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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
問題児騒乱

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80/315

英雄は“白銀の黄昏”を設立する。

 俺、ズィルバーが“ゲフェーアリヒ”を叩き潰してから数日の時が過ぎ去った。

 もうすぐ、九月中頃、学園を再開する時期に来た。


 “ティーターン学園”、大会議室にて。

 大会議室には学園長を初めとした講師や職員が集まって、夏期休暇後の重要事項を話し合い。選択学科でのカリキュラムを話し合っていた。

 会議をされている中、バンッと扉が勢いよく開かれる。

「何事だ!?」

 講師の一人が声を荒げ、入ってきた職員に厳しい視線を送る。

 ハアハアと息を吐く職員がとんでもない事態を明かした。

 その事態は紙に書かれており、講師や職員一同に配布される。

 講師、職員。全員が書類を見た途端、驚嘆を露わにする。

 ある人は目を見開き。また、ある人は声をあげ。また、ある人は本当なのかと目をこする。


 書類を見たモンドス講師は乾いた笑い声を上げる。

「参ったよ。まさか、()()を叩き潰すとは思いもよらなかった」

 キンバリー講師も書類を見て呟く。

「こんなことができるのは彼だけ……しかも、承認と認知を頼み込まれるとは……」

 彼女もこのようなことをする人物に心当たりがある。むしろ、自分たちが依頼したのだから知っていて当然。

 その仕打ちともいえるお願いをされるとは思いもよらなかった。

「ここに書いてあるのは本当か!?」

 学園長はオドオドしながら真偽を聞く。

「本当ですよ。学園長。しかし、こうしてくるとは参りましたね」

「ど、どど、どうしよう。これは認めるべきだろうか?」

「認めるもなにも、既に我々、学園は“問題児”の一件に手出しできません。この書類の内容も承認するしかありません」

 キンバリー講師は承認するとサインする。

「違ぇねぇ。俺たちが出来なかったことをしやがったんだ。これはもう認めざるを得ねぇよ」

 と、モンドス講師も承認するとサインする。

 他の講師、職員も二人の講師に倣って、承認するとサインする。


 なお、書類にはこう書いてあった。

 『“ゲフェーアリヒ”を叩き潰し、改め、“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”の設立の承認を!』と見出しに書かれていた。

 内容は“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”を風紀委員として認知し、学園、生徒会と対等と扱い、非常時以外の命令を受け付けない独立した組織。

 現時点のメンバーは(ズィルバー)を中心にティア、ジノ、ニナ、ナルスリー、シューテル。後は“問題児”の名前がずらりと記載されている。

 なお、設立の条件に“問題児”へ不干渉。食堂の使用許可。メンバーの受け入れ。などが記載されている。

 最後に生徒会会長、エリザベスの署名がされていた。


 生徒会もこれを承認し、認知することを提言した。

 学園陣も俺たちがすることを認め、学園の治安維持を彼ら、“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”に一任することにした。




