プロローグ 戦いの序曲
第二章の始まり
時は神代。
とある戦場にて。
剣と槍がぶつかりあう。
両者ともに硬さにおいて世界最高峰ともいえる強者にして英雄。
片や、魔剣を手にするのは時には男、時には女の英雄。
片や、魔剣に匹敵する槍を持つ男の英雄。
片や、無敗にして、無敵の英雄。
片や、最速にして、無敗の英雄。
「いや~、驚いたぜ。まさか、ライヒ王国きっての大将軍が、見目麗しい女だったなんてな」
「あら、俺が女だと相手したくないってのか?」
「いや、女だろうと殺すだけだ」
「そうかい!」
ガキンッと剣と槍が交わる。
両雄の激突。
世界の歴史に語りつがれる逸話。
その戦場では罵声、断末魔、剣戟音、魔術の衝突が轟くその場所は、様々な感情が入り交じる。
辺りには無数の屍が転がっている。
英雄を恨めしそうに生者を睨みつける濁った目は、死へと誘う死神のようだ。
この世の地獄ともいえる様相を呈している戦場の中で異様な空気が流れている場所があった。
それが、国きっての英雄同士のぶつかり合いであった。
両雄ともにある者たちから敬愛され、加護を与えられし者でもあった。
両雄が睨みあい、得物を手にし、ぶつかり合う。
魔剣を持つ紅と蒼のメッシュがかかった銀髪の男ならぬ女。
槍を持つライトグリーンの髪をした男。
「かぁ~。ここまで硬ぇと倒し甲斐がある」
槍を肩に乗せ、敵を称賛する。
「俺もだ」
彼女も同じように敵を称賛した。
その後、両雄は再び、ぶつかり合う。
それが千年も前の話。
時は現代。
空気が淀み、魑魅魍魎が跋扈しているかのごとく、誰にも手がつけられない場所。
その場所で手に負えない問題児が覇を競い合っていた。
そこに乱入するは一人の少年ならぬ少女。
その者を倒そうと彼らは躍起になる。
「へぇ~、噂の“迷宮”攻略者が、僕と同じ一年だったとは驚いた」
「そうか?」
「僕からしたら、キミを倒せば学園一番になれる」
金棒を持つ女の子が気前よく言い切った。
対する、少年ならぬ少女は魔剣を手に構えない。
「窮屈だな」
あきれた言葉を口にする。
「なに?」
「だから、窮屈だと言ったんだ」
自然体。身体の力を抜いた状態。油断している。舐め腐っているのかと思うほどの立ち振る舞い。
けれど、彼いや彼女から発する“闘気”ならぬ殺気は強大だと悟った。
幾星霜の戦いを経て、研鑽を積んだ者にしか至らない極致。
よもや、それを一年が放つとは驚嘆に値しよう。
世界広しといえど、同い年または年下からという事実に誰もが驚愕する。
「…強いね」
「そうか? 俺はまだ未熟だ」
彼いや彼女は天賦の才または天稟の才ともいえる強者。
そんな強者に問題児たちの視線が突き刺さる。
視線が交差する。
血が滾る闘争。それこそが彼いや彼女が求めていたもの。
「こんな穴蔵にいるより、世界を見た方がよっぽど楽しいと思うが……楽しもうじゃないか」
少年ならぬ少女は両腕を広げ、魔剣に“闘気”を流して視線を彼らに向けた。
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