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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学園入学
69/302

英雄は巨万の富を得る。

 俺たちの目に入り込む目映い光。

 その光は“聖剣(クラウ・ソラス)”の光ではなく、金色の光を放っているのだけが分かる。

 あまりの連続に誰も声を出せずにいる。とりあえず――

「とりあえず……宝物庫に……行ってみよう」

 立ち上がろうとするも、足に力が入らず立てない。いや、身体が思うように動かせない。

 俺が立ち上がろうとする。

 だけど、ティア殿下が――

「ダメよ、ズィルバー! もう身体が満身創痍じゃない!」

「しかしな……」

 ハアハアと肩から息を吐いているのに身体に鞭を打って立とうとする。でも、足に力が入らない。

 参ったなぁ~。

 って、思っていると聖剣が光りだす。人の姿に戻ったレイン。彼女が俺の頭にコツンと叩いた。

「全く、私の忠告を無視して無茶するからよ」

「面目ない」

「まあいいわ。ティアちゃん。私が()()()()を背負うから。彼らを立てるか聞いてきてくれる」

「は、はい!」

 と、ティア殿下は立ち上がり、ニナたちのもとへ走る。


 レインに負ぶされ、俺たちは宝物庫へと入る。疲労困憊の重い足取りで――。

 宝物庫に入った途端、目映い光が俺たちを包み込む。


 目映い光に目が慣れ、俺たちの目に入ってくるのは――

 ――金銀彩る財宝の山であった。


 目の前に広がる財宝の山に俺たちは呆けてしまう。

「夢…だよ…ね」

「痛ててて…夢じゃない」

 自分の頬を抓って夢じゃないと告げるジノ。

「し…信じられねぇ…僕たち…踏破したのか…?」

「踏破したのかじゃない……私たちは“迷宮”を踏破したのよ!!」

 声を荒げるナルスリー。

「…………」

 ティア殿下はあまりの光景に出る言葉が見つからない。だが、言えることは一つ。

「俺たちは“迷宮”を制覇したぞ!!」

 負ぶされる形だが、嬉しさがこみ上がり、声をあげた。

「「「「「やったぁぁあああ――――!」」」」」

 つられて、ティア殿下たちも声をあげる。余程、嬉しかったのだろうな。

「じゃあ、お宝を見て回るか」

「「「「「オォー――――!」」」」」

 俺たちは宝物庫にある金銀彩る財宝を見てまわ……――って!? 彼奴ら、既に財宝を見て回っているじゃないか!?

「それじゃあ、俺たちも見て回るか」

「そうしようか」

 俺はレインに背負われる形で財宝を見て回ることにした。


「スゲぇ! この宝石の冠。どんだけの価値があるんだ!?」

「この金塊も凄い! いきなり、億万長者になった気分!」

「僕…生きてて良かったと…思った……」

「これだけの財宝よ。一生暮らせるほどの財産はあるわ!」

 財宝の価値が気になるシューテル。億万長者を夢見るナルスリー。生きた実感に涙ぐむジノ。豪遊する人生を夢見るニナ。と、いろんな言葉が飛び交う。

 だが、彼らは――

「まあ、でも、このお宝は……」

「ええ、()()()よ」

「私たちはおこぼれを預かるとしましょう」

「…うん」

 共通認識で、()()()()()()()()()への忠誠心を第一にした言動だった。


 そんな中、ティア殿下は宝物庫のある一画を目にし、近づいてみる。

 近づけば、もの凄い物を発見した。

「ねぇ、皆!? こっちに来て!!」

 とんでもない物でも発見したのか興奮する声をあげてしまう。

「どうしたの、ティア殿下?」

 ニナたちは疑問符を浮かべつつ、ティア殿下のもとへ来てみる。

 ティア殿下のもとへ来て、彼女が興奮する原因を知り、仰天する。

「う、嘘でしょう……」

「こんなのが存在するっていうの……」

「でも、これって……」

「ああ、間違えねぇ」

 タラリと汗を流すニナたち。怪物、“アステリオン”が誘き寄せた魔物の群れとやり合った疲労が吹っ飛ぶほどの物を目にしてしまった。


 それは――


「あら、()()に、()()じゃない」

 俺を背負ったレインが一画にある物を口にする。

 俺も背中越しだが、一画にある物を見る。形は“刀”。

「確かに、こんな所で聖剣、魔剣を目にするとは……」

「本当ね」

 これは俺もビックリ仰天だ。

 聖剣、魔剣にも種類がある。

 一つは精霊が武器に変える姿。これは契約者との絆が左右される。

 もう一つは鋳造された武器。こっちは所有者の力量と相性が直結する。


 俺とレインが少なからず驚いたことにティア殿下が尋ねてくる。

「えっ? レイン様も見たことがないんですか?」

 意外って顔していやがる。

「私だって見たことがないわよ。あっ、でも、レイの話だと、その昔、ヘルトも持っていたって言ってた」

「せ、[戦神ヘルト]が!?」

 誰もが驚いている中、俺は――

(そういえば……)

