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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
問題児騒乱
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英雄は修行する。

 夏期休暇に入り、俺たちは各々の方法で修行に入った。

 当初の予定通り、ニナ、ジノ、ナルスリー、シューテルはそれぞれの実家に帰り、ティア殿下も皇宮に帰っては衛士または親衛隊を相手に修行することにした。

 そして、俺はというと――。

「……で、どうした、ここにいるわけ?」

 レインと一緒に宝物庫の祭壇に来ていた。俺は祭壇にある台座の向こう側のヴェールを見る。いや、見続けている。

「レイン。あのヴェールはどう思う?」

「えっ?」

 彼女は俺に言われて、ヴェールを見る。見た途端、目を大きく見開く。

「これって、まさか……!?」

「そうだ。ここだけは()()()()()()()()()()だ」

「しかも、これって……」

 どうやら、レインもこれをした人物に心当たりがあるようだ。むしろ、ありまくり。

 千年前、俺やレイン、五大将軍の全員。彼奴らの悪戯に手をこまぬいたことだ。

「今の時代の人にはただのヴェールに見えるけど、あの時代を生きた人だったら、嫌でも分かる。これは……」

「リヒトとレイの仕業ね。リヒトはともかく、レイも意外とおちゃめでしたし」

「全く、レイに振り回される俺の気分になれってもんだ」

「それは貴方も一緒よ」

 なによ、俺がリヒトとレイと同じで振り回すだと!? 心外にも程がある。

 それよりも、俺はヴェールに向かって、「姿を見せよ」と声を発する。

 途端、ヴェールに施された魔法いや魔術が解かれ、姿を現す。

 そこにあったのは神代。俺が倒した神獣、星獣、悪魔から作られた甲冑やドレス、ローブなどがあった。

「宝物庫の方に魔剣を置き、最重要道具は秘密の場所に隠す」

「しかも、ご丁寧に宝物庫の様式美に合わせて……ヴェールにも認識阻害の魔術式を組み込んでる。手の込んだことよ」

「相変わらず、悪戯好きの二人が考えることだ」

 と、俺たちは秘密の部屋に入る。


 秘密の部屋。

 宝物庫に隠れた部屋。

 中には世にも珍しい道具がわんさかとあった。

 しかも、これを仕掛けた人物が俺とレインが知っている人物。

 初代皇帝リヒトと初代媛巫女レイ。

 二人の仕業である。二人がなんの目的でこういう仕掛けを施したのか分からない。

 だが、部屋の造りを見て、違和感を覚える。

 壁に魔術式が刻まれている。

 しかも、この魔術式……千年前に読んだ本に書かれた魔術式に似ているな。

「なぁ、レイン。この壁に刻まれている魔術式。見たことがないか?」

「んぅ~」

 と、レインは俺の質問を聞き、壁の魔術式を見る。

「これって、確か……」

 レインは壁に刻まれている魔術式を見て、推測だが答えを述べる。

「これって、“状態保存”の魔術ね」

「やはりか」

 俺もうすうす、そうじゃないかと思った。

「“状態保存”か」

 それもそうだな。これだけの宝物だ。状態を維持させるにも時間を要するからな。

「ふむ。これは学園にも、皇宮にも伝えないでおこう。ここにある宝物は国家転覆するほどの代物だ」

「そうね。こんなものが表に流れれば、血生臭いことになるのは間違えないわね」

 レインの言うとおり、秘密の部屋にあった物が表に出れば、人々が争いあうのが目に見えている。

「とりあえず、ここのことは内緒しておくぞ。こんなの表に出れば、困りごとだ」

「そうね」

 と、俺たちは秘密の部屋を出ることにした。


 部屋を出た後、「姿を隠せ」と声を発すれば、再び、ヴェールが掛かり、入り口が消えた。

 消えたのを確認したのを見届けた後、宝物庫を出ようとした時、ふと、右側に目を向ければ、秘密の部屋の入り口に掛かっているのとは違うヴェールを発見する。

