかり合うことしかないできないのね、とティア殿下は疲れた顔をする。

 ティア殿下も彼らの狙いが自分たちにあるのをとっくの昔に気づいていた。




 広い草原部屋にハクリュウたち(部下)を送ってから二日が過ぎた。

 この二日間。各自の準備にてんやわんやで、先んじて始末書を書きためていた。道中、嵐に遭うこともなく、業務は順調に進んだ。

 そして、今日が二日目。

 部下の特訓が終わる。

 なので、迎えに行く。

「本当に宝物庫に修行場があるのか?」

「前に来たとき、あった」

「いや、宝物庫にそんな仕掛けがあったとは思えねぇ」

「じゃあ、どうやって……」

「それを確認するために()と一緒にいるんでしょう?」

 ニヤッと含み笑いをしてくるティア殿下。

「全く」

 俺はハアと息をつき、ついて来るティア殿下たちを目線だけで見る。

「今から見せる光景を見ても、俺を責めるなよ。これは仕方のないこと。あいつらを強くさせるにはこうするほかなかった」

「分かってる。新メンバー(あいつら)の実力はノウェム共以下。だったら、強くさせるしかねぇのは分かってる」

「ただし、やり方かな。やり方次第で私は怒るよ」

 ナルスリーは俺がしたことに怒りを覚えてしまうかもしれん。だが、それでも飛躍的に成長させるにはこう方法しかなかったとしか言えない。

「まあ、“毒を食らわば皿まで”。全ての責任は俺が取る。もし、あいつらが強くなったのなら、手を差し伸べる」

「ダメだったら?」

「その場で退会させ、処断する」

 俺の考えを聞き、フッと鼻で笑うシューテル。

「僕が言うのもなんだけど……随分と手厳しいだね」

「仕方ないだろう。本来なら、時間をかけて強くさせよう、って思ったところに割り込みが来たんだ。こうする他がなかったとしか言えない」

「一理あるけど、失敗したら、一気に戦力を失うよ」

「だからこそ、賭けた。ハクリュウたち(あいつら)の成長することを」

 賽は投げられた。あとは彼らの頑張り次第。

 俺は彼らの成長を信じて、宝物庫に入る。


 宝物庫の最奥、祭壇がある場所まで来た。

 祭壇には台座がある。ティア殿下たちが気にするのは壁にかかっているヴェール。

 なぜ、こんなところにヴェールがあるのか気になるようだ。

「へぇ~。宝物庫に祭壇があるとは思わなかったぜ」

「同じく」

「あっても不思議じゃないと思っていたけど」

「ええ、一番に気になるのは」

 ティア殿下たち五人が気にするのは壁にかかっているヴェールである。

「祭壇の飾り付け。と言えば、納得するけど」

「不似合いなのよね」

 ティア殿下は飾り付けなら納得するが、この場所にあっている気がしない。と言及する。

 それはナルスリーも同じであった。

 そこまで気づけたのなら、及第点だ。

「ああ、お察しの通り。このヴェールは特殊な細工(・・・・・)が施されている」

「特殊な細工?」

「なんの細工だ」

 訊ねてくるジノとシューテル。

 俺は答えるまでもなく、台座から正面ではなく、左側のヴェールの方に歩きだし、「姿を見せよ」と声を発する。

 俺の声に呼応するかのようにヴェールが消えていく。

 消えたヴェールの先に見えたものは広大な草原だった。


 そして、ティア殿下たちは目にした。

 草原に倒れ伏すハクリュウ(部下)たちを。

「おぉ~」

 俺も若干、腰が抜かす。

 こいつはビックリ。だけど、僅かに漂う血の臭い。服がボロボロ。髪の毛もボサボサ。なにより、僅かに滲み出る闘気(・・)