 学園から通達の用紙が白銀の黄昏シルバリック・リコフォスが拠点にしている校舎に届けられた。

 白銀の黄昏シルバリック・リコフォスの拠点は、かつて、“ゲフェーアリヒ”にあった校舎を取り壊し、新規に建て替えた。

 校舎の位置も宝物庫の出入口を隠すように建てられた。林の奥にある広場も修行ができる鍛錬所に作り替えられた。

 メンバーのほとんどが学園内では実力のある者たちばかりだが、今は置いといておこう。

 白銀の黄昏シルバリック・リコフォスの拠点にした校舎の名前は“風紀委員本部”。

 学園の風紀を守る組織として名付けた。


 その本部の委員長室に俺がいる。

 豪華すぎず、質素すぎない椅子に座って、書類に目を通している。

 書類作業は苦手なんだが、千年前、リヒトに嫌っていうほど叩き込まれたせいか必要最低限のことができてしまう。

 今更になって、教えてもらった甲斐があったと実感する。

 今ある書類をまとめ終えたところで俺は一息ついた。

「ふぅ~。疲れた。慣れないことはするものじゃないな」

 ぼやく。

 書類作業に嫌気を刺す俺にレインがポカッと頭をたたく。

「文句言わない。将来、役に立つんだから。できるだけマシでしょう」

「それもそうだが……」

「それにこれぐらい難航していると、このあとに控える書類に終わらないよ」

 レインから忠告ならぬ説教を受けられる。

 レインは今も不機嫌。まあ、その理由が分かる。

「まだ、俺が単独で突入したことを怒っているのか?」

「当然でしょう! あの時、全員で殴り込みに行くって言ったのに貴方が勝手な行動したせいで作戦がパァになったじゃない!」

「あのまま、煮詰めていても時間の無駄。俺たちには時間がなかった。終わったとしても今後の方策があったん、あだッ!?」

 俺は反論しようとしたら、又もや、頭を小突かれた。

 レインはハアとため息をついた後、少々、悪戯めいた表情を浮かべる。

「次からは私やティアちゃんたちに声をかけなさい。一緒に暴れましょう」

「そんなことをしたら、連携があったものじゃない。あと、キミの言い方……リヒトに似ているぞ」

「むぅ~。私はリヒトに食されていないよ。でも、終わったことを言っても詮無きこと、何はともあれ」

 レインは俺の頭に手を置いた。

「とにかく、無事で良かった。貴方が出たと聞いて、寿命が縮む思いよ。でも、勝ち越しを上げてくれたから寿命が戻ったけど……」

「精霊に寿命があるのかどうかは放っておいて……それもよりも、レイン。キミ。この後、やることがあるんだろう。早く済ませてきなよ」

 俺はレインにこの後、控えている用事を済ませるよう告げる。

「それもそうね。じゃあ、しっかり書類作業するのよ」

「分かってるよ」

 逃げたら、今度はティア殿下たちに殺されるからな。


 “ゲフェーアリヒ”にいる“問題児”全員全滅した後、俺はティア殿下とレインから説教を受けられた。

 しかも、戦場を終えたばかりの場所でだ。

 ガミガミと説教を受けられ、俺は一時期、口から魂が抜けかけてしまった。

 それでも、ニナとナルスリーが、「説教はまた、後にして、今はかねてからの方策を実行しましょう」と言って、宥めさせた。

 ティア殿下とレインも「しょうがない」という形で渋々、納得して、俺が考えた方策に着手することにした。

 そして、今に至るというわけだ。


 俺は書類作業を再開し始めたところでコンコンと扉をノックする音が聞こえた。

「入っていいぞ」

 と、俺は中に入らせるよう言わせると、扉を開け、入ってきたのは書類を手にしたティア殿下が入ってくる。

「おう。ティアか。なにか用か?」

「学園からの()()が来たよ」

 俺は“通達”という言葉を聞き、書くのを止めて、ペンを置く。

「早かったな。結構、時間がかかると思っていたけどな」

「それほど事態が大きかったもの。急いで承認したんじゃない。それよりも、ちゃんと書類を済ませているんでしょうね?」

「やっているよ。必要最低限とはいえ、やるときはちゃんとやる」

 俺が決めたことだからな。

 俺は再び、ペンを取って書類を書き始める。

「…で、通達にはなんて書いてある」

 書きながら、通達内容を尋ねる俺にティア殿下は「仕方ないわね」と漏らしてから内容を読み上げてくれた。

「内容は白銀の黄昏シルバリック・リコフォスの設立承認。“問題児”への不干渉。といった私たちが提示した条件を承認。さらに非常時を除いて、学園事情に不干渉も承認されたわ」

「いよいよだな」

 と、俺はペンを止め、フッと笑みを零す。

「そうね」

 と、ティア殿下も笑みを零す。

「人員を増やさないといけないな」

「その辺の人選は私たちに任せて、できるだけ信頼のおける人を集めるわ」

「ただ、家名だけの奴はいらん。実力や人望、才能に恵まれている奴を選べ。あと、家名などの調査もしておけ。もしかしたら、使える情報があるかもしれないからな」

「わかったわ」

 俺が提示する諸々の事項をティア殿下はメモを取り、聞き取ったりする。

「できるだけ、慎重にやるわ」

「あと、ノウェムたちの戦力強化だ。今、レインがやらせている。だが、それだけじゃ足りないかもしれない。身なりのことで資金が足りないなら、宝物庫の宝石や金塊を売って工面して構わない。金に糸目を付けるな」