 よく目をこらせば、そのヴェールにも魔術式が施されていたのがわかる。

「全く、悪戯好きにも程があるぞ」

 と、ぼやきつつ、俺は目を凝らしたヴェールの前に立ち、「姿を見せよ」と声を発する。

 声を発した途端、又もや、ヴェールが外され、目に入るのはただだだっ広い草原だった。


 目の前に広がるだだっ広い草原。

「すごいな」

 俺は目の前に広がる草原を見て、感嘆の声を出す。

「本当ね」

 レインも同じ気持ちでただ、目の前に広がる草原を見るしかできなかった。

 広大な草原に足を踏み入れたとき、猛烈な()()()が身体を走る。

「ッ……!?」

 これには思わず、その場で膝を突いてしまう。

「ズィルバー!?」

 俺が膝を突いたのでレインがすかさず、近寄ろうと草原に足を踏み入れるも――

「うぐっ!?」

 突如、彼女にも()()()が身体に降りかかった。

 身体に降りかかる()()()に彼女もその場で膝を突く。

「な、なに、これ……」

「知るか!? 俺に聞くな!?」

 息が苦しい。両性往来者(トラフィックダイト)とは違う息苦しさ。

 空気が重苦しい。空気……空気? まさか!?

「そうか……」

「どうしたの、ズィルバー?」

 この草原の息苦しさの意味が分かった。

「全く……リヒトの奴……」

「だから、なにが分かったの!?」

「空気…」

「え?」

「ここの空気の濃度が非常に高いんだ」

「空気の濃度?」

「正確に言うなら、空気に含まれている外在魔力(マナ)が非常に高い。おそらく、千年前かそれ以上のものだ」

 俺はフゥ~ッと軽く息を吐く。ようやくだが、身体が、この空間の外在魔力(マナ)に慣れてきた。

 まあ、立っているのが精一杯だな。

「身体中に重りを着せられている感じだ」

「本当ね。だけど、ここだったら、修行にうってつけじゃない?」

「言えてる」

 確かにここなら、修行場所にうってつけだ。なんとなくだが、ここは時間の流れが速い気がする。

「なぁ、レイン。この草原……時間の感覚がおかしい。“迷宮”によくあるとされる感覚狂いに似ている」

 俺は、この空間に時間速度が異常なのを指摘する。

「そういえば、昔、リヒトが国家創動で時間を早める修行ができる魔導具を作成していたわね」

 レインが千年前にリヒトが主導で行っていたことを話してくれた。

「ふぅ~ん。それがこれか……ったく、とんでもないものを作りやがって……」

 俺は彼がすることなすことに呆れ返る。

「まあ、それでも感謝するとしよう」

 俺は今、亡きリヒトに感謝の言葉を言う。

「せっかくだし。あいつが残した遺産を使わせてもらうとしよう」

「そうね」

 と、俺とレインはこのだだっ広い草原を使って夏期休暇を利用した修行することにした。




 今、ズィルバーとレインがいる、だだっ広い草原は大英雄を育成させる空間。

 人が入った途端、出入口のヴェールが掛かって封鎖し、外界とは遮断する。

 まさに、異空間。

 時間も空間もなにかもが異なっている。


 ただ、広大な草原だけじゃない衣食住ができる家がある。

 川もあり、空もあり、森もありと自然豊かな空間。

 しかも、()()()()()()()()()()()()()()()


 この空間は凡人を大英雄まで強くさせる空間だ。

 もし、大英雄にして伝説の英雄である[戦神ヘルト]の魂を持つズィルバーがここで修行すればどうなるのか?

 もはや、それは想像を絶する。

 かつての大英雄が復活することは間違えないだろう。むしろ、それが[建国神リヒト]の狙いだったかもしれない。

 いずれ、転生し復活する彼を強くさせるために用意されたのかもしれない。


 とにもかくにも、異空間はなにもかもが異常。空気も重力も外在魔力(マナ)も全てが異常だ。

 その空間で修行し順応すれば、おそらく、神代の大英雄クラスと互角以上に戦えるのは間違えなし。

 そう。凡人だったらの話だ。

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