 他にも気になる点はあるけども、一つだけ言えるのは。

「生きてる、よな」

「なに、言葉を詰まらせるの」

「いや~、まさか、ここまでになるとは思わなかったからな」

「オメエが放り込んだんだろうが!!」

「まあ、そうだけど……」

 頬に流れる汗がタラリと流れ落ちる。

「ひとまず、起こすか」

「そ、そうね」

「うん」

 俺たちは倒れ伏す部下を助けることにした。

 おっと、言い忘れてた。

「一つだけ言っておく。広大な草原は外界と違い、魔力濃度が非常に濃い」

「魔力濃度が濃い?」

「わかりやすく言うなら、山の頂付近で鍛錬している感じ、かな」

 俺の例えがわかりやすかったかは知らないが、それだけでティア殿下たちは分かってしまう。

「要するに局地的な環境ってところね」

 俺と同じ子供なのに、よくそんなことを知っているな、ティア殿下。

 あれ? そういう意味では俺も子供だよな? あれ?

 俺は変なところで首をかしげる。


「まあ、とりあえず、助けるか」

 と、俺たちは草原へと入る。

 草原へと入った際、肌から感じるヌメッとした感触。口や鼻から入る外在魔力(マナ)濃度。気分がすこぶる落ち着かなくなる。

 それでも、身体に慣れたから問題ないけど、ティア殿下たちは大丈夫か? と、俺は磯路に目線を向ければ、彼らはなにごともなくついて来ている。

「おぉ~。順応早いな」

 って言うも若干、汗を流してる。相当身体に無茶をしているのは見てとれるな。

 それに俺の言葉が聞こえているのかすら分からない。ここは聞こえていないと判断して助けに入る。


 倒れ伏す部下を肩に担いで外に運び込む。

 台座付近に下ろして、次々と運んでいく。全員を運び終えたところで俺たちも草原を出る。

 出てすぐさま、俺は出入口に「姿を隠せ」と声を発した。

 俺の声に呼応するかのようにヴェールが出現し、出入口を隠す。

「これでよし」

 フゥ~ッと行きをついた後、俺は豪華な椅子に腰を下ろす。

 ティア殿下たちにも椅子に座るよう促し、彼らに椅子に腰を下ろす。

 ハァ~ッと盛大に息を吐く。

「やっぱ、慣れないわ。あそこは」

 嫌みを言いつつ、ついでにリヒトの悪戯には変なところで付き合いきれない。と盛大に文句を言う。

「慣れる、慣れないの問題じゃない」

「なんだ、あの部屋は!? とても特訓できる場所じゃねぇ!?」

「どうみても、未開地よ。あれほどの魔力濃度が濃い場所は初めてよ」

「僕たちはなんとか耐えれたけど……」

「あそこを一時間以上いたら、身体に何らかの影響を及ぼしそうね」

 ティア殿下たちはいろいろと広大な草原への暴言、嫌みを吐く。

「そう言うな。あれはあれでいいところもある」

「どこがァ!?」

「あんな場所、いいところなんてねぇだろ」

 俺の物言いに皆からの罵詈雑言。心に来るから止めてくれ。

 俺は心の中でシクシクと泣いてるとティア殿下が

「なに、心の中で泣いてるの? 泣きたいのは私たちも一緒になに、悲しんだぶりをしているの?」

「…………」

 うぐっ!? 気づいておられたか。しかも、辛辣なお言葉。余計に痛むな。

 まあいい。

 コホンと咳払いしてから俺は言葉を述べる。

「確かに、あの部屋は空気中の魔力濃度が非常に濃い。人体に多大なる悪影響を及ぼすだろうのが一般的な捉え方だ。だけど、俺は濃い魔力を浴びることで身体を強くさせることができるかもしれないと思っている」