 昔を思い出す。

 そういや、レインに出会う前、確かに持っていた。でも、魔剣を扱うのに一苦労した記憶がある。

 彼奴はひとえにじゃじゃ馬だったからな。俺は当時、使っていた魔剣を思い出す。

「聖剣、魔剣のことは私よりも貴方たちの方が詳しいんじゃないの?」

 今度はレインがティア殿下たちに問い返す。

「まあ、知っているけど……」

「それって、図鑑でしか知らないし」

「実際、見たことがない」

「仮にあったとしても本物かどうか分からねぇ」

 ニナたちは実際、目にしても本物かどうか分からないと口にする。

 まあ、聖剣はともかく、魔剣に関しては誰でも分かるはずだが……

 しかし、聖剣に、魔剣か……。この先、レインの力が通じないを考えて、持っておいといた方がいいな。

 聖剣に関してはレインがいるから問題ない。だとしたら、魔剣かな。俺の悪運があれば、魔剣を扱えるだろう。いや、扱えるのに時間がかかるか。

「レイン。俺……魔剣が見たい……」

「え?」

 と、動揺するレイン。

「ど、どうして……」

 彼女が戸惑ってしまう。もしかして、もう、いらないのか、と――。

「単純に精霊の力が使えない。キミが傍にいないとき、使える武器がなかったら大変だろう」

「あっ、そういうこと」

 良かった、とほっとする彼女に俺は当たり前のことを口にする。

「そもそも、キミがいらないって言うか、バカ」

「バカは貴方でしょう」

「なんだと!?」

「なによ!?」

 グヌヌヌッと睨み合い、不穏な空気が立ちこめる。


 俺とレインの睨み合いにティア殿下はハアと溜息をつく。

「全く、精霊の性格って契約者に似るのね」

 愚痴いや悪態を吐いた。

「「酷くない!!?」」

 ティア殿下の悪態に俺もレインも声を揃えて反論するものだった。




 (ズィルバー)たちが宝物庫に入り、財宝を見て回っている最中、地上では既に次の朝になっていた。

 “迷宮”に入っていると時間感覚が分からなくなる。


 学園の大会議室にて。

 皇帝陛下や学園長が椅子に座って講師らと吟味している。突如、大会議室の扉が開かれる。

職員が激しく呼吸しながら報告をあげる。

「地下迷宮に変化が――」

 誰もが地下迷宮の異変に敏感に反応する。皇帝陛下は続きを聞こうと促す。

「魔物の動きが急に収まったのを確認できたと思いきや、扉が閉められ、鍵を掛けられました」

「鍵を掛けられた……」

「捜索隊並びに救助隊を用意するよう、親衛隊に進言しよう」

 皇帝陛下は第二帝都に駐留している親衛隊に使いを送ろうとしたとき、続けざまに別の職員がやってくる。

「報告します!」

「どうした、続けざまに……」

「つい、先ほど、地下迷宮の扉が開かれ……中には行方不明だった生徒が――!!」

 とんでもないことが耳に入った。




 俺たちは今、宝物庫にある一画。聖剣や魔剣がある区画だ。

 俺はレインの背負われている形でティア殿下たちに聖剣と魔剣の性質を話し始める。

「聖剣、魔剣をどれくらいしているかは知らない。だが、聖剣と魔剣には階梯が存在する」

「え? 聖剣と魔剣に階梯があるの!?」

 ふむ。ニナたちは聖剣と魔剣の一部分が世間に知れ渡ったというわけか無知上かのどちらかだろう。まあいい。

「聖剣と魔剣の階梯は五段階に分ける。最上位>上位>中位>下位>最下位の順番に分けられる。最上位のほとんどは聖剣が多く、最下位は学園が用意されている武器が大半だ」

「って、ことは……」

「上位、中位、下位はほとんど、魔剣?」

「その考えでいい。さらに言えば、聖剣はともかく、魔剣の扱いが難しい。魔剣は見る者を魅了する魔性の剣」

「見る者を魅了する魔性の剣」

 ゴクリと生唾を呑むニナ。

「おっかねぇもんだな。魔剣ってのは……」

 シューテルはタラリと冷や汗を流す。

「魔剣と呼ばれる由縁は持ち主を死に追いやる剣ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

「死地に向かわせる剣…か…」

「言うなれば、人斬りになる…ってことね」

 ジノは復唱し、ナルスリーは魔剣の本質を理解する。

「もし、魔剣を使いたいと言うなら、自分に合う剣を選べ。魔剣をわかりやすく言うなら、暴れ馬に等しい。使い手の性格や本質を見定める性質を持っている」

「暴れ馬ねぇ~」

 ティア殿下は陳列されている聖剣と魔剣を見やる。

「とりあえず、ここにある剣もそうだけど、宝物庫の財宝は私たちが責任持たないといけないわね」

「そうだな。盗まれたら、もともこうもない」

「管理する方法を考えないといけないか」

 財宝の所有権は俺たちにある。誰かに奪われたら、もともこうもないのは賛成だな。

 と、俺たちはこれからのことを考えようとしたとき――

 ぐぅぅううううう

 と、腹の虫が鳴ってしまった。

 誰が鳴らしたのか定かではないが、ここで俺たちが思い至った。

「お腹空いたな」

「そうね」

「そういえば、地上に帰ることで頭いっぱいでなにも食べていなかったわね」

「言われてみれば……」

「なんか、そう思うと……」

「余計に腹が減ったな」

 お腹空いた。それが俺たちの共通認識だった。

「とりあえず、地上に戻りましょうか。財宝の管理は後で考えられるわ」

 レインの一声で、そうだな、と俺たちは思い、宝物庫を出ようとした。


 ジノとシューテルが宝物庫の扉を開ける。

 そして、開け放たれた扉の向こうには学園の講師たちが目に入った。

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