「礼儀が悪いとこっちの泊が失うどころか。あんたの立場が悪くなるからでしょう」

「そうだ。資金に関してはエリザベス殿下や姉さんたちと一緒にやって構わん。姉さんたちも姉さんたちで動いているはずだ」

 俺はエルダ姉さんやヒルデ姉さんの性格を考えるとノウェムたちに何かしら接触すると考えていた。

「まあ、とりあえず、学園中に俺たちのことが知れ渡る。もしものためにティア。キミたちも力と学と身なりを整えないといけないかもしれん。それだけは忘れないでくれ」

「ええ、分かってるわ」

 ティア殿下は机の上に通達の用紙を置いて、部屋を出て行った。

 そして、俺は再び、書類書きを再開した。




 そして、案の定、ズィルバーの予想通りにエルダとヒルデが“問題児”にして白銀の黄昏シルバリック・リコフォスのメンバーになったノウェムたちに接触する。

「へぇ~。貴方たちがズィルバーの部下か」

「個性豊かね」

 見ている二人にノウェムは睨みつける。

「誰、貴方たち?」

「エルダ・R・ファーレン」

「ヒルデ・R・ファーレン」

「「ズィルバーの姉よ」」

 二人は言いきる。

 ノウェムたちは目の前にいる彼女たちがズィルバーの姉であることにビックリする。

 彼らがビックリする中、ヒルデはあることを告げる。

「貴方たち、弟のことは好き?」

 彼女の問いかけに「当然だ!!」と当たり前のように言い切る。

「だったら、身なりを整え、礼儀を学び、学問を身につけなさい」

 ヒルデはノウェムたちに今、必要なことを告げる。

「どうしてだ?」

「なんで、学問や礼儀を身につけないといけないのよ!?」

 言い返すヤマトとカナメだが、エルダが彼らを言い含めさせる言葉を言う。

「貴方たちのような“問題児”じゃあ、弟いえズィルバーが恥を掻くの!!」

 エルダの言葉にノウェムたちはサァ~ッと顔を真っ青にする。

 自分たちを救ってくれた主に泥を塗る行為だけはしたくない。と、彼らの共通認識。

 彼らは一度、顔を見合わせて、ヒルデが言ったとおり、ズィルバーのために頑張ろうと決意し始めた。


 なお、そこにレインと数分遅れてティア殿下がやってくる。

 レインはノウェムたちに用があり、ティア殿下はエルダとヒルデに用があった。

「今から貴方たちを鍛えさせてあげる」

「貴方が…ですか」

 ムサシが訝しげ、レインを睨む。

 ムサシだけじゃなく、ヤマトやコロネも訝しげた。

「言っておくけど、私は貴方たちよりもずっと強いわよ。ズィルバーと同じくらいにね」

 文句を言いたげな彼らにレインは少々怒りっぽく言い返す。

 ノウェムたちは「本当に~」とますます訝しむ。

「だったら、やってみる?」

 レインは軽々と挑発させ、彼らに戦意を焚きつける。

「言われずとも――!!」

 と、ノウェムたちはレインと一戦交える。


 一戦交えた結果。

 少々ボロボロになるもレインは立っていて、ノウェムたちが地に伏していた。

 話を終えていたティア殿下、エルダ、ヒルデは分かりきっていたのか状況を見て、アハハッと苦笑いしていた。

「どう、これでどっちが強いか分かった?」

「…分かりました」

 地に伏したカナメが言葉をぼやいた。


 その後、レインの治癒魔法(魔術)で治してもらったノウェムたちは嫌々でレインの言うことを聞くことにした。

「ズィルバーが好きなんでしょう。だったら、さっき言われたとおり、身なりや礼儀、学問、そして力を身につけなさい。彼について行きたいと思うなら、今より強くならないと話にならないわよ。今の貴方たちはティアちゃんたちよりも()()んだから」

 “弱い”と言う言葉を誇張して言い切る。

 ノウェムたちはギロッとティア殿下を睨む。

 ティア殿下は睨まれるも、柳の風のように受け流す。

「あら、やってみる?」

 だが、言葉や態度はやる気満々だった。

「いえ、結構です」

 と、冷静になったカナメがやんわりと断った。

 レインとやり合って、さすがに堪えたのだろう。そういう意味では成長したと思う。


「いい? 貴方たちのいいところは()()()であること。それを生かさないでどうやって、強くなるの?」

 レインの言っていることは真実、本当のことだった。

 カナメ以外全員、異種族。

 自分の種族特性を理解すれば、精霊と契約できる人間と違った力が得られるのは間違えない。

「自分の種族特性を理解できたら、“闘気”いえ魔力の扱い方を教えるわ。魔力を扱えるかいないかで戦いは大きく変わる。実際、ズィルバーと戦って身を以て体感したでしょう」

 レインに言われて、ギュッと拳を握るノウェムを含めた強者たち。

「おそらくだけど、ティアちゃんたちもできるわよ。己を鍛えずに種族特性を生かせず、戦いを続ければ、いずれ、死ぬ。もしくはズィルバーの手間が増える。そうなれば、どうなるか、分からないはずないよね」

 そうなれば、いつの日にか、ズィルバーが孤立してしまう。それだけは死んでも避けたいと心に決めるノウェムたち。

「お願いします! 私たちを鍛えてください!」

 プライドを殴り捨て、恥を忍んで、レインに教えを請う。

 頭を下げてくる彼女たちにレインは――。

「もちろんよ。ズィルバーに本気でついて行くって言うなら、手加減なんてしないからね」

「はい!」

 と、声をそろえて返事をする。

 皆、気合い十分。

「それじゃあ、始めましょうか」

 と、今からレインによるノウェムたちの地獄の強化合宿が始まった。


 なお、その際、ティア殿下も……。

「負けてはいられないわね」

 “闘気”を滲ませ、より一層に修練に励んだ。

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