「あの部屋で強くなれる? どうやって?」

「それよりも強くなれるの?」

 ニナとナルスリーは広大な草原(あの部屋)で本当に強くなれるのかに疑問が生じる。

「ああ、強くなれる」

 俺は“間違えない”と公言する。それはなぜか。

「俺が身を以て、あの部屋で修行したからだ」

 赤裸々に語る。

 あの部屋がどのような場所なのか。誰が創り上げたのか。中はどのような仕組みなのかを全て、話した。

 俺が話したことを聞いて、ティア殿下は「う~ん」と頭を悩ませる。

「恐ろしい部屋だなぁ~」

「しかも、初代皇帝陛下が悪戯半分で創りあげるなんていいの?」

「僕としてはあの部屋の使用はズィルバーくんかティア殿下に一任すべきだと思う。僕たちには手に負えないよ」

 シューテルとナルスリーは広大な草原(あの部屋)を危険な部屋だと認識し、ジノは部屋の一任を俺とティア殿下に任せようと提言する。

「私もジノの意見に賛成ね。委員長、副委員長に一任すれば、部下たちの無断使用を抑えることができると思う」

 ニナもジノと同じ意見を口にする。

 彼らの話を聞き、ティア殿下は、ようやくだが、考えをまとめた。

「そうね。ここは私とズィルバーが持ちましょう。とりあえず、ニナたちは部下の皆を休ませてあげて。終わり次第、学園に“生徒の外出制限”を設けてちょうだい」

 外出制限、か。確かにそれは必要だな。

「こちとら、全面戦争になりうるのに生徒が外に出たら、たまったものじゃないからな」

「ええ。必要なときは学園を避難場所として使わせましょう」

「俺たちの手でも足りないぞ。第二帝都に住んでいる民の数は計り知れない。今から避難誘導をしようにも猫の手でも借りないとできない芸当だぞ」

「それにそっちは既に親衛隊が働きかけているんじゃないの?」

「部下たちの報告によると、そう聞いていますが……」

 ニナとナルスリーも俺と同じかつ親衛隊が動いているのを邪魔していいのか、と述べる。

 ここでジノが思いがけない意見を述べる。

「じゃあ、親衛隊と手を組めばいいんじゃない?」

「「「ハッ?」」」

 この時だけ、俺とニナ、ナルスリーの声が重なる。

「だって、親衛隊も極悪人と敵対しているんでしょう。だったら、避難誘導を親衛隊に任せて、僕たちが敵と全面戦争すれば、こっちにデメリットはないんじゃない」

 ジノにしてはまともな意見を述べられている。

 ジノの意見を聞き、俺は顎に手を当てて納得する。

「確かに、俺たちだけ負傷して、親衛隊(向こう)だけ手柄を取られるのは些か、不愉快だ」

「僕も同じだ。奴らを引き摺りださせる手立てを考え、お互いにメリットのある条件を提示すれば、お互いに損害を被るんじゃねぇか。現に親衛隊は前の抗争で多少なりとも怪我人が出てるはず。だったら、こっちから交渉する分には問題ねぇはずだ」

 シューテルは“交渉する余地がある”と言う。

 フムと俺は顎に手を当てて、再び、考えに耽る。


 シューテルの言ってることはもっともだ。もし、このまま全面戦争すれば、俺たちの被害は甚大だ。そして、敵も同じように甚大な損害を被るだろう。ここで親衛隊が割り込んで、手柄を横取りされたら、たまったものじゃないのもまた事実。

 ここはシューテルの言うとおり、親衛隊と交渉して、一時的に手を組むのが打倒だな。

 あとは天候や日照条件、地の利を計算に入れ、いくつのも仕掛けを施そう。

 そうすれば、多少なりとも怪我人が出るはず。

 悩みに悩み抜いた末、俺は結論を出す。

「シューテルの言ってることはもっともだ。ここは親衛隊との交渉する余地があると思う」

 俺の考えにティア殿下も考え、頷いた。

「そうね。ここはシューテルとジノの言ったとおり、親衛隊と手を組みましょう」

 提言した。


 俺とティア殿下の物言いにニナたち四人は“異議なし”と無言で頷いた。

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